お金に込められた警告の意味

キャピタル神殿の『警告』という意味の名前が付けられたジュノー・モネタ(Juno Moneta)女神

過去、ローマには7つの丘があった。この7つの丘の内、カピトリヌス(Capitolinus)丘はローマの最も強力な要塞であり、最高の神殿であるキャピタル(Capitol)神殿が位置している非常に重要な地域であった。

キャピタル神殿は、神々の王であるジュピター(Jupiter Optimus Maximus)を中心とし、知恵の女神であるミネルヴァ(Minerva)、ミネルヴァの姉でジュピターの婦人でありながらマーズ(Mars)の母であるジュノー(Juno)女神が共に置かれていた。

しかし、ジュノー女神の周辺を取り囲んでいる神聖な雁(かり)の群れが、紀元前4世紀頃、ガリア人達がこっそり城壁を登って来て攻撃しようとした時、けたたましい鳴き声を発して知らせてくれたのだが、この時からジュノー女神の名前には『警告』という意味のラテン語(monere)が付き、ジュノー・モネタ(Juno Moneta)という名前が付けられるようになった。

お金の語源に『警告』という意味が込められているのは、決して偶然ではないようだ

お金を間違って使うと、身を滅ぼすだけではなく、お金のせいで争いや殺人まで起こるから、お金の語源に『警告』という意味が込められているのは、決して偶然ではないようだ。実際に、お金を指す「錢(「銭」の旧字体)」という字を見ても、金偏(かねへん)に、槍を意味する「戈(ほこ)」の字が2個くっ付いており、鉄で作られた槍と槍が猛烈に対決する形状を表しているのではないだろうか?

聖書を見ても、テモテ人への手紙6章10節に「金銭を愛することは、すべての悪の根である。ある人々は欲ばって金銭を求めたため、信仰から迷い出て、多くの苦痛をもって自分自身を刺しとおした。」、
箴言11章28節に「自分の富を頼む者は衰える、正しい者は木の青葉のように栄える。」とあり、お金について警告している。

一方、紀元前269年、ローマ人達はジュノー・モネタ神殿で、聖書に登場するデナリウス(denarius)という銀貨を作った。この銀貨にはジュノー女神の姿が刻まれていたが、ジュノー(Juno)は結婚するのに良い月として指折りの6月(June)の名前となり、女神の神殿であったモネタ(moneta)は貨幣の鋳造所(mint)と貨幣(money)に発展した。

しかし、今日(こんにち)ジュノー・モネタ神殿の現場には、古代の燦爛(さんらん)さは消え去り、見るに堪えない煉瓦造りの建物であるアラコエリのサンタ・マリア教会(Basilica di Santa Maria in Aracoeli)が建っているだけだ。

だが、奥妙なのは、この教会に上る階段が124段あるのだが、人々がこれを『天国の階段』と呼ぶのだ。そして、天国の階段を膝で這い上がると大金を稼ぐことができるという俗説がある。そのような俗説が、ジュノー・モネタ神殿が過去のローマ貨幣の原点であったがために生じたかはわからないが、お金が持つ警告の意味を考えてみる時、果たして誰がその大金を稼ぐために膝で階段124段を這い上がることができようか?

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