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祭りのあと

こどもを
正面から抱っこすると
つい四年ほど前は
お腹の中にいたことが
信じられないほど大きい

わたしたちひとつだったはずなのに
分裂したね
さびしいけど
もう元には戻れないんだ

もちろんそれは悪くない
いつかみんないなくなり
ひとりになる
わたしだっていなくなる
なに
大したことじゃない
どんなに大きなビルだって
買ったばかりの新築マンションだって
山や海だって
いつか
なくなるよ
そんなに遠い未来でもない
この世は時間という船に乗っている
ただの概念

周りの風景は次々変わっていく
通り過ぎて
通り過ぎて
ねえどんなことも
ほんとは
大したことない
ヒトは死ぬまで生きる
モノは無くなるまである
それだけ

何かを守ろうとする
守られようとする
どちらも
濁ってる

出産は大きな喪失
だからこそ出産は
お祭り

わたしはひとりだ
わたしが死んだら
わたしはおしまい
ということは変わらないのに

ずっしりとしたこどもを抱く
この感触は
臨月だったお腹を
抱きしめたときと似ていると
わたしはいつまで思うだろう




初出 現代詩フォーラム 20040809     20240319  修正


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