常設予防接種委員会 STIKO (シュティコー)

 STIKOは、元々の言葉を形成する要素の頭文字を取ってつなげて作った省略語である。日本人同様、ドイツ人も省略語が好きである。では、STIKOの元々の言葉は何というか。それを、Ständige Impfkommission (シュテンディゲ・インpフ・コミッスィオン) という。

 「常設」に当たるのが、形容詞のständigeである。stのコンビネーションで出てくるs音は、「シュ」と発音する。これは、標準語に当たる高地ドイツでの発音で、方言によっては、例えば、北のハンブルクでは、「ス」音で発音する。äは、ウムラウト、すなわち変母音で、「エ」と発音すれば、よい。ゆえに、stäは、「シュテ」となる。語尾の-g-eは、この後に女性名詞が続くからである。という訳で、Kommissionは、女性名詞で、英語からの類推で、意味はすぐに分かるであろう。なお、-ss-は、無声音で発音し、siは、「シ」では異なる発音になるので、「スィ」と表記した。

 さて、女性名詞Kommissionの前にある部分、Impfである。これは、impfenという動詞から来ているもので、「予防接種をする、植え付ける」という意味を持つ言葉である。ドイツ語では、このように、何かの行為を行うという意味合いを持たせるために動詞の一部を複合語に使うケースがあるのである。こういう形で、die Impfkommission予防接種委員会という言葉が成立し、StändigeからSTを、Impf-からIを、KommissionからKOを取って、STIKOという略語が成立している。なお、pfの発音であるが、これは、f音を発音する際にpを発音しようとする感じの要領である。この点については、2021年7月6日の筆者の投稿を読まれたい。

 では、STIKOとはどんな委員会であろうか。ドイツでは、この委員会が、既に別の機関で認可されたワクチンについて、それがどのように接種されるべきかを提案する。STIKOからの提案は、医学的スタンダードであると考えられ、尊重されている。

 STIKOは、対コロナ・ワクチンで言えば、アストラゼネカについては、65歳以上の人にと提案している。この年齢以下の、とりわけ女性については副作用が、わずかだが、懸念されるので、この人たちにはファイザーを接種するようにと、している。最近(2021年8月)では、12歳から18歳までの児童のワクチン接種をどうするかが問題となっており、現段階ではSTIKOは、あまりデータが揃っていないので、この年代のワクチン接種には消極的な態度を表明している。

 なお、ドイツでは、ファイザーが製造・販売しているワクチンの開発は、ドイツの研究機関Biontech (バイオンテック) が行ったので、むしろ、誇らしげにこちらの名称が通っている。この研究機関は、癌治療のための薬品開発を行っていた所であり、医学的軍事研究機関ではないことも、誤解を与えないよう、ここで言い添えておく。

 STIKOは、1994年以来ロベルト・コッホ研究所に所属する機関で、政治的・世界観的に独立の、18人前後の専門家グループが無償で年二回会合を開いて、とりわけ、子供の予防接種、例えば、はしかや百日咳に対してのワクチン接種に関して提言を行う機関である。この提言に従って、ドイツ連邦各州がそれぞれの予防接種カレンダーを作ったりするのである。

 それでは、このSTIKOとロベルト・コッホ研究所の関係がどうであるか、また、ワクチン自体はどこが認可するのか、この点に関しては、次回の、ロベルト・コッホ研究所についての投稿にご期待あれ。

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