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Night Street 第10章:芸者の街オオエド

シーン1:勇敢な仲間


飛空艇はオーシャンベアーを後にし、広がる空を駆け抜けていた。ハンチョウ、ミツ、ピカルク、おにぎりは重い沈黙に包まれていた。キスケを失った悲しみと、復讐への決意が胸に渦巻いていた。

「キスケの仇を討つために、ラミエルとカミエルを必ず倒す。」ハンチョウは拳を握りしめながら言った。

「オオエドは大きな街だ。ラミエルたちを見つけるのは簡単じゃないだろうな。」ピカルクが冷静に分析した。

「でも、やるしかない。」おにぎりが頷いた。

飛空艇のデッキに出て、冷たい風に吹かれながら、ハンチョウはキスケとの思い出を思い返していた。キスケが最期に見せた決意の表情が頭から離れない。

「キスケ、お前の意思は俺たちが継ぐ。必ずラミエルとカミエルを倒してやる。」ハンチョウは心の中で誓った。

ミツは無言でハンチョウの隣に立ち、彼の肩に手を置いた。「俺たちならやれるさ。キスケもそう信じていた。」

ピカルクはデッキの端で海を見つめながら、静かに呟いた。「オオエドに着いたら、まずは情報を集めよう。ラミエルたちの手がかりを掴むんだ。」

おにぎりは飛空艇の操縦席に戻り、目的地への航路を確認した。「オオエドまであと少しだ。みんな、準備をしてくれ。」

シーン2:オオエド到着


飛空艇はオオエドの港に降り立ち、ハンチョウたちは活気に満ちた街へと足を踏み入れた。オオエドは動物と草花が溢れ、商人や芸者が行き交う賑やかな街だった。色とりどりの提灯が通りを照らし、屋台からは美味しそうな香りが漂っていた。

「まずは情報を集めよう。」ミツが提案した。

「この街には懸賞首がたくさんいるって聞いたことがある。情報屋も多いだろう。」ピカルクが答えた。

「よし、俺たちも動こう。」ハンチョウは一行に指示を出し、四方に散ることにした。

ハンチョウとおにぎりは、地元の酒場「狐火の宿」に向かい、ピカルクとミツは市場の方へと向かった。酒場では様々な情報が飛び交い、懸賞金首の噂話が絶えなかった。

「ここなら何か掴めるかもな。」ハンチョウは酒場に入り、店主に近づいた。「すみません、この街でラミエルとカミエルって名前を知っていますか?」

店主の狐は目を細めてハンチョウを見た。「その名前を口にするとは、命知らずだな。だが、あんたたちに関わるのは面倒だ。何も知らないよ。」

「それじゃ困るんだ。俺たちは…」おにぎりが言いかけたその時、後ろから声がかかった。

「おい、あんたたち。ラミエルとカミエルのことを知りたいなら、ちょっと裏まで来い。」振り向くと、猫の情報屋らしき男が手招きしていた。

一方、市場ではピカルクとミツが店を一軒ずつ回り、聞き込みをしていた。情報屋の犬は、彼らに興味を持ち、話しかけてきた。

「ラミエルとカミエルについて知りたいのか?そりゃあ危ない連中だぜ。だが、情報を持ってる。俺について来な。」

情報屋たちはそれぞれハンチョウたちを人目につかない場所へと案内した。猫の情報屋は薄暗い路地裏に入り、周囲を確認してから話し始めた。

「ラミエルとカミエルはこの街の裏でかなりの影響力を持ってる。彼らの拠点はからくり城ってところだ。ただし、そこに入るのは命がけだ。」

「命がけだろうと構わない。どうやってそこに行くんだ?」ハンチョウが真剣な目で尋ねた。

「それがな、からくり城への道は一筋縄ではいかないんだ。まずは、この街の芸者屋敷『花鳥風月』に行け。そこには重要な手がかりがある。」

同じ頃、市場の情報屋も似たようなことを話していた。「からくり城のことなら、『花鳥風月』の芸者たちが詳しい。彼女たちはあの場所に通じる秘密を知ってる。」

「ありがとう。」ピカルクは礼を言い、ミツと共に合流地点に向かった。

ハンチョウたちが再び集まり、情報を共有した。「やはり、『花鳥風月』が鍵だな。」ハンチョウが言った。

「そうみたいだな。じゃあ、行こうか。」ミツがうなずいた。

シーン3:芸者屋敷「花鳥風月」



芸者屋敷『花鳥風月』は華やかな装飾が施され、美しい芸者たちが客をもてなしていた。ハンチョウたちは受付で事情を話し、奥の部屋へと通された。

「いらっしゃいませ。ラミエルとカミエルのことを知りたいのですね。」迎え入れた芸者のフラミンゴが微笑んだ。「私たちは彼らの動きを追っています。ですが、その情報を得るには少し手伝っていただきたいことがあります。」

「手伝い?何をすればいいんだ?」ハンチョウが尋ねた。

「実は、この屋敷には幽霊が出ると噂されていて、そのせいでお客様が減ってしまっているんです。もし、その幽霊の謎を解いてくれたら、からくり城への道を教えます。」

ハンチョウたちは顔を見合わせ、頷いた。「分かった。それで、幽霊の噂はどこから始まったんだ?」

「屋敷の奥にある古い部屋からです。夜になると怪しげな声が聞こえ、何度か見た人もいるんです。」芸者は不安げに話した。

「それなら、今夜その部屋を調査しよう。」ミツが提案した。

「お願いします。成功したら、約束通り情報を提供します。」芸者は深々と頭を下げた。

シーン4:芸者屋敷の謎


夜が訪れ、ハンチョウたちは指定された部屋に向かった。廊下は薄暗く、静寂が不気味さを増していた。

「ここがその部屋か。」ハンチョウが言い、扉を開けた。

中は古びた家具や埃まみれの布が散らばっていた。突然、冷たい風が吹き抜け、窓がガタガタと音を立てた。

「何かいるぞ…」おにぎりが警戒しながら進んだ。

その時、白い影が現れ、低い声で囁いた。「ここから出て行け…」

「幽霊だ!」ピカルクが叫んだが、ハンチョウは冷静だった。「待て。これはただの幻影かもしれない。」

ハンチョウは影に向かって煙を吐き出し、その姿を覆った。すると、影が実体化し、一人の歳老いたタヌキが現れた。

「何者だ?」ミツが尋ねると、老人は震える声で答えた。「私はこの屋敷の元主人、長年ここに閉じ込められていたのです。」

「どうしてここに?」ハンチョウが聞くと、老人は涙ながらに話し始めた。

「私はこの屋敷の秘密を知ってしまったがために、幽閉されていたのです。ラミエルとカミエルの陰謀を暴こうとした結果、こうなってしまったのです。」

「そんな…」ミツが言葉を失った瞬間、屋敷全体が震え、突然扉が勢いよく閉まった。

「おやおや、これで全員揃ったようですね。」優雅な声が響き渡り、メスのシカの芸者が現れた。彼女は美しいが、その目には冷酷な光が宿っていた。

「お前たち、何のつもりだ!」ハンチョウが叫ぶと、芸者たちは一斉に笑い声を上げた。

「私たちはラミエル様の命令で動いているのです。この屋敷に近づく者は、すべて始末しろとね。」メスのシカが冷たく言い放った。

「お前たちがラミエルの手下だったのか!」ピカルクが驚きの声を上げた。

「そういうこと。さあ、楽しませてもらうわ。」シカが鋭い角を突き出し、ハンチョウたちに襲いかかった。

ハンチョウは素早く避け、煙を吐いて視界を奪った。「ミツ、おにぎり、ピカルク、分散して戦え!」

ミツは幻覚を使って敵を混乱させ、おにぎりは身体を固くして盾となりながら攻撃を受け止めた。ピカルクは翼から火を出し、シカの攻撃をかわしつつ反撃した。

「これでもくらえ!」ピカルクが火の玉を投げつけると、シカは素早く避けたが、後ろにいたフラミンゴがその火を受けて倒れた。

「お前たち、手加減するな!」シカが命令すると、他の芸者たちも一斉に攻撃を始めた。

戦いが激化する中、タヌキの主人は急に咳き込み、倒れそうになった。「これを…これを持って行け…」タヌキの主人は震える手で古びた日記を差し出した。

「何だこれは?」ハンチョウが受け取りながら尋ねると、老タヌキは息を切らしながら答えた。「この日記には…ラミエルとカミエルの陰謀の全てが…」

その瞬間、シカの攻撃がタヌキに直撃した。タヌキは悲鳴を上げ、力なく倒れ込んだ。

「やめろ!」おにぎりが叫び、シカに向かって突進したが、シカは素早く避けた。

「これで終わりではないわ。次はお前たちの番よ。」シカは冷たく言い放ち、距離をとった。

「そんな…」ミツが駆け寄り、タヌキの主人の息を確認した。「もう、助からない…」

「この日記が唯一の手がかりか。」ハンチョウは日記を握りしめて、怒りを抑えた

「タヌキの主人のためにも、必ず奴らを倒そう。」ピカルクが決意を込めて言った。

そしてハンチョウは煙を広げながら思案した。「彼女たちの動きを封じる必要がある。」

「おにぎり、俺に続け!」ハンチョウが叫ぶと、おにぎりは頷き、シカに向かって突進した。

「無駄よ!」シカは笑いながら角を振り下ろしたが、おにぎりはその攻撃を防ぎ、反撃の拳を繰り出した。

「鉄壁の防御!」おにぎりの身体が鋼鉄のように硬くなり、シカの攻撃を弾いた。

「この隙に!」ハンチョウは煙の中から飛び出し、シカの足元に煙を巻き付けた。「スモークスネア!」

シカの動きが鈍くなったその瞬間、ミツが背後から現れ、幻覚を使ってシカの視界を奪った。「これで終わりだ!」

「フィニッシュブロー!」ハンチョウとおにぎりが同時に攻撃を繰り出し、シカは力なく倒れ込んだ。

「やったか?」ピカルクが息を切らしながら確認した。

「いや、まだ終わっていない…」シカは力を振り絞って立ち上がり、冷たい笑みを浮かべた。「でも、今回は見逃してあげるわ。ラミエル様に報告しなければならないからね。」

「逃がすものか!」ハンチョウが追いかけようとしたが、シカは一瞬にして姿を消した。

「また厄介なことになったな。」ミツが呟いた。

「でも、これでラミエルとカミエルの手がかりは掴めた。次はからくり城だ。」ハンチョウは決意を新たにした。

「そうだな。行こう、からくり城へ。」おにぎりが力強く頷いた。

シーン5:日記の秘密


日記にはタヌキの主人についての記録が書かれていた。

「ここにラミエルとカミエルの隠れ家についての手がかりがある。」ミツがページをめくりながら言った。

「地下通路…それがからくり城へと続く道だ。」おにぎりが指差した。

「行ってみよう。これが俺たちの唯一の手がかりだ。」ハンチョウが決意を固めた。

シーン6:からくり城への道


ハンチョウたちは日記に書かれた情報を元にからくり城への道を進んだ。地下の秘密通路に入り、石の階段を降りると、冷たい空気が漂う薄暗い空間に足を踏み入れた。

「ここがからくり城への通路か…。気をつけろ、何が起こるかわからない。」ピカルクが警戒した。

壁に埋め込まれた燭台が、細い通路を淡く照らしていた。ハンチョウたちは慎重に進みながら、罠を避けて進んでいった。通路の壁には奇妙な模様が刻まれており、その意味を解読しながら進むのは一筋縄ではいかなかった。

「これを全部突破しなければならないのか?」おにぎりが驚いた声を上げた。

「やるしかない。」ミツが決意を込めて言った。

途中、突然壁から飛び出してくる槍や、足元が崩れ落ちるトラップが彼らを襲った。ハンチョウはそのたびに瞬時に反応し、仲間たちを守りながら進んでいった。ピカルクは火の力を使って、周囲の罠を焼き払ったり、照明を作り出して道を照らした。

「罠がこんなに多いなんて…。ラミエルたちは本気でここを守っているんだな。」ピカルクが息を切らしながら言った。

「この先にはもっと厳しい試練が待っているだろう。それでも進むんだ。」ハンチョウが力強く言った。

シーン7:潜入!からくり城


進んでいくうちに、彼らは大きな扉の前に立ち止まった。その扉は重々しく、何か重要なものが隠されていることを示唆していた。扉の上には古代文字が刻まれており、何かの暗号を解かないと開かないようだった。

「これがからくり城の入り口かもしれないな。」おにぎりが言った。

「準備はいいか?」ハンチョウが仲間たちに確認した。

「行こう、ハンチョウ。キスケのためにも。」ピカルクが頷いた。

ハンチョウたちは力を合わせて扉の暗号を解き始めた。少しずつ、扉は開き始め、中には壮大な機械仕掛けの城が広がっていた。その中心には、巨大な歯車が回り続ける不気味な光景が広がっていた。

「これが…からくり城か。」ハンチョウが驚きの声を上げた。

「この先もっと厳しくなりそうだな」ミツが冷静に言った。

「俺たちはこの城にいるラミエルとカミエルを倒し、キスケの為にスカイウォーカーを取り戻す。」おにぎりが決意を込めて言った。

ハンチョウたちはからくり城の奥深くへと進んでいった。

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