「森師匠」 Waldmeister (ヴァルト・マイスター)

 今日は、2021年4月30日なので、「森師匠」について書く。

 森は、der Wald (w音は英語で言うv音、音節の〆を飾るd 音は、t 音となる)で、師匠が、der Meister (eiは複母音で、「アイ」と発音する) である。Meisterは、大工などの手工業者を養成する、今でもしっかり機能しているドイツのマイスター制度として、また、何と言っても、ドイツの19世紀の音楽家 Richard Wagner (ドイツ語風に「リヒャルト・ヴァーグナー」と発音したい) の 楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー(職匠歌人)』の題名でも一度は聞いたことがある言葉だろう。

 では、なぜこれが4月30日と関係があるか。実は、Waldmeisterは、植物である。四月下旬ぐらいに白い小さな花を付ける、いわば香草である。少々甘い濃厚な香りがする、薬草にもなるハーブである。故に、学名 Galium odoratum (odoratumとは「芳香のある」の意) もうなづける。和名は、アカネ科アカネ亜科ヤエムグラ属の多年草「クルマバソウ(車葉草)」である。

 森の中であまり日の当たらない場所に一面に繁っているWaldmeisterを摘み取ってきて、一晩置いておく。一時的に冷蔵庫なり、冷凍庫に入れる。すると、芳香がさらに強くなるのである。これを糸で束ねる。事前に冷やして用意した辛口白ワイン1,5lに、これも良く冷やした Sekt(ゼクト:ドイツ製スパークリングワイン)0,75lをガラス容器に入れて混ぜ、それに束にしたWaldmeisterを、花が付いた方を下にして入れる。茎の切り口は溶液に漬からないようにする。でないと、苦みが入るからである。30分ほど漬けたら、Waldmeisterは取り除く。これで、Waldmeisterbowle (die Bowle ボーレとは、ポンチ酒のこと) 、別名 Maibowle (「五月ポンチ酒」) の素が出来上がる。これに、イチゴやミントの葉を入れ、さらにSektか、泡の多いミネラルウォーターを適宜注ぎ足して、サービスすると、美しき月五月へ夜通し踊りながら「突入」できるという訳である。

 こうした「浮かれあがった」4月30日の夜は、Hexennacht(へクセン・ナハト:例の、は行のch音)と呼ばれる。die Hexe 魔女の夜である。なぜなら、この夜魔女たちがあちこちの山々で(とりわけ、有名なのがBrocken山で)Walpurgisnacht ヴァルプルギスの夜を祝うからである。しかし、これだけではない。この夜には町のいたずらっ子たちが徒党を組んで町中を徘徊し、悪戯をして歩くのである。とりわけ、自分の自動車を路上に駐車してある人は気を付けないといけない。なので、この晩は車をわざと人目の付くところに或いは自分の家の窓から見えるところに駐車したりするのである。コロナ禍の現在、夜は外出禁止にしてある地域もあるので、子供たちもそんなに悪戯をするチャンスは今年はないと思うのだが。

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