若き北条早雲の青春を描く、ゆうきまさみ先生の『新九郎、奔る!』第7巻!
最近、ぼうゲームによる競馬がブームであるようだが、1994年から6年に渡ってゆうきまさみ先生の競走馬を育成する農場ではたらく人々の悲喜交々を描いた青春ラブコメ『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』も大変面白いのでより深く競走馬の世界を感じることの入門書としてもオススメしたい。
そんなゆうきまさみ先生が2018年からスピリッツで連載している『新九郎、奔る!』の第7集が先週発売されたので紹介していこう。
過去の記事にも書いたが、今作は後に戦国大名のはしりと云われる伊勢新九郎、つまり後の北条早雲の物語である。
ゆうき先生のライトなタッチで描かれる作風だと歴史物の重厚さが薄れ、非常に読みやすく、きちんと読めば応仁の乱の状勢や、各勢力の思惑などがキッチリと描かれており、資料としても存分に発揮している。
その辺りを意識してなのか、人物、特に主人公新九郎の心情がつぶさに描かれており、若くして伊勢家の当主となった彼の苦悩ぶりがよく窺える作品となっている。
様々な方面から辛酸を舐めさせられ続ける彼が、やがてどのような経緯を経て『下剋上』の第一人者となっていくのか、非常に興味深い。
現段階で荘園管理や帳簿に細かく口を出したり、家臣の者に読み書きを教えたり、強い豪族に出会うことで家臣に武術の鍛錬を推奨したりと、なるほど、こういった積み重ねが大名としての足場を築くことに繋がるのだな、と伏線を感じさせる。
反面、新九郎の内面や人間関係をクローズアップしている為に、当時の文化や風俗に関する記述は少なくある程度「ああ、室町時代だからそういうことも当然あるよねー」みたいな大前提を知った上でないと理解が深まっていかない部分は見受けられる。
とんなところまで描いたら膨大な量になり、物語が遅々として進まなくなるので割愛されているのも頷ける話だ。
なにせ、この時代の『伊勢家』というのは天秤の上に天秤を乗せてバランスを保たないといけないくらいの微妙な立ち位置なので、その説明をするだけでも大変、理解をしようとするのも大変、なのだ。
なにせ、この時期の応仁の乱を火種に100年に渡る戦乱の時代が訪れるのだ。ちょっとやそっとの因縁や怨恨だけでそうはならない。
複雑に入り乱れた家同士、武将たちの個人的な思惑、それらが複雑に絡み合っての起点なのだ。
そんな複雑怪奇なお家事情を背負わされて伊勢新九郎の奔走が描かれるので、戦国時代の黎明期をしっかり見たい人ならば一読の価値はあるであろう。
余談ではあるが、当初から登場していた新九郎の姉、伊都(歴史上では「北川殿」と記されることが多い)が嫁いだ先は駿河国の今川家である。後に嫡男である龍王丸(名前!w)を出産するのであるが、彼こそが今川氏親となるのである。
つまり、後に織田信長に討たれる今川義元のお婆ちゃんが、北条早雲との血縁であることを考えると、どういう時代だったか、というのがわかってくるだろうか?
その縁があるおかげで「北条・今川・武田の三国同盟」が強固なものとなったのだと思うと、こう言った人間関係を把握しておくことが如何に歴史を学上で必要かを思い知らされる。
さて、京の都と領地荏原郷とを行ったり来たり、政争にまつわるあれこれに奔走させられる新九郎。
まさにタイトル(看板)に偽りなし!
作者本人も「次回よりこの漫画の題名は『辛苦郎、奔る!』になります」
と揶揄しているように、さらなる艱難辛苦が新九郎を襲うのでしょう?!
奔れ、新九郎! ダッシュ新九郎!(言いたいだけw)
若き当主、新九郎が下剋上に目覚め、大名となるのはいつのことか?!
是非、その時代までしっかり描いていただきたいと切に願うのである。
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