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1.レズ風俗、気づけば10年やってます。

陽がゆっくり傾きはじめた春の夕方、私はお客様の姿が見えなくなるまでお見送りしました。彼女と先ほどまで交わしていた会話、その表情や仕草などを思い返しながら、なんばファミリーマートから道頓堀にかけての騒がしい歓楽街を抜けます。

喜んでくれたかな?
満足してくれたかな?

私からの感謝の気持ちをブログでどう気持ちを伝えようかと考えながら、事務所へ戻ります。最近の大阪の町は、どこも外国人観光客で賑わっています。

新しく引っ越した事務所のドアチャイムを押すと、女性スタッフさんが出迎えてくれ、「おつかれさまです」と温かいおしぼりを渡してくれました。これは、結構うれしいことです。

広い部屋に入ると、まずは上司である御坊(おぼう)さんにお客様から預かった利用額を渡し、清算します。少し雑談をしたり、ドリンクをいただいたりしてひと息ついてから、スマホを取り出し、ブログを書くのです。ブログとはいうけれど、私にとってはお礼の手紙のようなもの。

……これが、私の日常です。

はじめまして、ゆうです。

みなさんは「レズ風俗」という言葉を聞いたことがありますか? 大ヒットした『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』という漫画を読んだことがあるよ! という人もいるかもしれませんね。

私はその舞台となったお店「レズ鑑賞クラブ ティアラ」にキャストとして在籍しています。女性として、女性のお客様にデートやホテルでのサービスをするのが、私の仕事です。

レズ用語でよく耳にする属性でいうと、「中性リバタチ」です。

中性とは、どっちつかずやユニセックス、ニュートラルといわれるもの。なんとなくわかりますよね?

リバタチというのは「リバーシブルで両方兼ね備えている」という意味があり、ここではセックスにおいて責め(タチ)も受け(ネコ)もできる、両方楽しめるということです。

私はどちらかというと責めよりなので「リバタチ」になるわけです。

そして、『さびしすぎて〜』の著者・永田カビさんと、最初に出会ったキャストです。

お店があるのは大阪ミナミ。御坊さんはこのお店と「レズっ娘クラブ」の代表、つまりうちのボスです。

いつもならブログを書いたあと、次の予約が入っていればそれまで待機したり、入っていなければ次の用事に出かけたりするのですが、この日は急に御坊さんから「ブログでお礼書いたら時間ある? ちょっと話があるんやけど」と、事務室へ呼び出されました。

何をいわれるんだろう?

御坊さんからの話は、とても意外なものでした

「ゆうさん、スタッフ兼、現場監督になれへんか?」

…………?

正直、最初は意味がわかりませんでした(笑)。そんな話、聞いたこともないからです。

いままでどおりキャストの仕事をしながら、これからは講習スタッフ&現場監督として、新人キャストの教育もしてみないか、ということでした。

突然のことでびっくりしましたが、なぜだか即答でした。

「やります」と。

いったそばから私は、新しい立ち位置と責任感を実感しました。

御坊さんはすぐに、事務所にいる女性スタッフやほかのキャストさんに伝えに行きました。反応はさまざまでした。驚いたり、戸惑ったり。

そりゃそうですよね。いままで一緒に働いていたキャストが急に、スタッフも兼任することになったわけですから。複雑な気持ちの人もいたと思います。

お客様からの反応は、私にとって意外なものでした。

「おめでとう」
「やっぱりね」
「いずれはそうなると思ってたよ」

こうなることを予知していたかのような口ぶりでした。お客様は、私よりも私のことをわかってくれているのですね。

御坊さんとの新たな関係性が生まれました。不思議な感覚でした。私のことを信用、信頼してくれていなければ、到底与えられない仕事だと思います。

なぜなら、いままでいろんな事件があったからです。数えきれないほどの、いろんなことがあったのです。

いままで、というのは10年間のこと。
私がレズ風俗という世界に飛び込んだのは、いまから10年前の2008年です。

忘れていることがたくさんある一方、覚えていることもたくさんあります。過ぎ去ったことに、こだわりは一切ありません。過去は過去。いまを、生きる。

そうしているうちに10年が経っていました。

このブログでは、そんな私の10年を振り返っていきたいと思います。どうか最後までお付き合いください。

コーヒーを飲みながら、音楽を聴きながら、公園で、布団のなかで、電車に揺られながら、仕事に行く前やお酒を飲みながら、どんな場面でもいいのです。

ゆうと一緒に、少し旅をしましょう。

そして、あなたがこれを読んでいることが何も恥ずかしいことではないということを、伝えたいと思います。

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