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エンジニアのアウトプットとしての音声配信

Voicy Advent Calendar 2023 のはじまりはじまり

これはVoicy Advent Calendar 2023の初日の記事です。Voicyのエンジニアが1日1つずつ記事を公開してクリスマスまでカレンダーを埋めていきます。初日ということで、今回は特定の技術の話ではなく、音声プラットフォームならではの活動として音声配信の紹介と、それを続ける中で感じたことをつづりたいと思います。

エンジニアのアウトプットとしての音声配信

ここで言うエンジニアはソフトウェアエンジニア、特にWebエンジニアを指します。世の中には、電気・電子、機械、宇宙、材料、化学など、全て列挙するのは不可能なくらい様々なエンジニアがいると思いますが、ことインターネットサービスの業界では、Webエンジニアのことを単にエンジニアと呼ぶことが多いですよね。Webエンジニアを他のエンジニアと呼び分けることよりも、営業やバックオフィスといった他の職種の方々と呼び分ける機会の方が多いからかもしれません。余談でした。

Webエンジニアの界隈では、学んだ知識や試した技術などについて発信することが良しとされる文化があります。一番多い形式はブログですね。そして体系的な知識は書籍。このあたりが王道かと思います。入門者向けのハンズオン的なコンテンツとして動画もあります。いろいろな発信の形がありますが、今回は音声配信についての話です。

本記事の内容は所属組織の見解ではなく、所属組織の他のメンバーの意見も入っていません。自分の感想のみを書いています。

Voicyは音声プラットフォームを運営しており、現在のメインのサービスは音声配信です。主要なユーザーは、パーソナリティとリスナーです。パーソナリティが収録アプリで収録した話をチャンネルで公開し、リスナーが再生アプリでそれを聴きます。

プラットフォームであるVoicyの社員は、リスナーとして自社のサービスを使うことは比較的簡単ですが、パーソナリティとして使うことにはそれなりのハードルがあります。そのため、すこしでもパーソナリティの視点を理解するために、社員が運営するVoicyチャンネルがいくつかあります。その中でエンジニアが運営しているのが "voi-chord" (ボイコード) というチャンネルです。

このチャンネルは2020年9月に開設され、1年半ほど気まぐれに更新されていたり、 (本番環境で使えるテストチャンネルという扱いを受けていたり) しました。その後、2022年2月ごろから、このチャンネルを運営するためのチームが組成されるようになりました。この運営チームは半年ごとにメンバーが入れ替わります。僕はこのチームが立ち上げられた最初の1年間参加していました。また、運営チームを離れてからも、週1で放送自体は続けさせてもらっています。ということで、約2年間このチャンネルに関わってきたことになります。決してフォロワーが多い大人気チャンネルというわけではありませんが、この2年間どんな放送をしてきたのか、自分以外のメンバーの取り組みも含めて紹介します。

運営メンバーが変わる度に小さな見直しはあれど、このチャンネルの主な目的は二つです。一つはVoicyのエンジニアがパーソナリティの視点を理解すること、もう一つはVoicyのエンジニアをリスナーに知ってもらうことです。リスナーにはVoicy自体を応援してくれる皆さんだけでなく、Voicy外のエンジニアの方々なども含みます。リスナー数を増やすことを目標としていた時期もありましたが、最近は音声コンテンツの強みである深く届くことを活かす方向性になっていると感じています。

前置きが長くなりましたが、ここからは具体的な放送内容について書いていきます。この記事を書き始める前に、放送のパターンを書き出してグルーピングしてみたところ、大きく分けて二種類のコンテンツがありました。

一つ目が技術をテーマとしたテクニカルな話です。

テクニカルな話の例として、まずはやってみた系を紹介します。エンジニアの発信として一番よくある形は、やってみた系のブログだと思っています。これは、特定の技術を使ってあることをしたいというときに、こんな設定をしたらできました、こんなコードを書いたらできました、というのを紹介するブログ記事です。これを音声配信でやるとどうなるかと言うと、こんな技術を使ってこういうものを作りましたという紹介をすることはできますが、音声だけでコードを見せることはできないので、どうしてもブログよりは抽象度が高い紹介になります。この場合、ブログ記事を書いた上で、それを紹介する音声も併せて配信する形が良いかもしれません。音声単体でやってみた系の紹介は本当に紹介だけなら良いですが、コードを参照したい場合などには相性が悪いです。ブログだけよりも音声を併用する利点のひとつに、音声コンテンツのリスナーは個別の放送で扱うトピックによらず定期的に聴く習慣がある人が多いため、聴き手がまだ出会っていなかった技術についての話を聴き、それを調べるきっかけの提供になることがあります。また、その技術を使うことでどんな良いことがあるのか、あるいはどんなタイミングで困ったか、といったことを感情を乗せて伝えられます。

また、技術に関するニュースを紹介する放送もありました。AppleやGoogleが出すiOS/Android開発に関係するアップデートの情報や、外部のサービスで発生したインシデントについての紹介などです。これは同じように開発を行うエンジニアのためになる情報である他、そのニュースに対する話し手の見解を添えることで意見の共有になることも効果的だと思います。また、インシデントの例では、それに対する対応についての話もしてきました。実際に行った対応について具体的な話をしすぎると、セキュリティ的なリスクになるので注意は必要です。

他には、専門用語について説明する放送もありました。エンジニアが当たり前のように使う言葉も、周りの人にはちんぷんかんぷん、ということは非常によくあります。この放送を通してエンジニアが使う言葉の意味の理解度を上げてもらい、コミュニケーションの齟齬を軽減することに繋がればと思い放送してきました。この類の放送は、実際にエンジニアでない社内のメンバーが聴いて役に立ったこともありました。ここまで読んで察している方もいるかもしれませんが、想定リスナーはエンジニアであったり、エンジニアでない人であったり、それなりに揺れがあります。エンジニアを対象として話をするかどうかによって、使う言葉や扱うテーマは大きく異なってきますし、より多くの人に聴いてほしいのであれば、エンジニア以外にも伝わる表現が必要です。ただ、聴き手の像を具体化して対象を絞れば絞るほど、発信自体のハードルは上がります。それによって放送が無くなってしまうことに比べれば、放送が生まれている状態の方が良いだろうということで、あえて想定リスナーを明確化しすぎないようにしています。われわれの本業はあくまで開発なので、この部分に意識を割きすぎることは避けました。もちろん、よりソリッドな発信を行いたい方には、もうすこし解像度高くリスナー像を作ることをおすすめします。

あまり本数は多くありませんが、技術の仕組みの解説も試みました。ノイズキャンセリングってどうやってるの?NFTってどんな仕組みになってるの?といった話などです。これは難易度が高かったです。現代においても、体系化された知のほとんどは書籍という形になっています。仕組みを本当に理解したいのであれば、腰を据えて書籍から学ぶことが最適な分野が多いと思います。では入門者向けのコンテンツとしてはどうでしょうか。概念を伝えるという意味では、音声も役に立ちます。例え話を上手く使ったりすることで、本格的な勉強の入り口に立つための感覚を手に入れたり、概要を把握することを目的としたインプットのためには役立ちます。ただし、この目的には視覚情報も使える動画の方が優れていそうという感想を持ちました。

以上が一つ目のテクニカルな話の例でした。二つ目は、組織や人間、取り組みや考え方などが伝わるコンテンツです。より音声と相性が良い発信はこちらだと感じています。

人間の紹介としては、まずはパーソナリティが何かしらのテーマについての考えを述べる放送があります。話すテーマはその人が直近で気になっていることであったり、一般のパーソナリティの皆さんが参加するのと同じトークテーマであったりします。これは開発組織にどんな人がいるのか、つまり、どんな人がこのサービスを作ってるのかを発信することには価値があると考えての活動です。中の人が見える状態はサービスに愛着を持ってもらいやすいと思います。

エンジニア組織に新しく人が増えたときに、その人へのインタビューを収録した放送もよく公開しています。これも理由は上記と同様です。副次的な効果ですが無視できないくらい大きいのが、これを聴いた社員間で相互理解に繋がり、その後のチームビルディングに役立つという側面です。この効果だけを期待するなら全世界に対して公開する必要はなく、社員どうしで聴く専用の音声コンテンツを作成するのも良いと思います。これに特化したサービスとして、Voicyでは「声の社内報」という取り組みも行なっています。

リリースに関連する話をする放送もあります。大きな機能追加などがあった際に、その開発に携わったメンバーを集め、そのプロジェクトの背景や、どんなところが大変だったのかを話す放送を以前から行なっていました。僕個人としては、100%全てのユーザーに喜ばれるサービスの変更というのは存在しないと考えています。プロジェクトの背景を発信することで、すこしでもその変更について理解してもらえるかもしれません。この発信を聴いてくれるくらい好意的な方は聴くまでもなく受け入れてくれるかもしれませんが。また、最近は小さいものも含め、全てのリリース情報のヘッドラインを週に一回のペースで紹介する放送も始まりました。

開発に関する直接的な話題以外にも、生産性を上げるために取り組んだことや、チームビルディングのために行った活動などの事例を紹介する放送もあります。これは開発組織に限らず、似たような悩みを持つチームの参考になると嬉しいですし、そのような活動にポジティブなチームであること自体を知ってもらうという意味もあると考えています。

以上が、僕目線でのこれまでのvoi-chordでの音声発信の振り返りです。他のメンバーから見たらもっと違う視点から意義を言語化してくれるかもしれません。また、今回は遠目で全体を振り返りましたが、個別の放送や取り組みにフォーカスした振り返りをしてもおもしろいと思います。これを読んだvoi-chord関係者の方の記事を待っています。また、Voicyの活動に限らず、エンジニア組織やテクノロジー領域の話をする音声コンテンツはPodcastを中心にたくさんあります。それらがどのように運営されているかも気になります。

最後に最近の自分の放送を紹介します。基本的に毎週土曜日7:30に【週末版】という放送を公開しています。このシリーズは、僕と、エンジニアリングマネージャーのかげにぃの二人で、1週間分の放送を振り返って、他のメンバーの話の感想を言い合ったり、同じテーマでそれぞれが感じたことを話したり、そこから派生した雑談をしたりしています。音声コンテンツ通の方はご存知かもしれませんが、「News Connect あなたと経済をつなぐ5分間」というPodcast番組で野村さん/塩野さんのお二人が配信されている「日曜版ニュース小話」へのリスペクトからこのコンセプトの放送を始めました。


ここまでお読みくださり、ありがとうございました。ぜひみなさんも音声配信を始めてみてください。個人としてでも、組織としてでも、どちらでも得られるものがあると思います。僕が実感していることのひとつに、頭の中に生まれるもやもやした思考の流れを整えて言語化する力が向上した感覚があります。


以下、Voicy Advent Calendar 2023再掲です。2日目から25日目まで、残りの記事もお楽しみに。


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