見出し画像

コロナ禍でも日本人の寿命は延びている

新型コロナウイルス感染症の大流行によって、世界各国の平均寿命が第二次世界大戦以来、最も大幅に短くなったと発表された。これはイギリスのオックスフォード大学の研究結果だ。
具体的には、イタリア国家統計局の発表によると、2020年のイタリア人の平均寿命は前年より1.2歳短くなり、82歳になっている。他のEU各国も同様で、特にスペインでの平均寿命の下がり幅が最も大きく、2019年には84歳だった寿命が、1.6年縮み82.4歳となっている。ちなみにアメリカ人の平均寿命は、米国疾病予防管理センター(CDC)の発表によると前年比1.5歳短縮の77.3歳である。性別でみると、女性は前年から1.2歳短くなり80.2歳、男性は1.8歳短くなって74.5歳だ。

ところが、厚生労働省の発表によると、新型コロナ感染症が蔓延した2020年の日本人の平均寿命は、過去最高を更新して女性は世界1位の87.74歳、男性は2位の81.64歳に延びているのだ。しかも、2020年度の医療費総額は新型コロナ感染症の影響下にもかかわらず前年度から1兆4000億円(3.2%)もの減少をしたと、厚生労働省は発表している。これはどうしてだろうか。

この大幅な医療費現象の理由としては、次のように考えられている。
・コロナウイルスへの感染を恐れて、軽症患者が医療機関への受診を控えた。
・他者との接触を避けマスクを付けることで、インフルエンザなどの感染症が激減した。
・コロナ重症患者へ医療資源を集約化・重点化するために、予定入院・予定手術を延期した。
・コロナ患者対応に医療資源を集約化・重点化するために病棟・病床を一部閉鎖した。

これらの様々な要因で患者が減少して、医療費が大きく減少したようなのだ。ようするに、従来は不要不急の軽症患者が大勢医療機関に押し寄せていたから、膨大な医療費を費やしていたのだ。しかも高齢者の死亡原因の多くを占めるがんや心臓病などの手術を多少見送っても、余命はさほど変わらない。2020年のコロナによる死亡は高齢者が大半だったこともあって、日本人の平均寿命は欧米のように短くならなかったようなのだ。
つまり高齢者に対する過剰な検査や手術など、不要不急の医療を中止することで、平均寿命を下げずに医療費を削減できることが、図らずも明らかになったのであった。

その他のエッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?