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【雑記】マーケティングの戦略を使ってレゴで陸ガンを作ってみた

(2020.1.27加筆、修正)

普段はマーケターとして顧客理解や顧客価値の探索などについて書いていますが、今回は趣味について書いてみます。
私の趣味はLEGOブロックの制作です。自分が子供の頃は全く触っていなかったのですが、子供が生まれたのを機に始め、独学で作っています。レゴを作るのにも癖でマーケティング戦略の要素を取り入れていたので、今回はそれについてだらだら書いてみます

今回の説明でサンプルとして紹介する完成品はこちらです。

サムネ2



機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場する主人公機の陸戦型ガンダム、通称「陸ガン」です。今回はマーケティング戦略の要素を取り入れたレゴ制作についてこの陸ガンを使って説明したいと思います。

概要
この記事は、マーケティングの基本的な戦略である
「顧客を絞り込む」
「顧客の望む状態を想定する」
「プロダクトのコンセプトを決める」
「コンセプトからプロダクトの仕様を決める」
といった要素を用いてレゴを作る内容です。レゴに興味がある人は目次から「4.プロダクトの紹介」をクリックしてください。


1.企画

レゴは実際の製品づくりと違い、実際に触って試行錯誤し思考と実践の繰り返すことが容易なので、手に取って作るのが一番いいです。しかし、実際に製品を作るときはそのように簡単に試行錯誤は出来ないもので、製品の企画は、制作よりも先に企画から始まります(まぁ、当り前ですが)。そのため、まずはレゴに触らず企画から行います。
今回の一連の検討の流れは以下になります。レゴを触るのは後半からです。

流れB

順にそれぞれを説明します。

1.1 顧客の設定

商品を企画するためには、まず顧客を定めることが重要です。
自分自身を顧客として設定し、関連するエピソードから、顧客にとって理想的な状態を洗い出します。

【顧客】30代男性。既婚。幼稚園の子供あり。
【顧客の最近の出来事】お菓子売り場で、陸ガンの食玩(G-FRAME)を発見し、懐かしくなりつい購入した。
家でパッケージを開けて飾ろうとしていると、幼稚園の息子が一緒に遊びたがったが、対象年齢15歳以上のフィギュアのため幼稚園児では壊されてしまいそうなので、子供には触らないように指示をした。
巨匠、大河原邦男先生がデザインした不朽のデザインである陸戦型ガンダムに、親として子供に幼いうちから触れさせることが出来ないことを心苦しいと感じている。
【理想的な状態】幼稚園の息子と一緒に陸ガンで遊ぶ。

ちなみに以下が上記で書かれているフィギュア。(G-Frame 陸戦用ガンダム)

画像6

陸ガンとしてはアレンジの効いたデザインではあるのですが、今回はこれを再現することになります。

1.2 顧客課題の抽出

顧客を設定したら、顧客の課題を洗い出します。

【現状】幼稚園の息子と一緒に陸ガンで遊べない
【課題】息子はまだ手先が不器用で手元にあるG-FRAMEシリーズは破損させてしまう恐れがある。
(代替候補としてガンプラもあるが、それでも壊してしまう可能性が高い)

1.3解決手段の検討

課題が見えたら解決手段を考えます。

【解決手段】破損の心配がないレゴによる陸ガンの提供
【解決手段が提供された状態】幼稚園の息子と一緒に陸ガンで遊ぶ

まぁ実際、陸ガンはガンプラ以外にもいろいろなフィギュアがいろいろ発売されているので、目的を達成するにはそれを買えばいいのですが今回はレゴを作る前提なのでこのくらいで。

1.4製品のコンセプトの検討

1~3の手順を経て、レゴで陸ガンを作る前提が整いました。しかし、単に理想を描くだけでは商品は作れません。きっちりと製品として落とし込むためにコンセプトを作る必要があります。
ここでは「幼稚園の息子と一緒に遊べる陸ガン」とは何か、解決手段を一歩進めて考えなければいけません。今回の商品のコンセプトを私は以下のように決めました。

【製品のコンセプト】幼稚園の息子と一緒に様々なポーズをさせて遊べる。


1.5製品品質の検討

レゴの出来栄えを評価するにはさまざまな項目があり、なかなかそれらを両立させることは難しいです。そのため何を優先するかを考えなければ完成しません。
幼稚園の息子と一緒に、様々なポーズをさせることを優先させるために必要な項目、優先順位を決めます。※以下のレゴ作成にかける要素は私の経験による創作した項目で、名称も個人的な呼称になります。

まず第一に優先するのはコンセプトにあたる部分、レゴに様々なポーズをさせた時にその状態を維持できるかどうかです。
続いて優先するのは、子供が触っても壊れない堅さ「堅牢性」と様々なポーズをとれる「可動域」の広さです。
そして、今回特に力を入れないのは、「形状の再現性」(実際のモチーフの形状を再現できているか)、「色の再現性」(実際のモチーフと同じ配色を再現できているか)、「機能の再現性」です。「機能の再現性」とはモチーフの作中での設定を再現できているかということです。例えば、モチーフが変形するものであれば、ちゃんと変形できるかどうか、といったことです。今回の陸ガンであれば、コクピットが開閉したり、膝からビームサーベルを出したり、開閉可能なコンテナを脱着できるかといったことを再現するかどうか、ライフルを手できっちり握っていて脱着が可能かどうかなどです。
今回は、ポーズの保持力を優先し、形状や色についてはいくらか陸ガンっぽくなくてもいいこととします。
【製品品質】
堅牢性:★★★★(優先度:高)
形状の再現性:★★★(必要最低限)
色の再現性:★★★(必要最低限)
可動域:★★★★(優先度:高)
ポーズの保持力:★★★★★(最優先)
機能の再現性:★(不十分)


1.6 予算の設定

どのくらいお金をかけるかも重要です。お金をかけて適するパーツを調達すれば完成度はぐっとあがります。(特に色)今回は、基本的にありあわせのパーツで作ることにしました。
低コスト:★★★★(優先度:高)


これまでの検討結果をまとめると以下のようになります。

まとめ2

企画は以上になります。続いて制作に取り掛かります。

2.1 レゴの制作 その1 サイズ決め

 企画で方向性が決まれば制作に入りましょう。まずは大まかな大きさを決めます。
 今回優先すべきは、パーツの保持力。つまり腕を上げたのならそこでぴたっと止まること。腕が重すぎれば自重で下がってしまうため、可能な限り全体的に小さく軽くする必要があります。かといってパーツが少ないと各パーツ同士の結合力が下がり、幼稚園児が雑に触ると壊れてしまいます。
 過去の経験から 体の横幅は凸4~6分、手足の太さは凸2くらいをイメージします。
 ここでまで決めて、レゴを手にとります。今回の完成した作品(左)と過去作品(右)の比較が以下。作る前からこれくらいのサイズをイメージしていました。右はコンセプトが違うためこのサイズになっています。

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2.2 レゴの制作 その2 胴体

 全体的なバランスを決める中心となる胴体から着手します。
 作った胴体はこちらです。

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 思い切ってくびれた胴体にしています。

比較2A

(一番右は同一モチーフの別の商品の画像 https://p-bandai.jp/item/item-1000125322

本来の寸胴で重厚感のある陸ガンの良さは失われた形状ですが、コンセプトに沿ってこのような形にしました。これはいろいろなポーズを取れるように上体の回転だけでなく、前後への屈折も再現することを優先した結果です。
下の写真は制作中の別の類似の胴体を並べたものです。レゴでも太く作ろうとすれば右のように作れますが今回は可動域を優先したためこのようにしました。

比較3


また元のデザインとは異なり中央に白を入れました。これは単純に黒いツルツルパーツが手持ちになく、コストを優先したためです。今回モチーフにした陸ガンのバリエーションにこのような色合いのものもあるため(ブルー3号機)相性は良いようです。

2.3 レゴの制作 その3 腕

 続いて腕を作ります。

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 堅牢性を維持するためマシンガンと手は脱着できないように一体型にしました。(機能性を優先するのであれば、脱着式にすべきでしょう)
 関節を増やしすぎると曲がりやすく、保持力がさがるため、関節パーツは三か所にしました。

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 1~3番目が実際に作った球体関節の位置。4番目に関節を入れても可動域は高まりますが、保持力を考えて関節は加えませんでした。


2.4 レゴの制作 その4 下半身

 続いて下半身です。完成済みのものがこちら。

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腰回りのスカートはこのように展開します。

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元となったGフレームと比べてかなり太ももが短い(下図参照)ですが、これも保持力を高めるための工夫です。

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下図のように、膝とスカートが触れることで、足を固定することができます。

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また太ももは薄く、膝が前に突き出て、横からの見た目のバランスは悪いです。

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しかし、このため膝を立てた姿勢が可能になり、可動域を高めるためこのような形に落ち着きました。

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2.5 レゴの制作 その5 頭

 ここでようやく頭部を作ります。
 頭部は乗せるだけで、胴体に干渉も少ないのでこのタイミングでさくっと作りました。
 体に対して頭が大きすぎるような気もするのですが、バランスも含め形状は優先事項ではないので、適当にさっさと作ります。

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2.6 レゴの制作 その6 背中

 今回機能性は重視していないので、コンテナを背負う際に展開する背中のリフト機構やコンテナそのものも排除。腰の可動域を狭めないことを優先して作ります。

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2.7 コストの制約

今回は手持ちのパーツで完成させることを優先したので、本来は左右対称であるべきなのにそうでないところなど、まだまだ荒いところは残っています。ただ、優先事項であるポーズを決めることに影響はなく、形もそこまでこだわるコンセプトではないのでいったん完成とします。(レゴは後からバージョンアップ、組み換えができますので)

図1

3 品質確認/コンセプト検証

制作が完成した後は、きっちり目標通り出来ているか確認しましょう。作りっぱなしで市場に出すのは危険ですので、出荷前にはきっちり問題点がないか確認しましょう。続いて全体が完成した状態で、コンセプトである幼稚園の息子と一緒に様々なポーズをさせて遊べる。が本当に可能であるか確認します。

いくつかポーズをとると、なんと前かがみに上半身を曲げられないことが発覚。

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そこで胴体と足をそれぞれ修正。以下のように曲げられるようになりました。

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(※その他にもいろいろと問題があり、直していますが紹介はここまで)

というわけで、いろいろなポーズが可能な陸ガンのレゴが出来上がったのです。

4.プロダクトの紹介

(↓)膝立ちを正面から

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(↓)頭上の敵へ銃口を向ける

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(↓)着地

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(↓)駆け出した姿 その1

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(↓)駆け出した姿 その2 スカートとひざが合うことで、スタンド無しで自立できています。

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(↓)マシンガンから180mmキャノンへ換装。ただし、重くて持ち上げられません。

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(↓)膝をつけば、なんとか構えられます。

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(↓)盾にマウントする定番ポーズ(「輝き撃ち」)もやはり安定します。

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(↓)ちなみに、TVシリーズ準拠の正式な「輝き撃ち」の再現度はこのくらいです。

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5.まとめ

今回、マーケティングの基本的な戦略に沿ってレゴを作ってみました。ポイントとなった部分を抜粋してみると以下になります。

まとめ3

大事なのは、「顧客は誰か」「顧客は何のためのプロダクトを求めるのか?」「どんなコンセプトでプロダクトを作るか」「コンセプトが実現できているか」といったことをきっちり確認することです。

レゴの組み方なんて自由だとは思いますが、何か明確なモチーフがあるものを再現する場合は、このようにコンセプトをしっかり定めておくと、どのように再現するか考える際に迷わずサクサク作れるので大変便利です。
(まぁ世の中にはパーフェクトに作っちゃう人もいるんですがね)


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