見出し画像

浅いプロデュースを10年続けていた私が、今さら筆を執った訳(中編)

 前編で5000字綴っても、SHHisどころかシャニマスにすら触れられていない。しかし、そこに至るまでの下地部分は説明できたはずだ。
 長文駄文で面目ないが、今回もお付き合いいただければ幸いだ。

 ただ、前提として先に述べたい。
 この中編ではアイマスのコンテンツとしてシャニマスを上げ、他を下げていると受け取れるような表現になってしまう部分があるかもしれない。しかし決して、他シリーズを腐す意図はない。依然として未央や志保は私の担当アイドルであり続ける。しかしながら、私個人にとって一番満足できるものを提供してくれる場がシャニマスだったという話である。
(シャニマスを追っていると、どうしても排他的になり意識高い系プロデューサーに陥りやすい、そんな魔力を秘めているように私は感じる。だからそうならぬよう、ここで文章化することで自己を戒めておく)

そして私は、シャニマスに出会った

 デレステ、ミリシタ同様、シャニマスも事前登録からプレイした。ちょうど音ゲーに辟易しかけていた時期だったし、全員が新アイドルという環境が魅力的に見えないはずがなかった。そして、ユニットが予め固められている(SideMタイプ)ということで、そこで紡がれる人間関係も濃密であるかもしれない。

 そんな期待を胸に、私はシャニマスに触れた。

画像1

 さて、現在のシャニマスとイメージの乖離があるかもしれないが、ここからはシャニマスリリース当初の話なのでその前提で聞いて欲しい。ストレイライトもノクチルもいないし、感謝祭もG.R.A.D.もない。イベントコミュだって1つもない。

 いざリリースされて触ってみると、ゲーム部分は私にとっては新鮮でそこそこに楽しめた。3Dライブが無いという点も、イラストが綺麗でガチャ演出が豪華なので気にならなかった。とは言ってもリリース当時のpSSRはイルミネの3人のみなので、今後に期待という感じではあったのだが。

 肝心の物語は、というと。
 W.I.N.G.は久々に見る、アイドル対Pの1対1の物語。アイドルと出会い、レッスンを重ね、壁を乗り越え、目標を達成するという一連のドラマが美しい。ゲームシステムと相まってアイマスの原点回帰と呼べる代物であった。
(私はCS未プレイであったが、実況動画などでゲームの大枠は知っていた)

 しかし、当時はまだそこ止まりであった。
 先ず、現在と違ってTrue到達なんか夢の世界だ。当然、True研修なんてものもない。つまりTrueコミュが読めない。サポートカードの性能が現在と比べ物にならないのは言うまでもないが、そもそもプロデュースアイテムというものも当時はなかった。選択肢で上がるステータスは攻略サイトと睨めっこしなければならないし、流行雑誌もないので最終盤で完全な運ゲーを強いられる。シャニマスのリリースが4月に対して、私が初めてTrueを達成できたのは半年後の10月であった。

 そして昨今で語り草になっているようなカードコミュで、リリース時から実装されていたものはほぼ無い。
(樹里の放クラへの口調が強かったり、千雪が大崎姉妹に不自然な敬語を使っていたりと、今見てニヤリとなるようなコミュは多い)

 リリース直後に始まったイベント【Light up the illumination】(18/04/26~)では、信号機トリオ(イルミネ)の結成時の空気感を生々しく描写していた。このコミュが真の意味で生きてくるのはまだしばらく先の話なのだが、そんなことは誰も知らない。人間関係を丁寧に描く気概は見て取れたのだが、なんにせよコンテンツ不足であった。


プレイ経過と私の失態

 しばらくは浅くシャニマスをプレイしていた。
 第一印象で決めた小宮果穂をメインでプロデュースしており、放クラでグレフェスに挑んでいた。リリース半年後あたりで徐々にTrue達成ができるようになっていたのだが、どちらかというとゲーム部分のグレフェスにハマっており、リリース年の11月にはグレ7にも到達した。

【五色爆発!合宿 クライマックス!】(18/05/31~)
エンディング ー クライマックスは終わらない!

画像9

 このコミュは当時から見ても格別に輝いていた。(放クラ贔屓による色眼鏡込み)
 他のユニットの初回イベコミュは、結成初期特有のすれ違いを優しい方法で解決するという内容だった中、放クラだけはなんかもう最初からクライマックスだったのである。
 ちなみに放クラ以外の3ユニットコミュも、後々時間を積み重ねることで生きてくる。本来の私にとって大好物の構成だったのだが、あまりにも次までのスパンが長かったため当時は認識できなかった。

 スマホゲーのコミュでは『時間経過による成長』は描かれないであろうという偏見もあったため、徐々にコミュをさえスキップするようになってしまっていた。


 今だから気付けるが、シャニマスはユニットイベ2週目の【Catch the shiny tail】(19/01/31~)辺りから『時間経過による成長』を描き始めていた。しかし当時はもうコミュまで食指が動かず、SNSなどでの情報収集もしていなかったため、それに気づけぬまま緩やかにログイン勢の一人へとなっていった。
 長い時間をかけなければ『時間経過による成長』など描けるはずもない。そんなこと当然なのだが、前提としてスマホゲーを信頼していなかったというのと、半年もあればアニメなら物語を描き切れるため、その尺度で比較してしまい早々に見切りをつけてしまったのだ。今となっては懺悔の念で押しつぶされそうになるが、こうして文字に起こすことで禊としたい。


シャニマスの「時間経過による成長」

 ここから先は、シャニマスの魅力に気づき過去コミュも読み返した現在の私の視点で綴っていく。
(ただしまだまだ未読コミュの方が多いので網羅できていない箇所もある、中途半端な視点なので悪しからず)

 前編で私はこう書いた。

過去のコミュの話題を別のコミュで引用されると、いわゆる「必読コミュ」が重なっていき新参に不親切なつくりになってしまう。

 さて、私がシャニマスでこの気配を感じた最古のコミュは、【オペレーション・サンタ!~包囲せよ283プロ~】(18/12/14~)である。これはリリース8カ月目にして初の本格越境コミュということで注目されたが、2018年の総集編的な側面もあった。

 智代子が凛世のおかげで怖いものを克服した話、夏葉が料理にプロテインを混ぜたことがある話、アンティーカが闇鍋を経験しているという話などなど。これらは過去のあちらこちらのコミュから引っ張ってきたエピソードである。
 しかしながらこれらの引用は雑談の一部として消化され、知っていればニヤリとできるが知らずとも流せる程度のものだ。必読コミュとまではいかない、造詣の深いファンに対するご褒美として良い塩梅である。ただ、283プロダクションの中で確かに時間が流れていることは、しっかりと明示されたのだ。

 ここまでであれば、他のスマホゲーでもまだ普通に在り得るレベルの引用であった。しかし2019年初頭から、イルミネーションスターズ周りを皮切りに『時間経過による成長』表現は濃くなっていく。

【Catch the shiny tail】(19/01/31~)
第5話 ー 私の場所

画像4

 ここは真乃が非常に切迫している場面であり、その感情が何に起因するのか述べている。それは「知らない」として流せるものではないが、しかしこれらのエピソードは当イベントコミュの外部にあるのだ。


【オペレーション・サンタ!~包囲せよ283プロ~】(18/12/14~)
エンディング ー サンタさんつかまえた

画像3

 クリスマスの日、283プロ初の合同ライブが決まってアイドル全員で乾杯するシーンである。信号機の赤である真乃が真ん中に立つことで、疑問を抱くPなどいない。そんな他愛のないシーンだったのだが、これは仕組まれた伏線だったのだ。


【1stLIVE メモリアルコミュ】(19/03/10)
DAY2 ー 真乃と果穂

画像4

 リアル側の時系列が合わないので【Catch the shiny tail】の「真ん中に立って歌ったり」の引用元がこのエピソードなのかは自信がない。しかし【オペレーション・サンタ!】内で言及している合同ライブは、この1stLIVEを指していると思われる。あるいは、【Catch the shiny tail】を経ることで1stLIVEの真ん中を完遂できたのかもしれない。(私はこのライブを見ていないため、現地で何か確信できる要素があったとしても拾えない点はかたじけない)

 もしそうであればシャニマス運営はやってることエグい。この話はリアルライブと連動しており、そのフレーバー程度のコミュの筈なのに、その設定と本編でキャッチボールしているのだ。
 よくシャニマス運営はP(プレイヤー)のことを信頼しすぎている、と言われているがまさにそうである。私たちが過去に散らばったコミュを読了している前提の物語展開をしているのだ。

 さらにこの【Catch the shiny tail】内ではイルミネの最初のユニット曲『ヒカリのdestination』の歌詞が引用される部分が印象的である。Pなら気づいて当たり前、きっと運営はそんな風に我々を信頼している。

ヒカリのdestination そのしっぽを捕まえたい
(出展:楽曲『ヒカリのdestination』)

 あぁ、Catch the shiny tail ってーー


 こうしてイルミネの物語は【Star n dew by me】(19/10/31~)へと繋がっていくのだが、これは前述のコミュ群に加えて、pSR【チエルアルコは流星の】八宮めぐる(19/04/19)が強烈に関連づいていることはあまりにも有名だ。

真乃に関しては、6位にランクインしている“Catch the shiny tail”で一皮むけたところを描けたと考えていますが、3人の関係が進んで、めぐるも【チエルアルコは流星の】などで新たにパーソナルな一面を描いて、そこでイルミネがもう1歩前に進むためのシナリオが“Star n dew by me”だったかなと思います。
(出展:【シャニマス2周年記念】制作P・高山祐介さんがこの1年を振り返る)

 もう疑う余地は無い。シャニマスは新規に不親切なつくりになってしまうことを恐れずに『時間経過による成長』をしっかりと書くコンテンツなのだ。この後も挙げればきりがないほどに、前のエピソードが次に生かされた物語が紡がれ、アイドルの成長が描かれていく。それは私の当初の期待を遥かに超えるものだった。
(シャニマス運営も新規が参入しづらい現状を理解しており、頻繁に過去イベのコミュを開放している。また必読コミュという考え自体も間口を狭めかねないため、運営は忌避している。かくいう私も【Catch the shiny tail】後に【オペレーション・サンタ!】を読んで十分に楽しめた。あまりコミュ消化の順番に固執しすぎないほうが、コンテンツに参入し易いのは事実である)

カードに付随するシナリオは、そのカードを引いたタイミングで楽しんでもらうことになりますので、あまり正確に時系列を決めてしまうと、非常に煩雑なものになってしまいます。プロデューサーさんそれぞれに読む順番や時期が違うので、ある程度はどのタイミングで読んでも楽しめる内容になるよう意識しています。
(出展:【シャニマス3周年記念】制作P・高山祐介さんが1年を振り返る。)


シャニマスの「プロデューサーの人格」

 シャニマスで描かれる主人公、すなわちプロデューサーは明確に人格が形成されている。シャニPという一人のキャラクターが、283プロダクションという舞台にいるのだ。身長180cm以上の男性であり、コーヒーが好きで「ははっ」と笑う。そして天井社長の旧友ではづきの父親だった男(故人)の面影がある、というとんでもない設定が【明るい部屋】(20/12/11~)で判明する。

 また、彼はしっかりとしたプロデュース方針を持っている。
 本人が一番やりたいことは何か、を常にアイドルに問いかけている。そしてそれを尊重し、実現のために努力を惜しまない。
 そしてアイドルの考え方や行動を修正したい、と感じたときは「すまん」と前置きを入れつつも衝突を恐れず指摘する。それがアイドルの成長を促す結果となり、「プロデュース」の物語が紡がれるのだ。


pSSR【空と青とアイツ】芹沢あさひ(20/04/01)
(基地、なんだろうなぁ)

画像5

 事務所の倉庫で秘密基地を作るあさひに、周りの人の迷惑になるということを告げる。このコミュでは、シャニPがあさひから見えている世界を理解したうえで、そんな大事なあさひの世界だから自分や他の誰かが壊さなければならなくなる前に、あさひの手で壊してほしいと伝える。

画像6


【海へ出るつもりじゃなかったし】(21/01/01~)
第5話 ー ココア・説教・ミジンコ

画像7

 事務所でMTGの予定がある日に、透と円香の補講が長引いてしまう。しかし2人はその連絡もせずに、コンビニに寄ったりしながら事務所を訪れる。そんな彼女らに「少し小言を言わせてほしい」と言うシーンだ。そうしてノクチルの反骨精神を刺激したうえで、優勝を条件に騎馬戦の仕事の話を受けるかどうかを問うのだ。

画像8


 また反面で、シャニP自身が持つプロデュース方針と合わない案件には、強く反発する姿勢も見せる。【薄桃色にこんがらがって】(20/02/29~)や【ストーリー・ストーリー】(20/04/30~)では、企画制作側もP同様にアイドルを売り出そうという姿勢を見せてくれているにも関わらず、正義の在りかが食い違いプロデューサーももがき苦しむ。
 イルミネの感謝祭シナリオではユニットの3人が番組ディレクターに「アイドルは可愛いことがすべてだからもう頑張ったらダメ。ちょっとできないところもある、今ぐらいがちょうどいい」と言われてしまう。このDの言っていることも間違ってはいない。しかしそれはイルミネの想いを汲めておらず、すなわちシャニPが持つプロデュース方針に合わない。ならばシャニPは是正のために動くのだ。

 そんな熱血漢も、【サマー・ミーツ・ワンダーランド】(19/07/31~)ではアイドルが見ていない(と思っている)ところで何度も飛び込みを楽しんだり、pSSR【ギンコ・ビローバ】樋口円香(20/10/21)ではアイドルが見ていない(と思っている)ところで歌いながら料理をしている。そんな茶目っ気と適度な隙のある面も見せてくる。
 そして、pSR【小さな夜のトロイメライ】八宮めぐる(18/12/21)や先ほども紹介した【空と青とアイツ】では、アイドルとのやり取りを通してプロデューサーの内面を覗き見ることができる。同窓会から帰宅するシャニPが学生時代を回顧したり、子供の頃に感じた修学旅行特有の高揚感に思いを馳せるのだ。

 そうやって、シャニPの仕事に誠実な部分と、人間味溢れるの部分の両方が描写されることによって、彼がいかに魅力的かつ等身大な人間であり、アイドルからの信頼を得るに足る男であることの裏付けがなされている。


シャニマスの物語とP(わたし)

私が熱望するアイマスの「物語」には、おそらく次の2つが必要なのだ。それは『時間経過による成長』と『プロデューサーの人格』である。

 これは前編で私が言ったことだ。そしてシャニマスというコンテンツは、長い時間をかけて丁寧にこの2つを描いていた。それに気付いた私は、シャニマスの世界に強く引き込まれていった。

 しかし、それと同時に喉につかえていたものがあった。私の担当アイドルは誰なのだろうか。私は元来のアイマスと同じように、『プロデューサー』のロールプレイを楽しんでいるのだろうか。

 私は上でこう述べた。第一印象で決めた小宮果穂をメインでプロデュースしており、放クラでグレフェスに挑んでいた、と。しかし小宮果穂が担当アイドルだとも思っていないし、放クラPと名乗るのも抵抗がある。なぜなら283プロはシャニPという男の物語であり、私はそれを観測するだけのプレイヤーという感覚が強かったからだ。
 アニメや漫画がお気に入りのアイマスコンテンツだった自分にとって、この感覚は別に不愉快なものではない。ただ、765や346にはミリシタやデレステといったPになれる場所があったのだが、私にとっての283にはそれが無かった。

 私はシャニPが好きだ。(このタイミングで自称するのも可笑しな話だが私は男性である)シャニPのアイドルと向き合う姿勢が好きだし、彼のプロデュース時の言葉には私の中からは生まれえないような答えが用意されていて、いつも唸らされる。彼を尊敬している。人格描写が強い分、私の考えと食い違うこともあるが、シャニPの喜怒哀楽にはちゃんと感情移入できる。そういった意味では数多のアドベンチャーゲーム同様に、ロールプレイできているのかもしれない。

 ただやはり、いやだからこそ、担当アイドルを決めるには至らなかった

 何故ならシャニPは283プロ唯一のプロデューサーであり、彼は所属アイドルの全員を等しく大切に思っている。彼に寄り添うことがシャニマスにおけるロールプレイなら、担当アイドルなど選ぶべくもない。誤解を恐れずに表現すれば、それはまるでラブコメのハーレムエンドのような逃げの選択だ。不誠実と思われてしまうかもしれないが、幸い私にとってその状態は心地がよかった。


--------------------

 この投稿で終わらせるつもりが、終ぞSHHisにはたどり着けなかった。
 ただ、文章にすると頭の中が整理される。これは素晴らしいことだ。

 私が自分のプロデュースと向き合うための駄文、ここまで付き合って下さっている方は、ぜひ次回の結論まで見届けてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?