ゴール設定のための学習成果分類
教育デザインシリーズその4です。(初めての方はその1からご覧ください!)
今回は教育システムの設計のお話です。
学習ゴールの設定
その3で述べた通り、教育システムの設計における分析フェーズで行うことの1つに学習ゴールの設定があります。
当然、人が学習を行う上でゴールは適切に設計されるべきなのですが、一般に教育のゴールの設定は難しいと言われています。何をもって学習の修了と考えて良いのかが不明確な場合や、学習者が学びたい事(Want)と学ぶべき事(Need)が明確に分かれていない場合等、システム面や学習者の両方に不確定要素が多いためです。
その中でも、ゴール設計における有効な方法1つとして、人間の能力の種類に着目したゴールの設計があります。これは、学習の成果を能力ごとに設定する方法です。
学習成果の5分類
ガニェは学習成果を5つに分類する事で、教育デザインを簡略化できると提唱しています。(ガニェはその2でも紹介したこの分野の第一人者です。)
ちなみに、次に紹介する学習成果のうち、運動技能以外の種類の能力はほとんど全ての教育システム設計に関わります。逆に、本来のゴールを細分化するための分け方の1つと考えても良いでしょう。
知的技能
いわゆる、手続き的知識です。(数学の公式など)ルールや原理を適用できることと言った、何かを実行する能力を獲得する成果です。(※認知的方略との違いは、ウェイソン選択課題を例に解説します。)
認知的方略
いわゆる、課題解決能力です。特定条件下で発揮できるような、領域固有の能力がほとんどを占めます。しかし、「学習の仕方」や「暗記の方法」のように一般的に発揮される能力もあり、その最たる例の1つが「メタ認知」です。認知的方略は、演習等の形で成果を計ると良いでしょう。
言語情報
一般的な意味合いでの知識に当たります。必ずしも暗記で身につけるとは限りません。一応、短期的記憶と長期的記憶の両方が含まれますが、長期記憶に定着させることを成果とした方がより良いでしょう。
態度
「個人の行動選択の傾向」を意味します。例えば、手に持っているゴミを目に付いた植木に投げ込むか、ゴミ箱を探して捨てるかの選択でどちらを選ぶことが多いか、で態度を測定できます。(が、個人ごとの観察は非常にコストが高いため、一般にはアンケートを用いて測定します。)このような「態度」も学習によって変化を生じさせる対象である。(上官の発言にイエス!サー!と言うように学習させる軍隊、が一番ピンと来るかもしれないでしょうか?)
運動技能
目的にそって身体を動かすことができるようになること。一般的にスポーツなどができるようになることだと考えがちですが、「文字の書き方」や「挨拶の際の身体の動かし方」まで含めた広い意味である。
まとめ
ゴールを構成する成果を細分化する事で、適切なゴールの設定に近づけるかも、と言うお話でした。
エンジニアの育成に携わっている身ですが、態度の学習が最も大事かもしれないと思う日々です。自分の分かる範囲での試行錯誤や調べ物を当たり前のように行動するように仕向けるにはどうすべきなんでしょうね...←試行錯誤中
教育システムの設計←前 次→未定
次回予告とか(次を書いたら消します)
来週末こそ学習と記憶の詳細モデルについて書きます!多分。
と思いましたが、今回書いた学習成果を深掘りするかもしれません。
その前に知的技能と認知的方略の違いを書かないと...
(完全に書く順番を間違えた感があります。)
(IDの歴史とか、前に書いた認知的徒弟制の話とかも書きたい。)
フォローやスキがもらえたので、テンション上がり気味で頑張ってます!