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黒頭巾ちゃんにかかってくる電話

 ある日、黒頭巾ちゃんがお掃除を終え、きれいなお部屋でひとりぽつんと座って泣いていたら、携帯電話が鳴りました。
 非通知でした。
 黒頭巾ちゃんは泣くのをやめ、しばらく見ていましたが取りました。 
「はい、もしもし」
「俺だよ。黒頭巾ちゃん、また泣いていたね」
「どうしてわかったの。頭がおかしい変態男のくせに」
「自分だって喜んでいたくせに、ずいぶんなことを言うんだな。ま、いいけどさ。俺には黒頭巾ちゃんのことはなんでもわかるんだよ」
「あなたは誰なの。……全く覚えてないし誰だかわからない」
「大丈夫だよ。俺は君の神様だよ。怖がらなくていい。ちゃんと思い出して」
 黒頭巾ちゃんは息を止めて、しばらくじっと携帯に耳を押し付けていました。
 黒い神様の声は、こんな声だっただろうか。
 黒頭巾ちゃんは、どうしても思い出せませんでした。
 でも、違う、と思いました。
「思い出した? じゃあ、黒頭巾ちゃん、いい子だ。今すぐに下着を取って、ゆっくりあそこに指を入れてみてごらん」
「あなたなんか知らないし、そんなこと、今したくない」
「大丈夫だよ。すぐに良くなる。だって今、泣いていただろう? 慰めてあげるよ。昔はよく、やったじゃないか」
「そんなこと忘れた。それに、本当の神様だったら、今すぐわたしに会ってくれる。いつもそうだもの。わたしが本当に会いたいと思ったときには会えるの」
「いいよ。じゃあ今すぐに会おう。ところで、今日は出てこられるのかい?」
「そろそろ子供が帰ってくるから無理。それに、あなたになんか会いたくない」
 黒頭巾ちゃんは電話を切って、再び泣き始めました。
 きれいに片付いたお部屋を、夕日が赤く染めました。

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