【インタビュー】尚玄さんの全てが詰まった『義足のボクサー GENSAN PUNCH』①
みなさん、こんばんは🌙
東京国際映画祭 学生応援団です。
今回は、2回に渡って映画『義足のボクサー GENSAN PUNCH』についてのインタビューをお届けします!主演の尚玄さんに映画や尚玄さん自身についてお話を聞いてみました🎤
第1回目は『義足のボクサー GENSAN PUNCH』という作品の制作経緯やメンドーサ監督、役作りなどについて伺いました。ぜひ、お楽しみください!
『義足のボクサー GENSAN PUNCH』作品概要
8年温めた企画が、ついに劇場公開
ーー尚玄さんの中で長い間温め続けた企画だと思うのですが、映画祭での上映や、劇場で公開されたことへの、率直な気持ちをお聞かせください。(たくみ)
8年間かけた自分の夢が実現して、正直まだ現実味を帯びていないというか、あまり実感がないですね。不思議な感じです。本当は撮影が終わったあとにちょっと、ぽっかり虚無感があって、もうどうしていいか分からない時期もあったんです。
でもそのあと、釜山国際映画祭(21)と東京国際映画祭(21)で上映されて、釜山では賞(キム・ジソク賞)をもらえた。自分としても全く期待していなかった賞をいただいてすごく感動したし、今までの苦労も報われた気がしました。
ただやっぱり東京国際映画祭は、自分の家族とか友人が駆けつけてくれて、みんなで同じ時間を共有して一つのスクリーンを観るというあの体験は何とも言えないものでした。本当に感動したし、もう感情を抑えるのに必死でしたね。
ーー劇場で公開されてから、作品のモデルである土山さんと何か話はされましたか。(たくみ)
お互い改めて言葉を交わすのは、ちょっと照れくさいというか…(笑)
でも、沖縄で先行公開されたときの舞台挨拶で「自分はチャンピオンにはなれなかったけど、自分の半生がこうやって映画になって、そのことでお世話になった人たちに恩返しすることが少しでもできたら嬉しい」と言っていて、それを聞けて本当に嬉しかったですね。
作品によっては原作となった人たちを傷つけてしまうことがある。僕たちの映画もその可能性があったわけだから、本人がそう言ってくれたのは、僕にとってすごく意味のあることでした。
メンドーサ監督との出会いとフィリピンの印象
ーーメンドーサ監督が監督に決まるまでには、どのような経緯があったんですか。(たくみ)
エリック・クー監督(シンガポール生まれの監督。『家族のレシピ』(19)など。)にメンドーサ監督を紹介してもらって、2018年の釜山国際映画祭で初めて会いました。この時はプロデューサーに企画書を渡すくらいでした。そのあと2018年の東京国際映画祭で審査員長として来日したメンドーサ監督と再会しました。そこで色々な話をできたし、「またゆっくり企画の話をしよう」ってフィリピンのスタジオに呼んでもらえました。間髪入れずにすぐにフィリピンに飛んだら、彼の何百というトロフィーが並んでいるすごい部屋に招待してもらって、ディナーをご馳走してくれたんです。そこから少しずつ口説いていって、自分たちの本気度を伝えることができたみたいで、承諾してくれました。
ーーフィリピン、そして題名にある「GENSAN」=ジェネラル・サントスという町にはどのような印象がありますか。(たくみ)
フィリピンはすごく活気に溢れているし、フィリピンの人たちも本当に愛情深かったです。まあ時間にルーズなとこもあるけど、そこはちょっと沖縄に似ていたりね(笑)。
ジェンサンはマグロが有名なところで、ちょっと食事に飽きたらキニラウっていう魚のマリネみたいな料理を食べてました。それが、さっぱりしておいしいからそればっかり食べてました。
メンドーサ監督の人柄と演出
ーーメンドーサ監督はどのような人でしたか。(たくみ)
初めて会ったときは、巨匠だし、全然言葉を交わせなくて怖かったですね。でも、撮影を共にしてみて、メンドーサ監督は本当に温かい人だなと思いました。ストリートキッズたちに映画に出演してもらって、お金と食事を与えたり、フィルムメーカーになりたい若い子たちを教育したり、そういうことをずーっとやってきた人で本当に人格者。セットで感情的になることもないし、僕にとっては、メンターであり、父親みたいな本当に温かい存在です。
ーークランクインの半年前にメンドーサ監督の家に泊めてもらったそうですが、そのときはどのようなお話をされたんですか。(たくみ)
監督は、「信頼関係が一番大事。自分も君を信じるから、君も僕のこと信じて欲しい」と言っていました。そして、今までの自分の人生のこと、あまり人には共有していない自分の弱さだったり、コンプレックスだったり、そういうことをお互いに共有していきました。他にも日本とフィリピンの文化の違いについても色々と話したりとか、本当に毎日毎食一緒に食事をして、お互いのことを知る作業をしていきました。
そして、同時にコーチのルディを紹介してもらって、同じように時間を過ごしていきました。ナオとコーチの関係性というのがこの映画の核となる部分だったので。
日本の映画作りの現状では、こんなに役作りに時間を割いてくれる現場ってなかなか無いから、そういう意味で本当に恵まれた環境だったと思います。
徹底した役作りとリアリズム
ーー時間をかけた徹底した役作りが、メンドーサ監督の求める演技、演出と一致した印象を受けましたが、その点についてはどのように思いますか?(たくみ)
それはあると思います。僕自身がニューヨークとかLAでいわゆるリアリズムとよばれている、いろんなタイプのメソッドを勉強してきました。そして、架空の状況で真実に生きるっていう、リアリズムの根本みたいなものをやっぱりメンドーサ監督は求めていたと思います。
「カメラの前で何も特別なことはしなくていい、相手とただ感応するだけでいいから」っていう監督の教えはリアリズムの根本だったと思うし、そういう意味で言うと、僕としては、今まで積み上げてきたものがようやく花開いたというか、色んな意味で合致した現場だったかなと思います。
ーー感覚が合致したと思った瞬間、どんなことを感じましたか。(ともか)
その一瞬…相手を信じて相手と繋がる瞬間、特にルディ(コーチ役)との瞬間っていうのは、僕の中で本当に父と子のような感覚を味わえたかな。
メンドーサ監督の映画って台詞が極端に少なくて、行間の中で感情の受け渡しがある。ルディや南果歩さん(母親役)たちと、真実にそれができたことが俳優として幸せこの上ない。
注目してほしいところ
ーーここは特に注目して観て欲しいと思うところはありますか。(ともか)
僕自身は特になくて、観てくださった方が観たそのままのものを感じてくれたらと思います。でもとにかく劇場で観て欲しいですね。今回の映画って、台詞が少ない分、ちょっとした表情の変化や、目に宿る部分で繊細な心の機微や、感情の機微を描いていると思うから、やっぱりビッグスクリーンでこそ伝わるものがあると思うので、そういう意味でも劇場で観てもらいたいです!
ボクシングを題材にしてるけど、僕はこの映画を師弟愛だったり、家族愛だったり、そういう普遍的なことを描いているヒューマンドラマだと思っているし、老若男女楽しんでもらえる作品だと思うから、本当にいろんな人に見てもらいたいです!
ーーー第2回に続くーーー
いかがだったでしょうか?
話を伺っていて、この作品に込めた尚玄さんの熱い思いがものすごく伝わってきました。一つの作品にこれほどまでの熱量で挑んだ尚玄さんの俳優としての覚悟に脱帽しました。
第2回目の記事では、尚玄さん自身について深堀りします。お楽しみに!そして、ぜひ劇場へ足をお運びください🏃
〇【劇場情報】
・TOHOシネマズ日比谷 6/3~先行上映中
・6/10よりヒューマントラストシネマ渋谷、kino cinéma立川髙島屋S.C.館
他全国で公開
〇プロフィール
(撮影・ともか 取材/執筆・ともか、たくみ)
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