どうってこたァねえよ ーOの崇拝者へ

どうってこたァねえよ

ジャンクだキャンプだポップだと、自分の音楽を形容していたとっちゃん坊やが

ご申告通りの地位まで引きずり下ろされたってだけの話よ

何が不当だって、知らなかったのか

水に落ちた犬を叩く日本人が、どれくらい残酷で凶暴か

だけど世話ねえな

隅っこの方で黙ってりゃボクたちワタシたちのヒーローの若き日のご乱行でいられたものを

陽の当たる場所までノコノコ出てったが最後このザマだ

お日様めがけて剣を抜き、ではなく

お日様向かって媚を売り

焼かれて落ちて死んだのよ

どうってこたァねえよ


おっ、睨んでるね

悪いけど、睨んだところで変わりはしないよ

単に一人の音楽家が自業自得で破滅したってだけじゃなくて、

自分の立って依る岸辺が無惨に壊れていく過程だってことは

でもまあ、どうってこたァねえよ

ずるい大人たちへのささやかな反抗、ボクたちワタシたちだけのちょっと鼻持ちならない秘密がいつの間にか年取ってバカでかくなって、

貧しく余裕を失ったその他大勢にとっちゃ目の上のたんこぶ、

自分たちの生き血を吸って肥え太る老人の既得権益になってたってだけよ

何せ疫病流行りからこっち、麗しの消費主義ってのはえらく旗色が悪いんでね

だから気の毒には思うが、おれを黙らせても何もならないよ

水の流れは止められないんでね


だけど、もしそれでも自分のアイデンティティを捨てきれないってんなら、好きという感情にウソをつけないってんなら、

泥の底まで叩き落とされた音楽家をずっと見捨てないことだよ

これから10年20年、長い長い贖罪を果たすのを見守って、叱咤激励することだよ

大人としてそれ以外の向き合い方はないよ

そこからようやく「音楽」が始まるんだよ


(Special Thanks to 金芝河)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?