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manimanium
夢を見て泣いた
ひさしぶりだった
わたしはダブルベッドに
ひとり横たわり
天井を眺めていた
なんのへんてつもない
マンションの天井を
せめて天井が下がってきて
押し潰してくれたのなら良かった
それならばただの悪夢だ
でもそうじゃなくて
わたしは
ダブルベッドに
ひとり横たわり
天井を眺めている
ただそれだけなのだ
頭の方を窓際に向けたベッド位置は
確かふたりで決めたのだった
出窓に花を飾っていた
それは彼がお土産に買ってきたラベンダーだった
わたしが水をあげるので
ラベンダーだけは枯れずに
ずっと
窓の外は廊下になっており
コツコツと誰かが歩く音が響き
近くを流れる川の音も
微かに聞こえた
わたしは起き上がれない
どうしても起き上がれない
目に見えない何か
目に見えない
なんだろう
一体なんなのだろう
この胸の上に乗って
そう大きくもないわたしの体を
押さえつけるなにか
なにか
ほんとに追い詰められたときは
涙なんて出ない
泣くことなんてできない
目を開いていても
なにも見えない
ただ
天井が
天井が
目を覚まし
あたりを見回し
ああ、違う、違う、違う、と
安心し
そしてやっと
わたしは泣いた
安心して
泣くことができるのは
とても幸せなことだ
とても
初出 現代詩フォーラム 20040430
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