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全粒粉とブランができるまで

師匠とは大変な仕事ですね。こんにちは、Threebread店主です。
今回は先日デビューした全粒粉とブランのパンができるまでのお話。
全粒粉をおいしく食べたい店主の思いです。思いが溢れてちょっと長めの記事です。どうぞ。


パン・コンプレ

以前も記事にしたことがありますが、「コンプレ」というパンがフランスにあります。フランス語で「完全な」という意味の、全粒粉だけで作られたパンです。これも以前書きましたが、フランス人の言葉のセンスに脱帽です。

私も何度か挑戦したのですが、あまりおいしくできなかったんですよね。
全粒粉というのは、小麦を皮ごと製粉した粉です。だから小麦粉よりも味わいがぼやけます。そのぼやけ具合が、コンプレにしたときにあまりいい味を出せずにいました。
要は、味が足りなくておいしさを感じられないパンにしかできなかったというのが私のコンプレです。

名前が付くほどの伝統あるパンなのだから、全粒粉でもおいしいものはできるはずという確信はあったのですが、いい方法が思いつかず、たまに作っては撃沈を繰り返していました。


ブリオッシュ型って可愛いですよね


うまみ

全粒粉のパンに足りないものは、うまみだと分かっていました。
パンの製法でうまみを出すやり方はあるのですが、一人で、たまに作る当店のスタイルには合わないために、なんとか材料でうまみが出せないかと考えていました。そして、ここが一番の課題でした。

2月にモバックショウに行ったときに、メーカーさんから色々なお話を聞きました。サンプルもいただいたりして、うまみの出やすい全粒粉というものも紹介してもらいました。

そして、この会場でもう一つ出会ったのはごま油です。
正確には、気に留まった、というのが正しいです。以前から製菓・製パン用のごま油があることは知っていました。そのブースにはハード系のパンも紹介されていて、改めて興味が湧いた次第です。こちらでもたくさんお話を聞かせてもらいました。

盛岡に帰ってきて一息つくと、これらを合わせたらうまくいくのではないかと思い始めました。ごま油のうまみを利用できないかと思いついたのです。
早速頂いた資料を読み込み、レシピを考えました。


ポモドーロ、
分かりづらいから改名しようかな…



全粒粉とブラン

モバックショウで試食した全粒粉のパンには、うまみに似た苦みも含まれていました。そしてそれは、子供のころ食べておいしいと思っていた、全粒粉の食パンを思い出させました。

その味に近づけるため、ブラン(=ふすま)も入れようと思いました。ブランとは、小麦の皮です。最近、栄養価が高いことで注目されています。ただ、独特の味わいがあって、作り方によってはかなり食べづらい食品でもあります。

試作では、どうやって全粒粉とブランの香りを目立たせないが一つの課題でした。ごま油の味との駆け引きが必要で、更に、ごま油は入れすぎるとバターと合わなくなるのも商品開発としては手強い一面でした。 

でも、なるべくコンプレに近づけたい気持ちはあって、できるだけ全粒粉たちの割合を増やしたい。そんな生地と私のせめぎ合いの中、表面にけしの実をつけることで、入れたい全粒粉たちの量を全て入れることに成功しました。念願の全粒粉のパンの誕生です。

5年越しで完成した全粒粉のパン。コンプレとは違う形になりましたが、私なりのものが出来上がったと思っています。願えば叶うを体現した今回の商品開発でした。


完成した、全粒粉とブラン


ただこのパン、自信作ではあるのですが、正直お客様の反応が気になっています。きっと香りが苦手な人はいるはず。みなさんに受け入れてほしいと、祈りみたいな希望を持ちながら焼いて販売しております。
店頭で見かけたら、ハーフからでもお試しください。手軽においしさと栄養が手に入りますよ。


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