二元論で語るフェア

性別は二元論では語れないけど、二元論で語ることがフェアになることもあって難しい、と思った話

性別、というと、パッと「男」「女」の2種類が頭に浮かぶ、という人は少なくないと思います。

でも、最近では
「その他」「回答しない」などを選べることも増えてきました。
なぜなら、性別は
かならずしも「男」or「女」の2種類から選べるものとは限らない
からです。
選べない人、選ばない人、日によって変わったりする人、常にどちらでもない人、
いろいろいます。

性を考えるときには、
「体の性別」
「性自認」
「性指向(どんな性別の人に性的欲求を抱くか・抱かないか)」
と、あとは
「社会的にどのような性として扱われるか」
というような複数の指標があって、
それぞれのグラデーションの中でのつまみ食い制
、みたいなことになっているので、
わりと千差万別です。
(それぞれを「つままない」「欲しいと思わない」「いらない」とすることも含みます)

だから、なにごとにつけても
「女は**、一方で男は〜〜」みたいに語ったり
男女二元論をベースとして論を展開したりするのは、
現実として、物理的に“正しくない”し、社会的にも望ましくないです。
当てはまらない、疎外されるケースが出てきてしまうので。

と、いうのを前提として。

しかし最近は、
二元論を無視した語りを要望することの暴力性、
みたいなものが、気になってくるようになりました。

そう感じたのは、
「二元論で語っちゃダメ」
「男vs女の話にしないでくれ」
「男にもこういうケースがあるから女性差別とは言えないと思うのだけど」
……というような言葉が、
自分の受けた被害・蔑視・差別を告発する女性に対し、向けられているのを見たとき
もしくは、
そうした文脈であるにもかかわらず、まるでちゃぶ台をひっくり返すように、上記の言葉が差し挟まれたとき
です。

誰かを踏んでの告発は、たしかに“いい”とは言えないのだろうけれど、
でも、
二元論をベースにされた暴挙についての告発なのだから、
“二元論で語るな”って言われても、難しいよね。
っていうか、時によってそれは
「黙れ」
って言ってるのと、等しくなっちゃうこともある
と思ったのです。

性暴力に関する告発だったり、美醜に関連のある事柄だったりすると、顕著だと思うのですが。

たとえば
「高校生時代は毎日のように痴漢被害にあっていた。女ってだけで高校に通うだけのことがハードモードになる。痴漢する男は電車に乗るな」
という話があったとします。

ここに、
「男性だって痴漢被害にあう人はいる。高校に通うのが難しいのは女だけではない。痴漢をするのも男だけではない。そもそも性別は男女でわけられないのだから、二元論で語られるのは不愉快だ」
という言葉が挟まれたと、想像してみてください。

・男性でも痴漢被害にあう人がいる
 →その通りです。男性の被害を無視してもいけません。
・高校に通うのが難しいのは女だけではない。
 →その通りでしょう。それぞれに、いろいろな理由があります。
・そもそも性別は男女でわけられないのだから、二元論で語られるのは不愉快だ。
 →そうですね。私もそう思います。

いっこいっこは、その通りだと思います。
本当に。

でもそれ、その言葉は、今その告発に対して向けなくてもよいのでは?

痴漢被害にあうのは、圧倒的に女性が多いこと
とか
痴漢の加害者には男性が多いこと
とか
そういう、構造にのっとって引き起こされている事実が、被害が、告発できなくなってしまう。

女性であるがゆえに受けた暴力について、語れなくなってしまう。

「構造を自明化するな、強化するつもりか、考えが足りない」みたいなこと言われても

無理!!!!

と、思ったのでした。


しかし、

その構造に基づく話をされた時点で
「いや、そういう話し方はやめてくれ」って言いたい気持ちもわからなくもなくて、
どうしてここでぶつからなきゃならないんだろうな……。

私は二元論での語りを解消したい人間でもあり、
しかし、二元論があるからこそ受けた諸々については言えるものは言いたい、とも思っているので、
ここがぶつかる場面を目にするのは、
単純に、ちょっとしんどい。と感じることがあります。

個人的な結論としては
・二元論で語らないですむところでは、そうでない語りの形式をとる
・告発を無効化するような形では、二元論解体の言葉は差し挟まない
をできる限り意識する
とか、
その程度にしか、まだ解消方法を見つけられていません。
っていうか、それくらいしかないんだろうなぁ、とか。

ともかく、
誰かの告発に対し、できる限りフェアでいたいなと、
最近またあらためて思ったのでした。

とりとめがないけれど、おわり。

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