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短編『地上鉄道777』

光速のバカンスが終わりを迎えて
低速の日々が再びやってくる

オケラの方がよっぽど役立つんじゃないかなと思いながら汽笛を鳴らしてドアを閉めようとする汽車に乗る

ポコポコとそこら中から蒸気が出ていて、ホームはもう真白の先に、あっという間に見えなくなって俺は僕は私は出発したんだ

地上しか走れっこない俺の僕の私の銀河鉄道は1分ごとに一つ隣の駅に停まっていく。
まばらだった車内も気がつけばモォっと牛が鳴きそうなぐらいのぎゅうぎゅう詰めで

この満員電車が
俺は僕は私は
いやなんだ毎日

アジフライの飛び跳ねる茶水池の上に浮かぶ駅のホームが見えてきた。
この汽車だけは何故か車内の天井が全てモニタで先頭車両の映し出す景色を広く魚眼の様に映し出している。

茶水池の上に浮かぶ駅に私は降りた。
まだ慣れない駅のホーム、矢尻橋口に行きたいのにいつも誤って反対の茶水割口に行ってしまう。

駅を出発した汽車は
高音低音どっちつかずな汽笛をあげて一気に快速モード。星立夢中競技場前まで蒸気を突散らかして走っていく。

時空地上都市ゲートロード駅に降りようと思っていた僕はこの汽車が快速だと言うことをすっかり忘れていて、そのまま悔しくも乗り過ごしていく。

10分程で星立夢中競技場前の岡に汽車は到着。
今の時期は桜が見頃の並木道が改札の外にある。
ここまでくると、満員だった車内から乗客がホームに一気に流れ出し、
車内はすかすかとなって、ほっと一息つけるようになる。

次の駅はシン・ヂュク
五臓六腑の出会い坂で有名な場所だ。

地上線、地底線、空中線、いろんな汽車が一瞬交わる学生寮の玄関口は常に乗客で魍魎跋扈している。

汽車が疲れたかのようにプシャーと汽笛を鳴らして駅のホームに到着した。
ここは無理矢理強引乗り込み降り入れが多い為、汽車のドアはランダムに開いたりしまったりする。半分ぐらいしか開かないドアとかある。

間違って快速に乗ってしまった僕はここで降り、乗り換える。不運にも下りの線はアジフライ猛烈大挙で遅れてるらしい。

僕が降りた後、汽車は5分ほどヂュクに停車し、ドアを閉めると
もう一丁!
みたいな威勢のいい汽笛を鳴らしてまた走り出す。
次は終点の夜鷹

感無量といった感じに感情を込めて車掌が次の駅を放送で連呼する。
夜鷹まではあと6時間。
どこにも停車しないので、また便所も車内はないから、大概誰か漏らしたりする。

車内放送で
俺は寝過ごした事に気がついた。

たった一駅、茶水池の上に浮かぶ駅の手前の駅で降りるはずだったのに。

道中まだまだ先は長い。
今日はお腹だしてる服だったのでちょっと冷えてるっぽい。

俺は覚悟を決めた

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