いろとりどりの真歌論(まかろん) #7 エリ(女子高生短歌! より)

甘いもの我慢したのも苦いのに飲み込んだのも好きだったから

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 短歌に興味をもってすぐのころ、さまざまな短歌にまつわる本やウェブサイトを読み漁った。そこでたまたま見つけたのが、この短歌。ときはブログ全盛期。とある女子高生が、ブログ上に短歌を載せており、最終的には書籍化されたらしい。わたしはその歌集の元となったブログに流れ着いたのだった。

 「好きだった」という表現が恋の終わりとその終わりに対して、もはや悲しみすらもないことを突きつけてくる。万葉集以前から、さまざまな恋歌が詠まれてきたし、恋歌が詠まれてきたということは失恋も詠まれてきているわけだけれど、この歌は醒めることによって失われた恋が題材で、平成のドライな女子の恋歌という趣がある。相手に対する思いは消えてしまっても記憶は消えはせず、今となっては無感動な記憶が、自分のなした行為に対する後悔だけが残響する。

 だから「甘いもの」と「苦い(もの)」。これはどちらも具体的なものだと思う。苦い思い、出来事、なんていう抽象的なものではなく。

 甘いものを我慢した、というのはまあ、ダイエットのために我慢したスイーツで、苦いのに、というのは、飲んだ(飲まされた)精液で。好きじゃない行為でも、相手が喜ぶのなら、という努力の象徴としての具体物。行為の積み重ねで感情を描き切ったこの歌を初めて読んだとき、衝撃を受けたし、今もシンプルかつテクニカルかつ素直な、バランスのいい歌だと思う。

 日々無数の短歌が生み出されては、ほとんど誰にも顧みられることなく消えていく。この歌の元のブログももう、ブログサイトのサービス終了で消えてしまった。せめて私だけでもこの歌の良さを語り継ぎたい。

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