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凡庸な汎用性

凝り固まっていた筋肉をほぐして、血の流れを良くするように。
今までの自分の愚かさを正していく。
そうして健康という名の、凡庸な汎用性を手に入れることを誰もが望んでいる。 人は考える必要などなくなって、時間の流れは生死の概念と切り離されて。 最大の恐怖から、人々の心と世界とを遠ざける人類総出の先延ばしを継続するための営みに、流れる血と汗。

人が人らしく生きられるのって、そういうことに気が付くまでなんだ。
大人になったとか現実をちゃんと見ているとか、そんな言葉で自己暗示をかけて自分が高次元の存在になったかのように思い込む、その瞬間までが。
好きだったものや嫌いだったものが姿を消して、パターンに自分を当てはめていく作業の繰り返し。 消えゆく生命の火が小さくなっていることに気が付きたくなくて、暗く狭い道をえらんでは、明るい未来だと言い聞かせている。

社会の歯車とは、感心するほど言い得て妙だなと思う。
人であることをやめて、同じような形に整った心の残骸に油を差して動きつづける。 すり減ったら交代だ。

心がぎざぎざになってきた。
けれどこの生命が照らしてくれるのはわたしだけ。
それだけが誇りを守る炎。


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