ブリキの雪崩  Blechlawine (ブレヒ・ラヴィーネ)

 ブリキは、das Blech、雪崩が、die Lawineである。W音はドイツ語では英語で言うV系統の音として発音する。

 さて、ドイツでは連邦レベルの文科省がない。日本で国レベルの「内務省」がないのと同様の経緯で、戦後の民主化政策の関連で、また、ドイツの領邦絶対主義の伝統に則って、文化政策は州の高権とされたのである。だから、ある州にある託児所から大学までがすべて、その州の文科省の管轄下に入り、よって、大学も日本語でいう「国立」大学はないのである。

 ゆえに、大学も含めた学校の休日は、それぞれの州が独自に決めることになるが、とりわけ夏休みに関して言えば、16ある州が協議をして、大体北の州から南のバイエルン州へと順次に夏休みを取っていく。子供のある家庭では、子供の夏休みの時期に合わせて休暇をとるので、ある州の学校が夏休みに入ると、子供がいる家族はどっと南のフランス、スペインなどへと「ゲルマン民族の大移動」が始まる。しかも、滞在が3,4週間なので、ホテルではなく、休暇用のペンションを借り切っての滞在となり、その賃貸契約の始まりが土曜日の午後となっているところから、多くの家族が金曜日の午後から南へと車で走り出す。そうなると、南へのアウトーバーンが南へ行くほど渋滞気味となり、20、30キロメートルの長さにわたり、時速制限がないはずのアウトバーンを車が時速10キロ、20キロで走ることになる。この状態を、車をブリキに喩えて、「ブリキの雪崩」とドイツでは呼びならわしている。これは、とりわけ夏の風物詩であり、日本のお盆休みの帰省ラッシュに似ていなくもないであろう。筆者には子供がいないので、上述の時期をわざと外して、学校が始まった9月、10月に「夏の」休暇を取ったものである。

 


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