文フリ行くか迷ってる日記

 文学フリマ東京の開催日が近づいていますね。今回から東京は有料化&流通センター最後の開催とあって大きな転機を迎えているわけですが、予定が立て込んでる上にあんまりコンディションが良くないこともあって出向くのにひより気味です。(今回はサークル参加しません)
 以下、疲れた中年が文フリに行くかどうかうだうだ理由をつけて迷っているだけのクソ長い文章が続きますので、あまり閲覧推奨しません。似たような疲労を抱えている人もいらっしゃるかとは思いますが。

 上記の変化からもわかるように、ここ最近の文フリ、コロナ禍を経て来場者数が毎回最高を更新する規模になり、会場もどんどん広くなってます。その結果、サークルの場所うろ覚えでふらふら歩き回るんでなく、事前調査で狙いを立てていかないと、時間的にも体力的にも大変なイベントになってきました。自分にとって文フリは、貴重な文芸関係の知人に会いに行く機会という意味合いが大きいんですが、その回るルートをきちんとプランニングしないとけっこう会えずに終わります(出店者として参加してると時間が限られるからではありますが)。
 狙いを立てるにはあらかじめカタログをギッチリ見るか、SNSの告知に目を凝らす必要がありますが、それを漏らさず見るのもなかなか大変です。自分はTwitterで数百アカウントフォローしてますが、世界が悪夢的になるのに伴いタイムラインの悪夢度も加速度的に増している中、その濁流をじっくりかき分けてお目当ての新刊情報を手繰り寄せるのはかなりハードになりました。
 しかも皆さん、なんか昔よりデザイン含めかなり気合の入った、面白そうで造りのしっかりした本を毎回(マジで毎回)出されるようになってませんか。
 あくまで観測範囲内の印象ですが、装幀のレベルが上がってる気がします。あと帯付きの本が増えている気がしていて、それがより「(販売戦略を織り込むことも含め)造りがちゃんとした本」が多く感じる要因にも思えます。短編界隈だと日に日に切り口もメンバーもエッジの効いたアンソロジー増えてきてますが、アンソロは特に帯付きの傾向が強いような。
 プロの参加もめちゃくちゃ増えました(前から出ててプロになった方も多いですね)。ファンだったら当然その方の本は欲しいわけですが、読んだことがない方の本であっても、市場に揉まれてきたプロが自前で好きに作った本は、造本も企画も、商業出版じゃできないけど同人誌レベルを超えている絶妙な座組みであったり濃度であったりすることが多い印象です。
 つまるところこれは、プロアマの垣根の間にあるエリアを文フリが育て、そのフィードバックが文フリのことも育てる相互作用が順当に進んだ結果でしょう。質・量ともに巨大化してることについては、自分はわりと、順当だしいいこともいっぱいあるでしょ派です。
 そりゃ前のまったりした感じを懐かしみはしますよ。あの時はもっとひとりひとりが孤独に、ひとりひとりの声量で、己の信じる変なことをやってたと思います。でもこの場所が黎明期から次の繁栄期に入る前に(あのコロナ禍ででも!)滅びなかったことの方が喜ばしいし、商業出版が日に日に縮小していくさなかにオルタナティブな出版文化が成長しているのは素晴らしいに決まってるじゃないすか。世の中にはまだまだ文芸を必要としている人がこんなにいる、というのは間違いなく自分にとっても救いです。
 結局問題は個人的なもので、自分という受け手のキャパが日に日に縮んでいることなんですよね……。
 まずはお金の面。上記の造り以外にも、紙代の高騰などの要因もあって1冊の値段は上がってきてる感はあり、積み上げてくと平気で万単位でお金が飛んでいきます。いや、だって、気になるところガチでリストアップしてくとあっさり2桁いくじゃないですか……。面白そうな本ばかりなわけで……しかも下手するとここでしか買えないわけで……。
 あと物量面。まず当日、買いまくると地味に持ち運びがキツい……。そしてヒイコラ帰宅したら待っているのはすでに溢れかえって収集のつかない本棚なわけです。今我が家では少しずつ、泣く泣く、本の断捨離を進めていますが、ためらっている間にもまた本が増えていきます。今話題の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』も買いました。たくさん働いていると本は買えるようになりますがその代わりに読めなくなります。前の文フリで買った本も、その前の文フリで買った本も、まともに読めてないものが腐るほどあります。
 取捨選択していくしかないのはわかっています。が、悩むんですよ。なまじ知ってる方も多いですし。あの人の新刊が出る……あの人があれにもこれにも新作を書いている……挨拶したい……知らなかったけどこれ面白そう……しかし予算が……選ぶなら何を基準にするか……そんな買っていつ読むのか……みたいな。だんだんデカい規模の飲み会にどの付き合いの人まで呼ぶか考えてるような気分になってきます。こういうことに無駄に延々悩んだ末に何もせず結局最も不義理な結末を迎えがちなタイプです。
 やはり最もデカいのは、諸々ひっくるめた体力面ですね。実際、行くために「より気合が必要になった」感はあるんですよ。日々の暮らしでヨレヨレになって創作活動がまともにできなくなった中年にとっては。行く前にいろんなことを考えなくてはならない感じ。事前の下調べも含めてですが、こういう悩みがけっこう脳内のメモリを食うんですよね。ここしばらくですっかり、自分比で働きすぎてパズドラしかできなくなった麦くん状態(『花束みたいな恋をした』参照)のお脳になってしまったので、なんかもうそのタスク自体をデリートしちゃいたいな=行くのやめちゃおうかな、みたいな考えが首をもたげてきている真っ最中というわけです。そもそもくたびれていると、人がめちゃくちゃいる場に行くことの心理的ハードルが結構デカいですしね……。
 あと情けない話ですが、みんなこんなにがんばってるのに、自分はなんもできてねえなー怠けてんなーっていう、部活の半幽霊部員みたいな置いてかれ感がわりとあって。ああいう場に行ったらその悔しさが深まるのと、創作意欲が刺激されるのと、どっちのブーストが強くかかるか読めないんですが、どちらにしろ絶対値のでかいそういう感情で疲れるのがキツいなあ、という疲労中年の哀しき鈍重さがあります。老けました。そして若さの輝きを吸い取れるほどには老獪でもないのです。
 でもなー。なんだかんだ毎回直前になってめんどくさいなー早く帰ろうかなーとか思いつつ、行って楽しくなかったことも後悔したこともないんですよね。疲れはしますけど。ものも増えますけど。
 あと最近このやり方ありだなーと思ったのが、書店委託があってサークルの方に面識ない場合は、あとあと同人誌やZINEを置いている独立系書店で買うというやつ。
 例えば自分も埼玉・霞ヶ関のつまずく本屋ホォルさんに本を置いていただいてますが、文フリのしばらく後にあそこに伺えば、気になってたものがかなりの割合でまとめて買えます。大阪だったら犬と街灯に行けばよいですね。お店自体が毎日文フリのような空間です。ゆっくり見られるし、お店にお金も落とせるし、いいことずくめです。
 うだうだ書いてきて、自分も文フリもそれなりに年をとったんだなと思いました。行くにしろ行かないにしろ、無理せず楽しい付き合い方を引き続き模索したいもんです。
 とか言いながらやっぱ一番楽しいのは、会心の新刊作ってブース出すことなのは間違いないんですけどね。

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