見出し画像

静森あこに心臓をつねられた。【創作大賞感想】

わたしはこれを無料で読ませていただいて良いのですか?


胸の谷間の奥らへん、が、ぎゅっとなった。痛い。
きゅん、なんて生やさしいものではない。
心臓をつかまれた? 違う。そう、これはつねられている。
指の跡がつき、しばらくは消えそうにない。

どちらの掌編も、もう戻らないもの、手に入らないものへの思慕が綴られている。
文学の主題としては特に目新しいものというわけではない。
ただ、そのこちらに迫ってくる感じが、ちょっと類を見ない感じで凄まじい。
描かれているのは執着であり、ある意味では女の業のようなものかもしれない。
風の時代、と呼ばれる現在において良しとされている軽やかさとは一切無縁。
欲望という言葉で片付けるには、あまりにおどろおどろしい衝動、情動、情念、狂気が描かれ、いつしか物語の世界にずぶずぶと沈んで身動きが取れなくなる。


書き出しからして風格が漂う。
何それ、どういう状況? どんな心境なわけ?
その疑問を抱いたら最後、もう心臓は8割がた静森あこの手中に陥ちたも同然。逃げられない。

自分の名前を呼ばれた気がして顔を上げたのは、今夜知り合ったばかりの名前も知らない男にラブホで後ろから突き上げられている時だった。

名前を呼ばれた気がして より

夏の眼球を舐めたくなって生唾を飲んだ。

太陽は嗤う より

溜め息。あるいは、息を飲んだ人もいるかもしれない。
この瞬間、わたしは彼女の世界に取り込まれ、じわじわと心臓に指を突きつけられ、やがて2本の指でつねられるに至った。
あなたにも体感してほしい。
静森あこさんの力強い指先。つまんだら離さない、その絶対的な引力。

その指先はきっと、赤く彩られている。そんな気がする。


あこさん、わたしはあなたに出会えてよかったです。
このようなものを書ける人と、この広大な大海原でピンポイントで繋がれたこと、ほんとに奇跡だと思っています。感謝しています。
悩むこと、揺れてしまうこと、たくさんありますよね。
わたしも同じです。
お互い書きたいことやもの、表現したいフィールドは違うかもしれない。
でも、あこさんとなら、「分かるー!」って言い合いながら、ひとつひとつぶっ潰していける気がしています。
ファーストコンタクトからまだ日は浅いけれど、大好きです。出会ってくれてありがとう。

いつか、あこさんの著作の掲載誌か単行本かわからないけれど、それを持って、「サインください🩷」って会いに行く。
夢がひとつ増えました。





#創作大賞感想
#静森あこさん