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越境と共創で新産業を作る。ステークホルダーを巻き込み、新産業のエコシステムを切り拓く 【支援事業者インタビュー #9 SUNDRED株式会社】

TIB STUDIO事務局がお届けする支援事業者インタビューシリーズの第9弾。
TIB STUDIOに参画する16社のスタートアップスタジオ事業者を紹介します。各社が持つ独自の強みを紐解きつつ、メンターの方の考え方やバックグランドについてもお伺いしていきます!
第9弾は、SUNDRED株式会社の上村さんにお話を伺いました!

上村 遥子 氏
SUNDRED株式会社 EVP, CIEO(Chief Interpreneur Engagement Officer) 兼 Chief Evangelist
国内最大級のものづくり支援スペースDMM.make AKIBAのコミュニティマネージャーを経て、公的機関・民間でのスタートアップ支援歴7年以上。共創の場づくり、コミュニティ、テクノロジーなどをキーワードに200以上の企画設計や登壇を実施。世の中に多くの挑戦者を増やすことを人生ミッションに、越境視点を持つためパラレルキャリアを歩む。異なるコミュニティに橋をかけることが好き。JAXA出資ベンチャー天地人では衛星データビジネスの事業開発を行なう。SUNDREDでは、社会起点の越境人材=インタープレナーのコミュニティ形成、産官学民や世代間の対話を促進。サイエンスアゴラ推進委員。2022年に長野市に移住。

ーはじめに、上村さんのご経歴やバックグラウンドを教えてください。

上村:越境型共創人材である「インタープレナー」のコミュニティをリードする立場として、SUNDRED株式会社(以下、SUNDRED)で役員をしています。

その前は、2016年からDMM.make AKIBAでコミュニティマネージャーとしてテクノロジー関連のスタートアップ支援をしていて、いろいろな業界の人たちとスタートアップとのマッチングなど、オープンイノベーションの促進に携わっていました。

そうしてコミュニティマネージャーとしての仕事をしてきた中で、だんだんあることに気が付いてきたんです。それが、一つのスタートアップだけを支援していてもスケールしていかない、ということでした。つまり、スタートアップのエコシステムに関わる人たち全体の底上げが必要だと。

その気づきをもとに、自分の人生のミッションを「世の中にインタープレナー(挑戦者)を増やし、彼らの思いをつなぎ、社会を良くする共創活動を加速させる」と決め、働き方を変えることにしました。

インタープレナーたちが、自分が良いと思う社会を共有し合い、通じていくことによって共創が生まれ、エコシステム全体が活性化していく。そして私自身も越境人材として様々な業界や組織にまたがり、それぞれのシナジーを生み出しながらパフォーマンスする。

そんな働き方を実現するため、2020年からはパラレルキャリアを選択し、DMMを出てSUNDREDと宇宙ベンチャーの株式会社天地人に所属しながらスタートアップ支援を続けています。

ーSUNDREDさんはどのような支援事業をされているのですか?

上村:SUNDREDがスタートアップ支援を通じてやりたいのは、新産業を作ることです。その中で、インタープレナーたちを応援する役割をSUNDREDが担っています。

もう少し詳しく説明すると、インタープレナーとは「社会起点で越境し価値共創をする人」のことです。アントレプレナーやイントレプレナーは起業しなければなれませんが、インタープレナーは、誰かとコラボレーション(越境)して社会を良くしたいと思う人は誰でもなれるんです。だから、会社員でもお医者さんでも、主婦でも学生でもいいんですよ。

私たちが実現したいのは、そういうマインドセットを持った人たちが集い、ある社会課題に対して共感して同じビジョンに向かい、それによって新しいコラボレーションが生まれ、そして新しい産業が生まれていくこと。

ただ、新産業を作っていくのはSUNDREDではなく、インタープレナーたちです。だから、私たちはインタープレナーを増やし、つなげる取り組みをしています。

ー新産業はどのようにして作られているのでしょうか。

上村:多摩大学大学院の紺野 登教授と共同開発した新産業共創プロセスを実践しています。2段階に分かれたプロセスで、フェーズ1ではオープンな対話を通じた仮説の共創、フェーズ2では、その仮説を実現するために実際にプロジェクトを推進していきます。

プロセスを分けているのは、「産業」はある一つの新規事業の成功によってではなく、いろいろな新規事業やスタートアップや大企業が連なっていかないと生まれないからです。自分だけが伸びればその社会課題が全て解決されることはほとんどなくて、ステークホルダーがいなければ解決できない事が必ずあります。

そこでインタープレナー的な考え方がすごく大切になるんです。自分自身が社会にどんな良いことをしたいかを開放し、フラットに対話をするところから始めて、共感をもとに初期チームを組成してエコシステム作りをしていくんですね。

そうすると、そこに連なってくるであろうステークホルダーも見えてくるので、フェーズ1を終えた時点で新しい産業のエコシステムの仮設がたてられている状態になります。そこからプロジェクトが動き始め、新産業のトリガーとなるような事業へと形作られていくんです。

ーSUNDREDさんの支援の特徴を教えてください。

上村:いかに業界や所属にとらわれず、枠を超えてより良い未来を作れるか。そういったインタープレナー的な思考を持つ人たちをすごく大切に育てています。

そして、新産業のエコシステム作りに巻き込み、インタープレナーとしての視野を広げて、いろいろな業界を巻き込んで越境していけるような支援をしています。

だから、あるスタートアップ1社だけの売上を上げるようなメンタリングは方向性として考えていなくて。逆に言えば、SUNDREDのメンタリングは、より大きなビジョンやパートナーシップを考えた上でのソリューション提供ができるのが強みです。

採択したスタートアップが、新産業として広がるような会社や、産業を大きくスケールさせるためのトリガー事業となれるよう、全力で支援します。

ーこれまでに支援をしたスタートアップやトリガー事業の例を教えてください。

上村:例えば、魚の養殖業の成長をサポートするプラットフォームを展開している株式会社さかなファームです。事業を作るにあたり「以前から行なわれてきた陸上養殖をなぜ産業化するのか」という目的の共創から始めました。

世界全体で見ると人口が増えている今、このまま魚を大量に獲り続けられるのか。水産資源を守りながら、これからも私たちが食べたい時に食べたいだけ魚を食べられるよう、畜産のように自分たちで魚を育てていくのも一つのやり方ではないか。また、陸上養殖で作った魚はアレルギーにもなりにくいというメリットもある。だから、陸上養殖を産業化し、エコシステムを作ろう。

このように社会課題の共有と対話、共感を通じて初期チームが組成され、プロジェクトが始まりました。

次に、産業のサプライチェーンを想定しながら必要なアクションを考え、実行していきました。まずは陸上養殖をする会社を増やさなければならないから、餌や工場のテクノロジーのコストを下げるため、養殖事業者や大学と連携しよう。

また、陸上養殖と天然の魚だったら今は圧倒的に後者の方が消費者に選ばれやすい。それでは流通させられないしコストも下げられないから、人気のレストランで陸上養殖の魚を使ってもらうことで、消費者に実際に美味しさを知ってもらって意識を変えていこう。

これは一つの例ですが、産業のエコシステムを作るため、こうしていろいろなステークホルダーと一緒に考えながら取り組んでいます。

ーそうした支援の中で、SUNDREDさんの具体的なアクションはどのようなものなのでしょうか。

上村:まず、アイデアや越境を加速させる思考プログラム「Future Board」です。私たちがファシリテーションをしながら、かけ合わせたら面白そうな技術や活動、産業の事例や、くつがえしたい常識などをみんなで語ってmiroにふせんを張りながら共有・発展させていきます。

もう一つが、「Living Lab」です。栃木県那須地域や秋田、淡路などをフィールドに、リアルのイノベーション構想・実証・実装できる場となっています。SUNDREDが事務局を担っているので、こうした場とおつなぎすることも可能です。

ーTIB STUDIOを通じて、どんな人と出会いたいですか?

上村:新産業を作ることを最初から考えているような視座の高い方はもちろんですが、今はそうでなくても、こういうやり方があることを理解してSUNDREDを使ってくれる方に出会いたいです。そして、インタープレナーの力を使い、エンパワーメントされながら活動していってほしいですね。

スタートアップが掲げるミッションやビジョンって、新産業を作らなければいけないレベルであることも少なくないんですよ。その軸となるものにフォーカスしたものがご自身の事業になると思いますが、その先にあるビジョンやミッションを実際に達成するために、同時並行でいろいろな関係性を巻き込んでいく、そんな視点を持っていただければと思います。

自らトリガーになり、いろんなステークホルダーを巻き込み、大きなテーマに向かって成長する。そこで、一緒に動く応援団のような存在になれれば嬉しいですね。

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▶︎TIB STUDIOについて:https://tib.metro.tokyo.lg.jp/studio/

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