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これからの性教育の話をしようvol.2 赤谷まりえの場合

こんにちは、佐原チハルです。
前回の更新から、随分と間があいてしまいましたが……
本日は、企画『これからの性教育の話をしよう』vol.2の更新です。
(vol1.遠藤まめたの場合はこちらです)

本企画『これからの性教育の話をしよう』は、その名の通り「これからの性教育がどういうものだったらいいと思うか」を、みんなで考えていくための企画です。
日頃からいろいろな形で“性”について関わり、活動している人たちの声を聞くことで、これからの性教育を考えていくためのヒントを探していけたらいいなと思っています。

そこで、性に関して活動したり発信したりしている人たちに、「今までどんな性教育を受けてきたのか」「性教育の問題点とは?」「今後の性教育には何が必要と思うか」などなど、性教育をする前にぜひ考えておきたいポイントについて聞いてみました。

シリーズ第2回は、佐原が大変お世話になっている赤谷まりえさんです。
“性”のもろもろへの関わりかたが、非常〜〜〜に幅広く、フットワーク軽く、見識も広く、とても尊敬しているお友達(と呼ばせてもらってもいいかしら!?)です。
ファンなのです*>v<*

現在のご活躍はもちろんですが、学生時代にどんなことを考えたたかっていたのか、またそれがいかに“今”に続いているのか、
これからにつながっていくのか、など
とても興味深いお話をきかせてもらえました。

みなさまも、以下、どうぞ楽しみにお読みくださいませー!

質問一覧

Q1、ではまず、自己紹介をお願いします
Q2、義務教育では、どのような性教育を受けてきました?
Q3、義務教育終了後では、性教育を受けた記憶はありますか?
Q4、いま「性」や性を取り巻く現状について、思うことはありますか?
Q5、いま「性教育」について思うことはありますか?
Q6、これからの性教育に望むこと、理想の性教育とは?
Q7、理想の性教育ために必要なもの、もしくは邪魔なものって何だと思います?
Q8、今後「性」や「性教育」について、やっていきたいことはありますか?
Q9、赤谷さん自身が行うのではなく、他の人に「やって欲しい!」と思うことってあります?
Q10、性教育をする人におすすめの書籍・作品があれば教えてください!

Q1、ではまず、自己紹介をお願いします

A1、編集ライターの赤谷まりえです

(赤谷まりえさん;お仕事中)

赤谷;紙媒体(週刊誌や月刊誌等)やウェブの記事を作る仕事をしています。取材内容は多岐に渡っていますが、自分自身で得意とするジャンルは「性」に関することです。

佐原;性についてと言うと、セクシー系メディアか学者さんたちの読むような専門的な機関紙か……というイメージがあるのですが、赤谷さんが関わっているのはどのようなものですか?

赤谷;娯楽的な内容から性教育・性の権利に関する内容まで、様々です。
娯楽方面は、週刊誌のセクシー系読み物記事からカラーグラビア、漫画などですね。性教育やリプロダクティブライツ方面だと、保護者向けに10代の性に関する書籍や漫画の編修を。性の権利や多様性について、未成年向けのコンテンツ制作にも携わっています。

佐原;本当に幅広い! 性に関する話題だと、“エロ”と生殖や権利の関係はセンシティブで、無理に一緒くたにしたり、逆にバキバキの亀裂しか見えなかったりすることも多いので、両方に携わっている人の声はとても貴重に感じます。

Q2、義務教育では、どのような性教育を受けてきました?

A2、小学校高学年で、月経に関して女子だけで学んだような……?

赤谷;義務教育課程では、学校で詳しく学んだ記憶がほとんど無いです。小学校の時に、月経について女子だけ集められて学んだ記憶がある……んですが、ほぼ何も覚えていないです。

佐原;では義務教育期間中は、性についての知識は少なかったな、という感じですか?

赤谷;いえ、むしろ同年代より早熟だったと思います。家や図書館などで、いろんなメディアに自分から触れに行っていましたから。

佐原;いろんなメディアというと?

赤谷:週刊誌、新聞、雑誌、漫画……とにかく、いろいろですね。セックスの意味や性の権利についても、関心が強い子どもでした。

佐原;そうしたものの中で、特に印象に残っているものはありますか?

赤谷;漫画『クレヨンしんちゃん』に「スキン」(注;コンドームのこと)ていう単語が出てくるんです。アニメと違って、そもそもは大人向けの作品なんですよね。
小学生の頃その意味を祖母に聞いたら、隠さずにそっと教えてくれたことを今でも覚えています。ありがとうおばあちゃん。

佐原;素敵なおばあちゃんだー!

Q3、義務教育終了後では、性教育を受けた記憶はありますか?

A3、家庭科の授業で熱心な先生が性感染症や中絶のことを詳しく教えてくれました

赤谷;保健体育は、射精・妊娠……的な当たり障りのない内容でしたが、家庭科の授業で性感染症・妊娠・中絶のことなどを、たぶん当時にしては詳しく教えてくれました。非常に心に残る授業で、その時の授業ノートは今でも大切にとってあります。

佐原;印象に残る授業があるのは貴重ですね。

赤谷;あとは生活の時間かどこかで、クラス全員で“レイプの定義”についてディベートをした記憶があります。「女性自ら密室にふたりきりの空間になることを選んで、そこで望まない性行為を迫られた。これはレイプかレイプではないか」みたいな。

佐原;それ、非常に興味があります。

赤谷;男子学生や一部の女子学生の、「レイプではない」という“素朴な意見”に唖然としたのを覚えています。

佐原;あーーー“素朴に”というのがまた苦しい……

赤谷;反論しました。

佐原;聞きたいです。

赤谷;「男が運転する車に乗ろうが、ご飯を一緒に食べようが、性行為の合意とはまったく関係がない。あるわけがない。ドライブと性行為を全部一緒にするほうがおかしい。ふたりきりイコールOKではない」とかなんとか、まくしたてたような。

佐原;もうそれ、全部おっしゃる通りですね。ドライブはドライブ、ご飯はご飯、セックスはセックスですもんね。そのディベートのまとめみたいなものは、どうなったんですか?

赤谷;ディベートの最後は、たしか「たとえ女性とふたりきりになったとしても、女性が望んでいなければすべてレイプだ」というような話に先生がまとめていたように思います。

佐原;よかった。安心しました。

赤谷;いろんな先生がいましたね。私、コンドームを入れた財布を落として、体育教師に怒られたことがあるんです。「財布にコンドームを入れるとお金が貯まる」というジンクスがあって、かわいいキャラもののコンドームを持ってたんです。避妊用とはまったく別に。(※1)

佐原;あー、コンドーム持ってて怒られるのってすごく理不尽だけど、“あるある”ですよね……。

赤谷;あとから「何で怒られたんだろう、女がきちんとゴムを持ってるとか、むしろ褒められてもいいくらいなんじゃ」とムカムカしてきて(笑)。
納得がいかなくなって、美術の時間のポスターデザインの課題でコンドームの啓発ポスターを描きました。

佐原;私ね、赤谷さんのそういうところ、ものすごく好きです。尊敬してます。

赤谷;当時の高校教師の一部には、今でも納得がいっていません。当時、学校には明確に男女差別的な発言をする教師がいました。
「生徒会長は女より男が務めるべき」って、20代の男性数学教師がハッキリ言っていましたね。

佐原;ひどい。

赤谷;いや~、ひどい。改めてひどい。
そのセリフを聞かされたときは脱力してしまって、言い返せなかったんですよ。
それから17年経ちましたけど、先生の今の考えを伺いたいですね。地元でばったり会ったら、絶対に聞くと思います。「ウチの地元の県知事は女性ですけど、先生、今はどんな考えなんですか?」って。
今わりと社会的地位と責任があるポジションに就いた先生も、明言は避けますが当時ひどい暴言を女子学生に向かって吐いていましたね。本人は忘れているかもしれないけど、「あれは一体何だったんですか?」と問いたいです。

Q4、いま「性」や性を取り巻く現状について、思うことはありますか?

A4、性メディアを読み解く力、リテラシーをつけなければいけない時代と思います

赤谷;ネットが普及したことで、性の情報があふれている時代ですよね。だからこそ「自分の性は自分だけのもの」「他人の性を侵害してはいけない」「安全な性はあるが、正しい性はない」「性の価値観は時代によって変わる」……等々の基本的なことを、学校や家庭で身に付ける必要があると思います。

でも、まず学校や家庭で子どもをガイドする大人側がそもそも性について直視できない、語れない、どうしたらいいかわからない、というような状況があるのかと。

佐原;難しいですよね。たとえば“安全な性”って言っても、思い浮かべるものが人によって違っていたりする。
赤谷さんの思う“安全な性”は、どういうものですか?

赤谷;避妊に対する知識がパートナー双方にあって対処がきちんとできているとか、性行為に関する双方向の合意があるとか、BDSMプレイ(※2)だったら互いの意思疎通がとれているとか、リスクを確認しあうとか。そういう、コミュニケーションや性の基礎知識が万全なことだと思っています。
セックスで何か失敗したとしても、孤立しないで誰かに相談できる環境があるとか、自分の知識で対処できるとか。

佐原;全部、すごく基本的なことなんですよね。でもその基本が、義務教育で学べない。

赤谷;性について、大学でももっとたくさん学べたらいいと思いますが、日本でセクシュアリティについて深く・広く学べる環境もあまり多くはないですよね……。
性の健康と権利について学ぶことは「生きる権利そのものだ」と思っているので、政治家や官僚の中にも、性教育の大切さについて実感してくれる人がもっと増えて欲しいと思います。

あとは、「ジェンダー平等を語るわりにセクシュアリティのことになると途端に抑圧的・家父長的な態度に走ってしまう人」も多いなと、Twitterを見ていて思います。

佐原;(深く頷く)

赤谷;個人的な実感ですが、性のメディアから極端に離して育てられたり、周囲からネガティブなイメージを植え付けられたりすると、大人になってから恋愛やセックスに悩む人が多いような気がします。でも性をとりあげるメディアは、受け取る方に考える力や批判する力があれば、性という互いの個性を認め合える豊かなコンテンツになりえる。
エロメディアと社会の明るい共存を、コンテンツ生成を担う一員として考えていきたいです。

佐原;「性のメディアから離して育てる」というと、コンビニの成人誌陳列について苦情を言う“母親”に対しての揶揄として言われることも多い印象があります。

赤谷;コンビニの成人誌規制に関しては、規制するコンビニ、規制しない書店などなど、成人誌を手に入れる方法の多様化や棲み分けが進めばいいのではないでしょうか。
“エロと流通”は時代の流れでどんどん変遷して、そのたびにまた違った性の在り様が生まれていくので、3年後、5年後、10年後とその変化を見つめていきたいと、個人的には感じます。

佐原;店が独自にやっているゾーニングなのか、行政が絡んで行う規制なのか、という点でも変わってきますしね。ゾーニングなり規制なりをする理由について議論を深めた結果なのか、そもそも議論をちゃんと行なっているのかどうかでも、正直見え方は変わってきます。

赤谷;社会にエロって、“在る”ものだと思うんですね。“在る”ものを“無い”ことにはできないと思います。
そして性表現は表現である以上、“演出”が多かれ少なかれ入る世界です。

だから

「性を作り上げるのも、表現するのも、素朴に営むのも、人間そのものの在り様。でも他人が作り上げた世界に自分自身が不快だと思うなら、組する必要は一切ない。あなたの性はあなただけのものである。あなたが好きなことは誰かの嫌いなことかもしれないし、その逆もある。その違いについて一生懸命考えてほしい」

ということを、子どもにきちんと伝えられる大人に自分自身はなりたいと思います。

……ちょっとかっこよく言い過ぎたかもしれない!
すいません。自分はこんなエラそうなことを言える人間だとはまだまだ思えませんが、理想はそうでありたいです。

Q5、いま「性教育」について思うことはありますか?

A5、文科省関係者に「性の問題」についてたくさん学んでほしい

赤谷;豊かな性教育が不在なのに「少子化対策」って、いったいなんなんでしょう。
中絶件数をみれば、日本は「女性が産まない国」なのではなく、「女性が産めない国」であることは明確なはず。
この国のありとあらゆる性の問題を、文科省をはじめ政策に携わるすべての人が学ばない限り、性教育とこの国の未来は変わらないと思います。

性問題のエキスパートが増えてほしいですね。社会生活を営む中で、性別や性から逃れられることはほとんど無い。だからこそ様々な事象や社会問題を、「性別/性」という切り口から分析できる、ジェンダーの視点を持った専門家や官僚が増えていくといいなと思います。

佐原;官僚への性教育って、私実はあまり考えたことなかったんですけど、本当ですね……!

Q6、これからの性教育に望むこと、理想の性教育とは?

A6、「性=生きるための力」といった、ポジティブなメッセージが重要だと思います!

赤谷;性感染症、妊娠、中絶、性差の限定をしない親密性(異性愛、同性愛、それ以外の愛のかたち)、自分のジェンダー・アイデンティティ、性暴力……などなど、とにかく“性に関する知識は生きるための知識”だと思うんです。
性を蔑ろにする国は、生きる力を蔑ろにする国です。

社会生活って、生殖のためだけにあるわけじゃないですよね。生殖のためだけに生きている人っていないでしょう。人生にはいろんな時間がある。だからもっともっと広い意味で性をとらえて、生きた教育が行われるべきだと思います。

佐原;“生きた教育”ってニュアンス、個人的にはすごくわかる気もするんですけど、やっぱりもうちょっと具体的に教えてもらってもいいですか?

赤谷;逆に“死んだ教育”とは何か、って考えるとわかりやすいかも。
私が“死んだ教育”で具体的に思い浮かべるのは、“「コンドーム」という単語は教えても、実物は触らせようとしない教育現場”です。大人が先入観でコンドームをとらえている証拠ですよね。実生活で具体的に活かせないような教え方をわざわざするというか。

佐原;悪いもの、もしくはエロいものっていう先入観でしょうか。「寝た子を起こすな」みたいなトンチンカンな意識もあるだろうけど、「コンドームなんてエロいものを持っている子どもは悪い子だ!」みたいな、エロは悪みたいな価値観の押し付けもありそう。だからコンドームを持っている子がいると、怒る。

赤谷;コンドームは衛生用品だと大人が考えていないから、平気でそんな措置ができるんでしょう。
“生きた教育”とは、現実的に役に立つ情報と知識を与えることだと思います。大人の脳内の理想を子どもに押し付けるのは、“洗脳”“イメージの押しつけ”だと思います。

Q7、理想の性教育ために必要なもの、もしくは邪魔なものって何だと思います?

A7、「性とは恥ずべきもの」という思い込みは不必要ですよね

赤谷;繰り返しになっちゃいますが、性について考えることは、健康的に生きる力そのものです。
「性=恥、ケガレ、隠すべきこと!」みたいな刷り込みは、自分自身がその思いを持つのは自由でしょうが、他者、特に子どもに押し付けてはいけないと思います。

プライベートな部分やプライバシーを守るのは、とてもとても大事なことです。でもそれと「恥かしいこと・キタナイことだから隠す」というのでは、意味合いがまったく違います。
性に過度にポジティブになれ、というわけではありません。しかしネガティブなイメージをうっかり植え付けてしまう方法には反対なんです。
「性の営みは人間社会に当たり前にあること」という意識で話せることが大切だと思います。

佐原;そういうネガティブなイメージって、内面化しちゃってる人も多いと思うんですよね。そういう教育やメッセージを、私たちはすでに受けてきているので。

赤谷;“性に答えはない”“性は変化するもの”という前提を持っておくのが大事なのかなと思います。あとは、個人的な感情は個人的な感情として自覚しておくこと

個人的な感情は、個人的な感情として言う分にはかまわないと思うんです。だけど大人って自分の優位性を利用して、「私の考えや感情こそが、性の真実であり真理だ!」というメッセージを刷りこんじゃうことがよくあるので、要注意ですよね。
学校の先生や保護者など子どもへの影響力が強い人たちは、自分たちの言葉のパワーを知ってか知らずか、濫用してしまうことがよくありますから。

だからとにかく、いろんな世界のいろんな人の考えを知るのは大事だと思います。

佐原;大人って、大人だってだけで子どもより強者なんですよね。物理的なものもあるけど、社会的に、そういう風にシステムが組まれている。

赤谷;大人が性を「恥ずべきもの」と思っていると、子どもが性感染症にかかったり、性犯罪に巻き込まれたりしたときに、子どもは自分の状況を誰かにうまく説明できなくなると思います。すると身近な大人が、子どもからの相談にのれなくなっちゃう。だって学校の先生や親が性を忌み嫌っている態度では、子どもは安心して頼れません。

佐原;保護者や教師、それ以外にも大人たち……というか社会が発しているメッセージって、子どもはしっかり受け取ってますもんね。

赤谷;ちなみに私、古いトイレなんかにある三角コーナーの「汚物入れ」って文字にも、もやりとしたものを感じていたタイプです(笑)。

佐原;あー、それわかるかも。たしかに月経血は血液、分泌物だから、扱いに注意は必要ですけど。

赤谷;「別にキレイとも思わないけど、汚物ってのも何かなんだかな〜」「もっとニュートラルで淡々とした言葉はないのかな~」と思っていました。

あと学校現場の性教育については「“エロ”か“生物学(保健学)的知識”か」の間にグラデーションがほとんどないのが、実際の社会とはかけ離れているなって気がしますね。

佐原;わかる。めっちゃわかるし、たとえば第一回でまめたが「エロいことやってるのにエロいって言ったら怒られるの無理」みたいなこと言ってて「それな!」「そう感じる子どもがいること、否定しちゃうのはおかしいよね」って思いました。

ただ、思いはするんですけど、難しいなとも感じています。
混ぜちゃいけないところで混ぜたり、切り分けられないところで分断しようとしちゃったり。グラデーションが、グラデーションどころじゃないカオスになっている感じがありますね。

赤谷;親や先生たちも、自身の知識や教え方に自信がないのかもしれない。
だからまずは既に成人している人たちが、のびのびと性について学べる場所が増えるといいですね。

Q8、今後「性」や「性教育」について、やっていきたいことはありますか?

A8、引き続き「届くコンテンツ」制作を目指したいです

赤谷;性の何について扱うにしても、読んだ人・見た人に「伝わる・届く・感じてもらう・考えてもらう」コンテンツに関わっていきたいと思います。引き続き編集ライターとして、様々な取材を続けていきたい。

そして、現在の状況をアップデートして生きていきたいです。性の情報は日々動いていくものなので、歴史に学びつつ。

佐原;性については現状の情報もそうだし、歴史認識も、社会の中でのありようも変わっていきますもんね。前進したり、後退したり。ときどき、ウソまみれだったりアクセルかけながらブレーキ踏んでるようなこともあるけど。

赤谷;「私が10代のころは×××な状況(2018年現在の残念な性事情が入る)だったけど、今はこんなに良くなった!すばらしいね」とニコニコする老人になりたいです。
たとえば緊急避妊ピルが町の薬局で買えるようになるとか、大学にセクシュアリティ研究学部ができるとか。
非常に細かい希望を言うと、女性ユーザーが満足する多様な適正AVコンテンツ(※3)(※4)が登場しているといいな、と思います。

Q9、赤谷さん自身が行うのではなく、他の人に「やって欲しい!」と思うことってあります?

A9、「バリアフリーラブホテル」を実現して欲しい!

赤谷;「他の人にやって欲しい」……難しい質問ですね。
どんな障害を持っていても、誰もが使いやすいラブホテルが、もっともっと増えればいいなと思います。段差が多いラブホテル、入り口が狭いラブホテル、多いな……と感じます。
全部屋がバリアフリーじゃなくても、障害がある人への案内があるとか、車椅子でもアクセスしやすい部屋があるとか、そういうラブホテルが増えてほしいです。

佐原;障害だけじゃなくて、セクシュアリティも問わないことが前提のホテルも増えるといいですよね。みんなが、誰もが使えるホテル。
ラブホ女子会とかも聞くし、「“障害のない”“男女カップル”」ではない人たちも利用しやすくなるといいですね。

Q10、性教育をする人におすすめの書籍・作品があれば教えてください!

A10、漫画『“隠れビッチ”やってました。』

赤谷;おすすめは、漫画『“隠れビッチ”やってました。』(作;あらいぴろよ、出版社;光文社、2016年)です。
生きづらさを抱えている人や、生きづらさを抱えている人と接する機会のある人、要は全員におすすめしたい。

異性となかなか親密な関係を築けない自分自身にふと疑問を抱き、葛藤する作者自身の実体験を漫画にした作品です。
自己の苦しみが幼少時代の経験にあることに気がつき、自分自身で苦しみから回復していく様が描かれています。

佐原;タイトルだけ読むと、なんか“モテ”指南書みたいな感じしますけど、違うんですね。冒頭の試し読みが公開されているので、読んでみようかな。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=58984574

赤谷;恋愛のほころびをきっかけに“依存”に気がつき、苦しみやもがきの中で自己を見つめなおしていく様子が、漫画でわかりやすく描かれています。

社会的な失敗や人間関係の失敗は、特に家族の問題など、過去の傷が癒えず苦しみを抱えたままでいる自分自身を振り返るための、ひとつのきっかけなのだと教えてくれる漫画です。
どんなに傷ついても、傷つけられても、自傷であろうが他傷であろうが、人は「自己治癒力」がある生き物なのだと、作者の実話が伝えてくれます。

漫画は、“誰にでもふと思い当たる心の問題”を表現するのに最良のメディアだと感じます。読みやすいので、ぜひ。


以上、赤谷まりえさんでした。

まりえさん、ありがとうございました!

※1;コンドームをお財布に入れるとお金が貯まる、というのは迷信なので、もし信じている人がいたら教えてあげてください……。
迷信でも、コンドームを財布に入れておけば「イザそういうシーンが来た時に役に立つし、いいのでは?」という声もあるのですが、NGです。
財布に入れておいたコンドームは、カードやコインの凹凸で傷がついていたり、破れやすくなっていたりします。

ハードタイプの名刺ケースをコンドームケースにするのは便利ですよ。ついでに本当に名刺も入れておけばコンドームを隠せるので、隠したい人には一石二鳥。
もし財布に入れるのであれば、試供品でもらえる時のように丈夫な厚紙に挟んだままにするなど、工夫が必要です。

※2;BDSMプレイ=嗜虐的性嗜好によるプレイ。
B=ボンデージ(拘束・囚われの身)、D=ディシプリン(調教、懲罰)、SM=サディズム、マゾヒズム。
身体的行為は必ずしも必要とは限らず、ロールプレイにより心理的状況を作り出すプレイもあります。

最近ではよく、単に性格が悪い様子が「ドS」と言われることもありますが、プレイには合意と信頼が必須です。安全性を高めるためのルールもまた同様です。

※3;女性ユーザーが満足するAV
こちら、vol.1でも記載しましたが……
性規範へのカウンター的意味合いの強いフェミニスト・ポルノについても近年、話題になることが増えてきました。
http://heapsmag.com/women-porn-director-give-us-an-alternative-to-mainstream-porn-Erika-Lust

SWASHさんの講演会「セックスワーカーの安全、健康、権利 オーストラリアとアメリカの運動から」でも、フェミニスト・ポルノ(フェアトレードポルノ)についての話題がありました。
参加した際の報告はコチラ

※4;適正AV

「適正AV」とは、IPPAに加盟したメーカーが制作し、正規の審査団体の厳格な審査を経て認証された映像のこと。「AV」と批判を受ける中には、こうした審査を受けたものだけでなく、無審査や海外配信の無修正モノ、海賊版や児童ポルノが含まれるため、こうした不適切・違法な映像と分けて議論する必要があるという考え方だ。

(上記は、しらべぇ記事『「適正AV」とは何か? AV業界改革有識者委員会が記者会見』より引用しました)

「AV出演強要」の問題を機に、第三者である大学教授・弁護士らで作られた『AV業界改革有識者委員会』により提言されました。
表現の自由のためにも、人権保護は欠かせないという視点によるものです。

また近年「AV」と言った場合、正規の審査を経たものと、海賊版・無審査・児童ポルノなどの違法な映像とが一緒くたに語られてしまっていることもあるため、そうした違法なものとの区別のためにも用いられます。

<赤谷まりえ(あかたに・まりえ) プロフィール>
1983年、山形県生まれ。編集ライター。カリフォルニア州立大学ソノマ校にて、女性学&ジェンダー研究専攻で卒業。2008年、お茶の水女子大学人間文化創成科学研究化ジェンダー社会科学専攻入学。在学中に女子中学生向け雑誌で編集業を始め、大学院を中退。当時創刊8年目だったその雑誌で初めて“性のお悩み相談コーナー”を設けた。その後、男性向け週刊誌で働きつつ、書籍・『少女はどこでセックスを学ぶのか』(宋美玄/徳間書店)にて取材と漫画脚本を担当。現在もフェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティに関することなら硬軟織り交ぜた様々な現場に出没している。


以上、全文無料でした。

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