東京ドームで売り子のビールを経費で飲む方法(43日目)

昨日は取引先の人と野球を観に行く会があった。
東京ドームの広島巨人戦、カープファンとしては見せ場もたくさんの快勝だったので言うことなかったのだけど、酒の飲み過ぎで今日は一日半死人のように過ごしている。

というのも、取引先の人の、球場で飲むスタイルがなかなかにハードコアだったからだ。

まず、ビールの売り子のお姉さんの中で、今日一日この人からだけ買う、という人を決める。
これは当然取引先の人の好みの子ということになるわけだが、この人の場合会社の押さえているシーズンチケットで何度も同じ席に来ている常連のため、すでにご指名のお姉さんが決まっていたりもするらしい。
決めたら人数分ビールを買った上で、「また20分後に来て」と伝える。
するとおおよそその頃合いに、約束通りそのお姉さんが回ってくる。
そこでまた全員分ビールを頼み、「また20分後に来て」と伝える。当然その時には前に頼んだ分を飲み干している必要がある。
それをひたすら販売終了まで繰り返すのである。

最初のうちこそすぐにビールを飲み干してしまって、「まだ来ないよー」などと言いながらお姉さんの姿を探すのだが、3杯目くらいからだんだんペースが落ちてくる。
球場のプラコップってこんなにデカかったっけ。ビールの炭酸の泡が出て胃を埋め尽くし始める。
横をハイボールやレモンサワーの売り子のお姉さんが通り過ぎる。本当はビールでなくそっちを飲みたくなってきたが、声をかけられない。すでに我々の心には、そちらへ"浮気"してしまっていいのだろうか、というためらいが生まれている。
我々はあのお姉さんと約束をしてしまっているのだ。彼女は20分後、我々がまた人数分ビールを頼むことを期待して、ペースを配分してこちらにわざわざ回ってくる。
その時にもうレモンサワーに変えたからいいよ、と追い払うのは間違いなく仁義にもとる行為であろう。

しかも最初は半信半疑だったお姉さんも、3回目くらいになると「こいつらはマジだ」と確信し、率先して「また20分後でいいですか?」と貪欲な商人の姿をあらわにし始める。こうなったらもう後戻りはできない。ていうかおれは後戻りしたいんだけど取引先の人が後戻りしてくれない。

結果として都合8セットほどそのサイクルをこなし、試合が終わる頃には順調に死を迎えることとなった。
お気に入りのキャバクラ嬢にいいとこ見せるために入れたボトルの消化を手伝わされたような感じではあるが、今回は先方の払いなので心置きなく飲みたくったのだった。

しかし球場のビールは高い。そんなものを20杯近くも飲んだわけで、そんなわりとエグい金額をおごるというのはどういうことか。

そう。なんと同じ人からずっとビールを買っていると、領収書を出してもらえるのである。
最後にコップの数をカウントして、宛名となる名刺を渡せば、お姉さんがバックヤードでその通り社名で領収書を書いてくれるのだ。
かくして取引先の人は仕事の会合として、堂々と経費で売り子のお姉さんからビールを買いまくれるわけである。

つくづく、野球場はいろんな楽しみ方があるものだなあと思う。
人によってはでかいスポーツガールズバーなんだろうなあ。

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