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How to make example sentences 5

英語教材に使われる英語はそれがパッセージであれ,会話であれ,例文であれ,自然なものがいいに決まっています.ただし,いつも自然にできるかというと難しい問題です.

市販の教材の場合,「ネイティヴチェック」ということで,ネイティヴスピーカーに校閲をお願いするのは普通ですが,それで万事OKか,というとそういうことではないです.

というのは,ネイティヴスピーカーはよほどの場合を除いて,ごく普通に読んでおかしいな,と思ったら訂正するかコメントするだけです.その場合,その訂正をそのまま受け入れて納得できればいいのですが,全部がそういうわけにも行きません.コメントの場合,あるいは訂正してもそれでは,と思った場合,それを受けて書き直してもう1度見てもらってOKならば問題はないでしょう.

納得いかない場合はどうするのか.場合によってはネイティヴスピーカーによる訂正を無視して,そのままにする場合もあるでしょう.ぼくは,自分が作った会話用例でButやSoが文頭になっているのを校正者が無理にHoweverやThereforeにしてきたら(実はそういうことは結構あります),「いや,会話だから,そんな書き言葉のルールはいいよ」と思ってその指示は却下します.

いずれにせよ問題解決がサクサク行く場合はいいのですが,かなり困ってしまう場合もあります.みんな,ではないものの複数のネイティヴスピーカーが「間違っていないけれども不自然」というような場合で,かつそれが教科書・文法書にでてくるような典型的な例文の場合です.

いまもごくごく普通の中学生用の文法を扱った参考書や問題集に当たり前にある表現として,like X better than Y(XよりYのほうが好きだ)という表現があります.この表現を使って例文を作ってネイティヴスピーカーに見てもらうと少なからず,「間違えてないけれども不自然だ」「意味はわかるけど自分は使わない」と言う答えが返ってくることがあります.たとえば,「一般的にアメリカ人はコーヒーが紅茶より好き」のつもりで,
△ Generally, Americans like coffee better than tea.
と書くと,おそらく赤を入れるアメリカ人の方が多いはずです.

たぶん,多くは,
Generally, Americans think (that) coffee is better than tea.
のように直すのではないでしょうか.

このように直す校正者は,なるべくbetter thanを残して,オリジナルを書いた著者に遠慮してくれているのだと思います.でも,教材の構成上まだthat-clauseのあるセンテンスは使いたくないときは著者は困るでしょうね.では単文ならどうするのかというと,

Generally, Americans prefer coffee to tea.

とすればよく,たぶんこれがいちばん自然な英語です.いや,日本人著者だって多くは「それは知っているけど,この本の対象は中学生や初級者だから,preferは使いたくないなあ」と思って最初のセンテンスを書いたわけです.

ここで,諦めるのもひとつの手ですが,どうしても,like X better than Yを使いたいならば,書き直して,ネイティヴの反応を見るのもひとつの手です.

I like coffee better than tea.
Karen likes coffee better than tea.

のように最初のセンテンスのような一般論ではなくて,個人的な好みにすると,「これでいい」というネイティヴも出てくるかもしれません.でも,「最初のよりいいけど,やっぱり自分はそのsentence structure(文構造)は使いたくない」と云われるかもしれません.実際,ぼくはネイティヴ校正者にそう云われたことがあります.

難しいのは,散々いろいろ別の例を挙げて,彼らの感覚の裏に何があるのかを探ろうとすると,like X better than Yはネイティヴはなんとなく使いたくないらしいのですが,than Yをとってlike X betterだけだと何も問題はないらしいです.

ということで,ごくごく基本的な単語から成る表現でも,このように単にネイティヴに見てもらうだけでは自然な英語にならない,という難しい問題があります.

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