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小津安二郎生誕120年記念シンポジウム"SHOULDERS OF GIANTS"リポート

皆さんこんにちは!学生応援団のわくとです。

10/27(金)、小津安二郎 生誕120年記念シンポジウム"SHOULDERS OF GIANTS"が三越劇場で行われました。

13期のりんとわくとで行ってきました!

"SHOULDERS OF GIANTS"とは


"SHOULDERS OF GIANTS"は、今なお映画界に多大な影響を与え続けている小津安二郎監督の生誕120年を記念して、小津という「巨人」の肩に乗り、これからの映画の未来を考える、今年限りの特別なイベントです。

本イベントは、今年の東京国際映画祭の審査委員長を務めるヴィム・ヴェンダース監督によるスピーチから始まり、続いて映画『お早よう』が上映されました。
上映後には、黒沢清、ジャ・ジャンクー、ケリー・ライカートという世界的な映画監督3名が、それぞれの視点から小津作品の魅力を語るシンポジウムが行われました。

映画『お早よう』上映

続いて映画『お早よう』が上映されました。
本作は、高度経済成長期の日本の新興住宅地を舞台に、近所付き合いに振り回される大人たちや、テレビを買ってもらうために大人と小競り合いを起こす子どもたちといった、当時の庶民生活を描いた作品です。
以下、学生応援団の2人の感想をお伝えします↓

〈感想〉
小津作品はほとんど観たことがなく、この作品も初めて観たのですが、小津安二郎のユーモアのセンスが素晴らしい!大人と子ども両方の視点から日常を捉えている所がとても面白く、最初から最後まで全く飽きずにあっという間に終わってしまいました。小津作品をこれからどんどん観てみようと思います!(りん)

これまで観てきた小津作品の中で最もコミカルな作品だと思いました。戦後の豊かな時代へと進んでいく人々の生活の暮らしを温かく描きつつも、人間の真理を浮き彫りにするような皮肉めいた台詞もあり、単純ではない人間の性質を突いてくるところが、小津作品の醍醐味だと感じました。(わくと)

世界的巨匠3人によるシンポジウム

左から黒沢清監督、ケリー・ライカート監督、ジャ・ジャンクー監督

映画『お早よう』上映後には、世界の第一線で活躍する映画監督3名によるシンポジウムが行われ、J-WAVEパーソナリティのクリス智子さんと市山尚三プログラミングディレクターが司会を務めました。

『お早よう』を見た感想について、黒沢監督は「改めてデジタルリマスター版を観たが、映像がとても綺麗で均一感があった。また、同じ場所を、同じ構図で撮っているのにもかかわらず、豊かな物語が広がっていることに驚かされた」と語りました。
続いてケリー・ライカート監督は「ダグラス・サーク(ドイツの映画監督)のように絵画的で、生活に根差した細かいストーリーが素晴らしかった」と語りました。
そしてジャ・ジャンクー監督は「テレビを巡る物語を観て、自分の子どもの頃を思い出した。また、小津作品は家族をテーマにした物語が多いが、そこに子どもの視点を加えたことで、さらに新しい作品になった」と語りました。
また、もし小津が今の時代に映画を撮ったら、『お早う』ではなく『今晩は』という、テレビではなく、ロボットがほしい子どもを描くのではないかとジョークを飛ばしていました。

それぞれのお気に入り作品

次に、小津作品の中で特にお気に入りの一本を訊かれると、黒沢監督は『宗方姉妹』(1950年)、ジャ・ジャンクー監督は『晩春』(1949年)、ケリー・ライカート監督は『東京物語』(1953年)、『彼岸花』(1958年)と答えました。
まず黒沢監督が『宗方姉妹』を選んだ理由について「小津作品といえば、静かで穏やかなイメージであったり、崩れゆく家族の貴重さを温かく見守る作品のイメージが強いが、実は親子関係の誤解や世代の断絶、夫婦のすれ違いといった暗い部分もたくさん描いていて、小津のニヒリズム的な側面が最も出た作品が『宗方姉妹』だ」と語りました。
また「『宗方姉妹』では、今までの映画では観たことのないような夫婦の断絶した関係性が描かれていて、小津ほどの映画監督でも、一貫した作家性が有るわけではなく、右往左往しながら作品を作り続けているのだと知ることが出来る」とも語りました。
数多くのホラー映画を撮ってきた黒沢監督らしいダークな視点を通して、新たな小津作品像が見えてきたような気がします!

続いてジャ・ジャンクー監督が『晩春』を選んだ理由について「この作品では、家族の温かさは、結局は『束縛』であり、濃密すぎる関係性はいずれ瓦解を生んでしまうということを描いているのが素晴らしい」と語りました。
また、文学では表現できない、言葉を超越したものを映像によって表現しており、それは『お早よう』にもみられたと明かしました。

そしてケリー・ライカート監督は、『東京物語』と『彼岸花』を選んだ理由について「『東京物語』はロードムービーだと思う。アメリカのロードムービーは自分自身を見つけるために旅に出るが、『東京物語』では、むしろ家に帰りたいというロードムービーであり、すでに答えが見つかっているのが新しいと感じた」と語りました。
また、小津映画で描かれる女性を観ていて、本当の幸せは同性の友達といる時なのではないかと思うようになったと明かしました。

監督方のお話は非常に聞き応えがあり、新しい視点での小津作品の見方をたくさん知ることができました。
しかし、あっという間に1時間が経過してしまい、大盛況の中、シンポジウムは幕を閉じました。

シンポジウム終了後には、先日行われた「アジア映画学生交流プログラム」に参加した香港とASEANの映画学生のみなさんと偶然お会いしました!
映画の世界を志すの皆さんにも大きな影響を与えたシンポジウムになったのではないかと思います。

最後に


シンポジウムを通して、小津作品を観れば常に新たな発見があり、一筋縄ではいかない魅力でいっぱいだと分かりました。これからももっと作品を観てみたいと思います!

小津安二郎監督生誕120年記念上映は11/1(水)まで開催中です!
ぜひ東京国際映画祭に足を運んで、この機会に小津作品を観てみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました。


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