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【映画】現代日本人はファンタジーがお好き?

私は家で夕飯を食べるときには決まってネットフリックスを見るのだが、最近お気に入りのアメリカンシチュエーションコメディの「friends」も6週目が終わるころであり、何か新しいネタを探さなければならない。

そう思いながらこの1年間ほどネットフリックスのランキングを追いかけていたのだが、常にトップ10にランクインしているは決まって①アメリカの映画、②韓国のドラマ、そして…③日本のアニメだ。

私はどのジャンルも好きなのだが、このようなトレンドから読み取れることがないだろうか。今回はこの点を整理してみようと思う。

1.国内映画作品ランキングを再確認してみる

昨年上映された「劇場版鬼滅の刃 無限列車編」は国内興行収入1位となる大ヒット作となったことは記憶に新しい。また最近では「るろうに剣心 最終章」が上映されているが、これは2012年から続く連続ヒット映画となっている。このようにアニメ映画、またはアニメが原作となっている実写映画の報道はよく耳にする。ここで、邦画における興行成績ランキングを見ると以下の通りとなっている(Wikipediaより引用)。

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トップ10のうち8作品がアニメ映画となっている。このことからしてもアニメ関連のエンターテイメントの影響力が分かるだろう。

他方で、興行収入とは別に世界的にも高い評価を受けている作品も多々見られる。2008年に上映開始された「おくりびと」はアカデミー賞外国語映画賞を受賞しており、実際に素晴らしい作品であった。

2.映像エンターテイメントを分類してみる

感覚的に、アニメ映画と「おくりびと」のような映画は、同じ映画であっても全く別物であるようにも思える。そこで、縦軸に映像の表現方法、横軸にストーリーの性質をとって、映像エンターテイメントを下記のように分類してみた。

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「①実写×リアリティ」は伝統的な映像作品である。リアリティ度合いが極端に強いものならば「ノンフィクション」となるだろうし、そこまでいかなくとも物語の世界観が現実世界に近いものならばこのジャンルといってもよいだろう。邦画ランキングでいえば、「南極物語」や「おくりびと」などがこのジャンルに該当する。

「②実写×ファンタジー」は実写の手法を使いつつ、空想的な世界観の物語を映し出すものであり、映像技術の進化とともに増えてきたジャンルである。マンガやアニメの実写版はこれにあたるだろうし、古くからはウルトラマンやゴジラもこのジャンルといってよいかもしれない。

「③アニメ×リアリティ」はアニメの手法を使いつつ、現実世界に近いものを舞台とする映像作品である。アニメはもともとファンタジー要素とは切り離しがたいところがあるため線引きは難しいが、スポーツモノ、学園モノは作品によっては現実世界における自分とどこか重ね合わせることができ、このジャンルに該当すると言っていいだろう。ちなみに私はこのジャンルなら新海誠の「秒速5センチメートル」が大好きである。

「④アニメ×ファンタジー」はアニメの手法を使いつつ、現実世界からは離れた物語を舞台とする映像作品である。説明は不要かと思われるが、「鬼滅の刃」やジブリ作品の多くはこのジャンルに該当すると思われる。

3.分類に沿ってランキングを整理してみる

邦画興行収入ランキングトップ50の作品を上記の4分類で整理してみると以下のような結果が出た。

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興行収入額でみると、上から順に「④アニメ×ファンタジー」>「①実写×リアリティ」>>>「③アニメ×リアリティ」>「②実写×ファンタジー」という結果になっている。しかも、「①実写×リアリティ」と「③アニメ×リアリティ」の間には5倍程度の興行収入の差がある。

そもそも②と③の作品数が相対的に少ないということはありそうだが、視聴者からすると、アニメに対してはファンタジーを求め、実写に対してはリアリティを求める傾向があるように思える。

確かに、筆者の感覚からしても、実写映画を見るときとアニメ映画を見る時では視聴に臨む姿勢は全く異なっていることを思い出した。実写映画を見るときは、自分のライフスタイルと重ね合わせるように、なるべく「ああ、こういう気持ちになるときってあるよね」といった趣を楽しみにいっている。他方で、アニメ映画を見るときは現実世界にはないような爽快感や幻想的な映像を楽しみにいっている。

4.洋画も合わせてランキングを整理してみる

次は国内興行収入ランキングのうち、邦画のみならず洋画も含めたトップ50の作品を上記の4分類で整理してみると以下のような結果が出た。

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興行収入額でみると、上から順に「④アニメ×ファンタジー」>「②実写×フファンタジー」>>「①実写×リアリティ」>>>>「③アニメ×ファンタジー」という結果になっている。

邦画のみの場合に比べて②の割合が大きく増えているが、これを押し上げている作品が、ハリーポッター、パイレーツオブカリビアン、アバター、ET、そして実写版ディズニー映画等であるということを聞けば納得の結果だろう。

しかし、なぜ②の分野において邦画限定の場合と洋画も含む場合で差が出たのだろうか。これには2つの仮説が考えられる。

・海外においてはアニメ技術が日本ほど発展していないため、ファンタジーを描く場合であっても実写がベースとなるカルチャーが存在している
・日本人が演じる実写ファンタジーには違和感を感じるが、外国人が演じるファンタジーはそのまま受け入れることができる

どちらもある程度の可能性がありそうだが、ここでは後者の方に注目したい。

そもそも「ファンタジー」とは現実から離れた世界観を映し出すことであり、「ファンタジー」を楽しむためには必ずしもアニメである必要はない。「現実」から離れてさえいればよいのだ。そのような観点をベースとすると、島国たる日本においては、未だに外国人という存在そのものが現実世界とは離れた存在、すなわち「ファンタジー」と考えているのかもしれない。

思い返してみれば、逆に日本が好きな外国人になぜ日本が好きなのかを聞いてみると、きっかけは「アニメ」だったり「忍者」「侍」のたぐいに心を打たれていることが多く、外国人もまた日本に「ファンタジー」を求めているようにも思える。

このように考えていくと、根本的には日本と海外の関係は「リアリティ」のあるものではなく、未だに相互の認識が不十分であるが故の「ファンタジー」とも思え、埋め切れていない距離を感じざるを得ない。

5.最後に

話がグローバリズムの方にも飛んでしまったが、今回の調査から日本人はどちらかといえば映像エンターテイメントにはファンタジーを求めている傾向にあるようだということが分かった。

そして、韓国ドラマやアメリカ映画がネットフリックスにて人気をはくしているのは、仮に物語のテーマが「リアリティ」であったとしても演者の存在や舞台となっているその国自体が「ファンタジー」であるからなのかもしれない。

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