教育デザインと授業デザイン
教育、特に学校教育について語るときに「教育=学力を付ける」という意識を持っている方が多いので混合されがちですが、教育デザインとは授業デザインのことではありません。
教育デザインとは
どのタイミングでどのような学び、体験を与えるべきか。今は与えるべき時か、見守るべきか、支えるべきか、深めるべきか。ということを生徒の状況、発達段階、思考、目標などを細かく観察・把握しながらサポートしていくことです。従って、「授業」はこのためのリソースの1つに過ぎません。
また教育デザインには、学期や学年といった短期、中学あるいは高校3年間という中期、卒業後の人生を考える長期などいくつかのスパンがあります。
授業デザインとは
一般的に1回の授業の流れをどのようにするか、という意味合いで使われます。指導案に書くような「めあて、目的」が掲げられ、その力をつけるためにどのような内容をどのような活動で学んでいくのかという授業の流れを考えるものです。
これを踏まえた上で、この稿では
「教育デザイン全体の流れと1回の授業デザインの流れは基本的に同じものである」
という考えについて書いていきたいと思います。主な話は以下の2点です
教育の基本の流れ
①「問いかけ、課題、体験から発想・自問自答」:学びの起点・発散
教育は、問いかけ、課題、体験から始まります。ここで最も大切なことは生徒の頭やこころを揺さぶり、動かすことです。教師としては最も丁寧に考え、作り込んでいくべきところとなります。生徒が自由に発想しているときが理想的な状況なので、動き始めたら、いかに上手に教師が離れていくか、というタイミングも力量が問われるところとなります。
②「確認・納得・習得」:学びの収束・習得
教師のサポートにより、生徒が「何を学んだのか」「その学びが自分にとってどのような意味を持つのか」「どんなことをできるようになったのか」を考えることが次の段階となります。授業ではその時間の「めあて、目的」をきちんと達成できたかどうかを確認する時間であり、教育全体では1つのマイルストーンとして捉えるべきでしょう。
この段階を通り、揺さぶり動かされた頭やこころが一旦落ち着くことによって、はじめて学びとなっていきます。
③「新たな視点・曖昧さの指摘・さらなる視野」:学びの拡張
最終段階で求められるのは、一旦落ち着いた頭とこころを、今度は自律的に動きやすくして終えることです。そのため新たな視点を提供したり、あえて曖昧さを指摘して終わるなど、生徒の心にモヤモヤを残すことも有効な手段です。これは、生徒がこれまでに学んだことを基に、新しい問いを立て、さらなる知識や技能を追求していくことをサポートしてくれます。
モヤモヤは学びのループへの橋渡し
授業単体のデザイン、と考えたとき、終了後の生徒の理解・納得が重要であることもあります。しかし、教育の本当の目的は「自走」。学びや成長のサイクルを身に付けてもらい、教師がいなくても成長を続けることが大切です。
生徒の心に残る「モヤモヤ」は、次なる学びのループへの架け橋となることができます。このモヤモヤを、そうしたきっかけとするのも、また教師の腕かもしれません。
以上の①〜③の流れを教育の基本として