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セカンドチャンス by アニー ⑶

ナレーション:アニー🐶

前回迄は、難しい始まりを経てやっと新しい環境へ慣れたかと思うと、まもなく6匹の子犬を出産したアニーの、子育てに明け暮れる様子を読んで頂きました。


5.アメリカへ渡る
Crossing the Ocean

引越しのその日、私達は全員ケージに入れられ、長い間車で移動しました。そして飛行場に着きました。私達は検疫と呼ばれるオフィスへ行った後、飼い主と離れ離れになりました。とにかくここはどこでもすごい騒音がしました。そして何時間か経った後、飛行機というものに乗りました。飛行機の中は寒くはありませんでした。意地悪な人もいませんでした。他の動物もいませんでした。だからほとんど寝ていました。最初はどこへ行くのだろうと不安でしたが、しろみも8匹の猫もみんな一緒の部屋にいたので、私はそれ程怖くはありませんでした。でもしろみや猫達はその騒音に初めのうちはとても不安で鳴いていました。あまり長い間乗っていたので、みんなそのうち疲れて寝てしまいました。

飛行機がやけに揺れたかと思うと、しばらくして今度は静かになりました。やがて私達は飛行機から降ろされ、カートにまとめて乗せられ、もう一度飛行場の中へ入って行きました。ここはなんといっても人がたくさん! 私達誰もこんなに一度に多くの人がいる所に来たことがありませんでした。私達を見ると珍しがって近寄って来る人がたくさんいました。特に子供達。そして今度はどこへ行くのかと思っていると、ようやく飼い主に再会できました。

私達は車で新しい家へ向かいました。人間にとってはここは別世界と呼べる程に違った社会らしいのですが、私達ペットにとってはそれ程の違いはありません。飛行機に乗ったという経験以外はただの新しい家への引越です。同じように家がたくさん並び、人々はペットを飼い、同じようなゴハンをもらいます。今度の家は結構広く、私達は思い切り駆け回って遊べるほどでした。私達は2階に住み、1階には別の家族が、そのまた下にも別の家族が住んでいました。ここでも意地悪な人や動物はいませんでした。でも前の家と違ったところは、散歩に行く以外は完全に家の中だけの生活となりました。以前のように好きなだけ敷地内や庭を駆け回れることはなく、家を一歩でも出る時は必ずリードに繋がれました。

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6.アメリカでの生活
Park Rules!

この家で楽しかったことは何と言っても散歩です。近くに大きな公園があり、それは公園という名でしたが森のようでした。とても広く、飼い主が休みの日に行くと1-2時間はいます。半日以上いることもあります。あまりに広くて、中で他の人や犬に会うことはあまりありません。でも会えばそれは顔見知りばかりです。しろみは他の犬が大好きでしたので、それは興奮しました。時々会ったピットブルのスージーは大好きでした。飼い主のお姉さんも好きでした。会うと必ず立ち止まり、私達がクンクンをし合っている間、人間同士は立ち話をしています。お姉さんはスージーがピットブルなので、他の犬が避けて通るとか、飼い主が友達になろうとさせないなどと言っていました。

1年ほどするとまた引越しをしました。今度は車で1時間くらいの所だったので、前回ほど大変ではありませんでした。でも飼い主は何を考えたのだろうと思うほど、今度は狭い家でした。前の家の半分くらいでしょうか。私は構いませんが、ネコ達は不満そうでした。ネコ達は散歩に連れて行ってもらえないので、完全な室内飼いを強いられて、ストレスはたまっていそうだったし、けんかもよくしていました。

この家を一番楽しんでいたのは息子のしろみです。歩いて10分ほどの所に、日本でも見たことがないような大きな公園があり、毎朝そこへ散歩に行くのが日課となったからです。ここは賑やかな街中にいきなり湧いたオアシスのような広い公園で、都会の真ん中とは思えませんでした。

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朝の2時間は、公園内の車道が通学中の子供やジョギングをする人に優先され、自動車は通行止めになります。そのため私達はリードをいっぱいに長くしてもらい、道路の真ん中を堂々と歩くことができました。この公園がすいていることは一年中ありません。自転車に乗る人、ジョギングをする人、犬の散歩に来る人、子供の野球リーグ、ピクニックをする人などで常に活気立っています。芝生も丘も池もあります。ベンチもたくさんあり、日本の公園のように人間がベンチの取り合いをすることは滅多になく、座りたければいつでも空いたベンチを見つけることができます。こちらの人はベンチが空いていても、芝生の上に座ったり寝転んだりしています。芝生に直に横になることがどんなにか気持ちがいいことを知っているのでしょう。

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公園を更に入って行くとだだっ広い芝生が続き、そこでも同じように、朝の2時間を犬を放してもいいことになっています。言わずと知れたドッグランです。リードから離れて思いっきり走れるチャンスは、私たち犬にとって滅多にない楽しみのひとつです。毎朝しろみと延々と追いかけっこをしていました。大きなサークルを描いて何週も何週も走ります。飼い主とフリスビーをしている犬もいました。他の犬も参加し、私達は自由に遊ぶことが許されました。走って体が熱くなると、しろみは道路を横切って勝手に池の方へ行ってしまいます。そこで全身行水をしてきてずぶぬれになり、それはおかしな格好で戻ってくると、足は長靴を履いたように泥だらけで人々によく笑われていました。「離れた所へ行っちゃダメ!」と毎朝怒られますが、やはり毎朝やっていました。毎朝1時間くらいかけてそこで遊べば、帰ってぐっすりと昼寝をし、お留守番もそれほど長くは感じませんでした。しろみも同じです。しろみはとにかく、他のたくさんの犬に会うことが楽しくて仕方がない子です。公園でも道でもたくさんの犬にすれ違ったあの町は、アパート暮らしだったけれど楽しくていい思い出です。今の家はカントリーにあり、ここでは野生動物がたくさん生息し、空気も水もおいしいところですが、犬は滅多に会いません。カントリーの人は家の敷地が広いので、犬を散歩に連れて行かないのです。

パークへ毎朝来る犬の数は100匹くらいいたかもしれません。近所のアパートに住む人の多くは犬やネコを飼っていました。あんな公園がそばにあれば、犬でも飼いたくなるのでしょう。うちの飼い主もこの公園のために、近くにアパートを探してくれたようでした。だから私は室内が狭くても一向にかまいませんでした。

この公園にゆっくり連れてきてもらう時間がない時や夜は、アパートの周辺を1-2ブロック歩くことに留まりましたが、それでも何匹もの犬の散歩に出会います。よく会った大型犬のルーファス、どうしているかな。

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↑ アパートの窓から飼い主の帰りを待つしろみ


<つづく>

次回:この後、都会に住むには動物が多すぎて、一行はカントリーに移ります。犬たちにとっては自然の中でのライフスタイルが再開します。どうぞお楽しみに!

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます