What you learned in middle school?
よく入試の自由英作文のアドヴァイスだと,入試は減点法なので簡単な英語を間違えないで書けばよい,というようなことが云われます.ただ,ぼくはこれは嘘だと思っています.
何が嘘なのかと云うと,まず,入試英作文で減点法ーつまり,その問題の配点の満点とされる点数から,文法であれスペリングであれ,ミスとされるものから点を引いていくという採点法ーを採用している学校はほとんどないと思います.だって,普通に考えれば,ちょっとおかしいことに気づくはずです.X I have brother. / X My boyfriend don't love me. のような限定詞の抜けや,動詞の一致の集まりのようなわかりやすいミスなら採点者は悩まず減点できるかもしれませんが,文法的なミスがあるのかどうかわからないが,何が云いたいのかよくわからない,A job requires me. とかいうセンテンスがあったらどうするのか,難しい文法事項を使おうと挑戦しようとして出てきたミスをどうしようもない基本事項のミスと同一視するのか,など疑問はたくさん出てきます.
あくまで推測ですが,全体的にざっくりと(これを英語ではholisticと普通呼びます)採点しているはずです.例えば,5点満点だとして
5:論旨が明確,構成がしっかりしていて,文法・スペリングのミスがほとんどない
4:若干ミスがあるが,論旨・構成はほぼ明確.
3:多少のミスがあり,論旨・構成も少しわかりにくいものがある
2:文法・語彙のミスが目立ち,構成も不十分で,かなりわかりにくい
1:何か英語でセンテンスをつくろうとした形跡はあるが,ほとんど答案になっていない.
0:ほぼ白紙.日本語で書いてある.あるいは意味不明の英単語の羅列.
ぐらいにしているはずです.
上に推測だと書いた通り,ぼくが各大学に問い合わせて聞いてみたわけではありません.というか,入試って大学からすれば極秘事情だと思うので教えてくれないし,教えてくれてもその情報を公開することはたぶん許してくれないでしょう.でも,冷静に採点者の立場で考えたら,減点法よりも全体的な採点とどちらが楽で,ある程度公平性を保てるかというのは明らかだと思います.
ただ,これも「あまり無理をせずに簡単な英語で書けばよい」というアドヴァイス自体は概ね正しいと思います.でも,そこで「簡単な英語」とは何か,という問題があります.おそらく学習している側にはあまりどういうのが「簡単な英語」なのかわかっていないのではないでしょうか.指導者やあるいはかなりの英語の使い手にははっきりしているのでしょうが,そこが共有されていません.
ざっくりで,あくまで英語が苦手な人向けのアドヴァイスです(上級になってくるとひっくりかえさなければいけない面もでてきます)が,ぼくならば「簡単な英語」をこう定義します.
❶基本的には現行のシステムで中学3年間で習うもの.それも大半は中学1-2年生で習う文法事項
❷リーディングで苦労してなんとか読み解けるような文構造や文法問題集に載っている文法事項でないもの.これらはよほど自信がない限り使わない
そう「中学英語」なわけです.「なあんだ,簡単」と思った人は,ちょっと甘いと思います.でも,多くの人は学習のスタート時点では,中学英語をライティング・自由英作文の答案で駆使できるほど英語力がありません.中学で習った教科書の例文をセンテンス単位で日本語から英語に瞬間英作文する勉強をしても構いませんが,それだけではたぶん50語とか100語のライティング答案を英語で書くことはできないはずです.勘違いしないでほしいのですが,書けなくて当たり前なのです.書く練習をしていないのですから.
正直,市販の英作文・ライティングの本は,受験勉強をはじめたばかりの人や,やり直し英語でライティングを学んでいる人には難しすぎると思います.だから,騙されたと思ってここからやってみてください.薄い本ですが,きちんとやれば,少なくとも中学で習う英語でなんとか短いパラグラフ程度のものを書けるぐらいには誰でも到達できると思います.パラグラフライティングの本はこれとかこれとかいくつかいい本がでていますが,すばらしい本を書いた著者の方々には申し訳ないですが,これらの本は「英会話が得意て片言でもかなり話せる」とか「中学で習った単語や文法はある程度不自由なく使いこなせる」レヴェルにないとちょっときつい気がします.
この本は単にやさしくしたというだけでなくて,並行して英語学習者なら進めなければいけなくなるリーディングや文法などの勉強にもよい効果を生むようにいろいろ仕掛けをしてあります.通常の英作文の参考書はリーディングや文法を固めて最後にやるのかもしれませんが,この本は比較的学習の初期段階でやってよい本にしてあります.
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