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「未知の世界」ホームスタジアムの二階に足を踏み入れた話。

「自分たちが応援するチームの二階席に行ったことがない、そこがどうなっているか知らない」
それがスタジアムにまだ足を運びはじめたばかりのファンやサポーターさんの発言ならわかります。
しかし、それをもし3年もスタジアムに通い、アウェイにも行くサポーターが、言っていたとしたら、あなたはその言葉を信じられるでしょうか?
ヴェルディサポーターにとって、味スタの二階席は未知の世界
私がスタジアムに足を運ぶようになるずっと前から、ヴェルディ戦の味スタ二階席は言わば「開かずの間」となっています。
コンサートや日本代表戦、お隣(FC東京)の試合では当たり前のように解放される二階上層スタンドへの階段は「上層スタンドは、本日使用しません」という文言の柵で閉ざされ、入ることができません。
広大な味スタは、運営にあたり莫大な使用料が発生しています。
その背景から、観客動員があまり見込めないイベントでは、経費の関係から封鎖せざるを得ない状況にあるのです。ヴェルディの試合は残念ながら、その対象のイベントになってしまっています。
そんな事情もあり、ヴェルディにとっての二階席は、自分たちのホームスタジアムであるにもかかわらず、サポーターにとってはいわば「未知の世界」になってしまっているのです。
二階席での観戦がファンクラブの特典になっていたり、試合のイベントでたくさんお客さんを集めて二階席を開けよう!と宣伝したり、ヴェルディにとって「二階席を開ける」ことはもはや一つのイベントになっているのです。
自分のスタジアムに、自分が知らない場所がある。
言葉に出したらなんかロマンチックだけど、経緯を考えると自分たちのいわば「家」なのに自由に使えない空間があるって、なんだか居心地が悪いこと。
もちろん普段そんなに気にしているわけではなかったんですけど、アウェイに遠征した時や日産に行って二階席に座った時、ふと思っていました。
味スタの二階って、どうなっているんだろう?
どんな景色が、そこには広がっているんだろう?
と。
そしてその「パンドラの箱」は思ったより早く、しかも予想しない形で開くことになりました。

新しい観戦様式が産んだ偶然

今季、コロナ禍において、サッカー観戦についてもソーシャルディスタンスが取られ、声出しの禁止や座席を離すことが義務付けられています。
そしてガイドライン変更で収容人数の緩和が行われたことにより、座席の確保のため本来であれば使わない二階席のスタンドで観戦出来ることになったのです。
16年間のファン人生、4年目になるサポーター人生で未だに踏み込んだことがない、未知の空間。
年甲斐もなくドキドキしながら、自分は二階席のチケットを獲りました。
いつものようにスタジアムに入り、スタグルを確保。この日は選手とのコラボスタグルが発売されていました。
そして、普段行くゴール裏1階席とな違う方向へと向かい、二階席に続く階段を登ると…そこに広がっていたのは、今まで見たこともない景色。
味スタの二階席は、とてもコンパクト。トイレや売店などの機能は一階に集約しており、一面座席が敷き詰められていました。
しかし傾斜がしっかりと計算されており、ワイドに試合を見渡すことができます。そこからピッチを眺めても、はっきりと選手の姿を捉えることができます。
「味スタって、こんなに大きかったのか…」
普段来ているはずのスタジアムが、いつも以上に広大に見えました。
二階席でも変わらぬ雰囲気

この日のヴェルディの対戦相手は、2018年の参入プレーオフでの勝利を最後に白星がない、難敵大宮アルディージャ 。序盤から危ないシーンを作られますが、セットプレーとカウンターで一気に3点を奪い、ほぼ勝負を決めます。
そして、今は声を出せないながらも常に自分たちを熱く引っ張ってくれる応援団体さんがいないにも関わらず、多くの人がゲーフラやタオルマフラーを掲げ、ゴールが決まればグータッチ、応援には手拍子、いいプレーに拍手を送る、まさに普段のゴール裏の風景がそこにはありました。
これはまさしく、応援団体さんが自分たちに「チームをサポートする楽しさ」を教えてくれ、それを実行できる人々が二階席にも集まっていたから。
以前日産のゴール裏二階で見た光景は、既にもう出来る準備は出来ている。ゴール裏はサポーター団体さんだけでなく、その場に集う一人一人が作っているものなのだ。そう確信しました。
そして後半1点を返されたものの、見事難敵大宮を降し、ヴェルディは勝利しました。
今は制限あるけど、いつか二階席が完全に、そしてバックスタンド含めて多くの人が二階席で見れる日が来て欲しい。
すっかり夜の闇に覆われた味スタを後にした自分の胸は、これからの輝く未来への希望に満ちていました。

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