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ティアハイムベルリンで働く!その3

こんにちは!愛犬・愛猫の一生を共に見つめるパートナー、トナリノの野原です。

私は大学生~社会人3年目まで、関西を中心に動物保護団体のボランティア、動物愛護センターの見学、勉強会・セミナー参加等を通して当時の日本の動物保護事情について独学で学んでいました(その翌年ドイツへ)。
それを通して自分なりに現状と課題を考え、動物を取り巻く環境、意識改革の必要性と難しさを感じました。

そういった経験を踏まえ、私がティアハイムベルリンでボランティア、アルバイトをしたときに印象的だったことをご紹介します。

ティアハイムで印象的だったこと

ティアハイムベルリンについて、実際ボランティア/アルバイトを経験して見てきた日本との違い等をお話します(2015~2017年当時のお話です)。

まず、捨てられた動物達がやって来る経緯についてですが、大きく分けて3経路ほどあると考えています。

1つ目は道端で発見された場合、Fundtier(拾得動物)として警察に通報・もしくは保護主が直接ティアハイムと連絡をとり、連れて来ます。

2つ目は劣悪な飼育環境下(多頭飼育崩壊等)から獣医局が保護した場合。

そして3つ目が、飼い主自らティアハイムへ動物を捨てに来る場合です。

3つ目は日本の保護団体ではあまりないかもしれないですが、ドイツでは少なくないように思います。
ドイツでは行き場のない動物たちを殺処分する施設は存在しないため、動物を手放したい場合は知人に譲渡する、逃がしてしまう、もしくはティアハイムや他の動物保護団体に連れて行くしかありません。

私がボランティア・勤務していたSchillow Hausは感染や重度の病気の疑いが低い猫の受け皿だったので、受付を済ませた飼い主たちが頻繁に訪れていました。
受付で引き取り料の支払いなど手続きは済ませているので、引き渡しの際にすることと言えば、その捨てられる仔がどのような環境で飼われていたかということや性格を聞くだけです。
猫を引き取った後に対応した職員さんに聞くと、大抵の飼い主はいかに自分が大変だったか、自分を正当化するのを試みるそうです。
なかには「猫が病気になるなんて知らなかった」なんて呆れてしまうような話もありました。

受け取った猫は取り急ぎステンレス製ケージ(動物病院の入院ケージのような構造)へ入れて環境に慣れるまで静かに過ごさせます。
緊張でガチガチに固まっている仔たちを見ると、なんともいたたまれない気持ちになりました。それと同時に、次は絶対にもっと良い里親さんに巡り合えるよう願いました。

様々な事情で動物が集まってきます


捨てる人と直接話すメリット

捨てる人が直接職員さんとやりとりをすることにはメリットもあるといいます。
それは、この猫が今までどのような環境で暮らしてきたのかを知ることができる点です。

飼っていた人の家族構成は?子供がいた家か?
室内飼いか外飼いか?
同居動物は?うまくやっていたか?
穏やかな性格か神経質か?等。

これによって何を考えるかというと、新しい譲渡先とのミスマッチをなくすことです。
例えば、元は老夫婦の家に飼われていて静かな環境で暮らしていた猫を、今度は騒がしい環境の家に譲渡するとなると、必ずといっていいほど問題が発生します。その猫との暮らしがうまくやっていけなくなると、また捨てられてしまう可能性が出てきますよね。
であれば、その猫はできるだけ前いたところに似た環境の家に譲渡してあげるべきだという考え方です。

なので、元の環境を聞くことはとても重要になります。
道端に捨てられていて保護した仔に関しては情報が不足しており、その仔がどのような環境に適しているのかを掴むのに時間がかかってしまうのです。

郊外出身の子は外中自由だった子が多い印象


これが日本で成立するのか?

ただ、この方法は理論付けが好きだと言われるドイツ人の特徴が活かされてるようにも思われますが・・・。
というのも、これを日本でやると果たしてうまく機能するのでしょうか?

第一日本人の感覚として、自分に非があると思われることを恥だとする部分があると私は推測します。
引き取る際に「決してあなたを責めないのでこの仔がどういう環境で飼われていたのかを教えてください。」と案内したところで、後ろ指を指される(と本人が思っている)ところへわざわざ動物を捨てにはいかないのではないでしょうか。
「外に逃がしておしまい」の方が、人に責められることなく罪悪感も少ない。日本では今なお、多くの人間が道端に動物を遺棄する犯罪に手を染めていることでしょう。
ここにドイツと日本の違いを感じました。

国民性、価値観は国それぞれ


ドイツでも際立つ衛生管理の徹底

ボランティアをしていて気づいたもう一つのことは、しっかりとした衛生管理です。

ティアハイムベルリンでは基本的に猫1匹に1ボックス割り当てられており、換気口や暖房装置も完備されています。先に書いた通り、施設に入る際は靴カバー必須、猫のボックスに入室する際は手袋必須です。
違うボックスに移る度に靴カバーと手袋は交換。掃除用具もボックス1つ1つに専用のものがあります。使用済の猫トイレは中身を全て捨て、トレーを洗浄、新しい砂を入れる。そのため1日のゴミの量は半端ではありません。

真菌やくしゃみ等、感染の恐れがあるものが発生した場合は、それらのボックスの清掃は入退室を最小限に抑え、消毒を徹底していました。そしてそのボックスを担当した人はすぐに着替えて清潔なユニフォームに交換していました。
この点に関しては、相当な財力がなければ毎日続けられないと感じます。
衛生のための消耗品を惜しむことなく使え、衛生管理を徹底できるようにするにも、しっかりとした財務の基盤がなければやっていけないのだなぁと、つくづく思いました。
(ドイツでもティアハイムベルリンの規模感、財力は他の施設とは全く違うものなので「あそこは特別」と言われているようです。)

清掃後はすっきり綺麗に

しかしながら、ボランティアを通して一番痛感したのは、日本では称賛されているはずのティアハイムにも問題は少なくないという部分でした。

ティアハイムにいる動物は幸せか?

「ティアハイムにいる動物は幸せか?」
という質問があるとするならば、私は必ずしもそうだとは思いません。

そもそも何をもってその動物が幸せかどうかは、様々な角度から判定せねばなりませんから簡単な話ではないですが、当時よく日本人の知り合いに言われたのは、「ドイツではこんな立派なシェルターがあって保護してもらえて、この子たちは幸せね。」という言葉でした。
そう発言される方々の優しさも理解した上であえて言うならば、どれだけ立派なシェルターで保護されていたとて、その子たちが満たされていなければそれは幸せとは言えないということです。

先に述べたように、職員さんの一日は目まぐるしいです。
そこで1匹に割いてあげられる時間というのはほんの僅かしかないのです。
2匹や数匹の同居ボックスはまだしも、1匹だけのボックスは職員さん以外と交流する機会はほぼ皆無です(特に見学不可エリア)。下手したら一日数分しか交流がない場合もあるかもしれません。加えて、16時の終業以降は翌朝まで大体無人だそうです。

動物たちは新しいお家へ譲渡されるまでその生活を続けねばなりません。
満足にご飯が食べられて安心して寝る場所があるけれど、それだけで幸せとは限らないのです。
なので、当時はある程度自由なボランティアというポジションとして、できるだけ各ボックスを回るように意識していました。

手袋、足袋はボックス毎に毎回使い捨て


本日はここまでです!

次回は、
・ティアハイムベルリンで職員として働くには?
ということについて、私のケースはどうだったかをご紹介します。

お読み頂き、ありがとうございました✨

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