5月某日 まだ見ぬお姉さん

松林を散歩していたら足元に転がる毛虫に気づいた。そんな季節かと思い、どうぞ私が通り過ぎるまでは落ちてこないでと枝をじっと睨みながら歩いた。午後、大きな交差点で信号待ちをしていると5枚ほどのまだやわらかい葉をつけた枝が、フロントガラスにぽたりと落ちた。スピードを出してもワイパーに引っかかって落ちない強いやつだ。今日は上から何かが落ちてくるらしい。これで雨粒でも降ってきたら、ツモだな。いや雨粒では面白くない、キャンディのアメであってほしい。金曜日の10時は隣の隣ぐらいのお宅に食材の会社のお姉さんが来る日。仕事部屋がマンションの廊下に面しているので、玄関先のやりとりがよく聞こえるのである。明るくてハリのある声が今日も清々しい。いつも少し早口だからきっと一日に何件も回っているんだろう。金曜日だからもう休もうかと思う、ヘタレな私に喝を入れてくれるまだ見ぬお姉さん。

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