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心地いい居場所が生まれるときは?──Think Out!019レポート:ファシリテーター編

普段会わないような人と、普段考えないような問いについて対話をしながら考える「頭のワークアウト Think Out!」。2021年2月28日(日)に行われた第19回(テーマ:居場所)のレポートを、TOIのタガイがお届けします。

ひとりでも生まれる「居場所」

Think Out!のテーマは、毎月開催されるメンバー・ミーティングの場で協議されます。今回のテーマ「居場所」は過去の参加者アンケートでも何度かリクエストされたテーマで、満を持しての選定となりました。

ちょうど1年前に新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめ、この1年間でライフスタイルが大きく様変わりした人も多いはずです。そんな中で、自分自身が「居場所」と感じていた場所が変わりつつある人もまた多いと思い、「居場所とはなにか」を考えるきっかけになればという考えでこのテーマが選ばれました。

今回参加された方は11名。様々な年代の人が集まり、ほとんどの方がThink Out!初参加となりました。

前半のセッションでは、グループをふたつにわけて、それぞれが考えた居場所に関する問いを共有します。私が担当したグループでは、次のような問いが出てきました。

・あなたに「居場所」と言えるところがありますか?
・なぜいま「居場所」がキーワードになるのか?
・場違いな時の方が居場所を意識するのはなぜか?
・居心地がよい/よくない場所の違いは何か?
・孤立していないといえるだけで居場所の条件としては十分か?
・ただ「いるだけ」ではそこは居場所じゃないのか?

ある方が「ひとりでも居場所を感じることがある」と仰ったことをきっかけに、居場所について「時間や空間の共有は必要か?」という点で話が広がっていきました。その方はたとえばひとりで本を読んでいるときなどにも居場所を感じることがあると言いますが、一方である方はひとりでは居場所は成立せず「孤立せずに自分の能力を発揮できている状況が必要」であると意見を述べられていました。

ここで私が感じた両者の共通点は「自分の存在が認められている」ということ。ひとりでいる場合でも、能力を発揮する場合でも、両方において自分自身の存在がその場にいることを認められている感覚が、「居場所」たるものを感じさせるのではないかと思いました。

そんな話をする中で、ある方が居場所を感じるためには「否定されないことが大事」というお話をされていて、なるほど、確かに必ずしも他者や自分自身を肯定せずとも、否定しないだけで居場所というものはつくることができるかもしれないとも思いました。

居場所の陰と陽

後半のセッションでは、一見ポジティブな陽ともいえる居場所について、陰といえる居場所もあるのではないか、という話がされました。

陰の居場所で出た具体例が、訓練的な場所や期間。例えば、軍隊などで訓練している最中はつらいものですが、一緒に訓練をする仲間との一体感が居場所の感覚をつくりだす、という話がされて、入隊経験がない私も高校時代の部活などを思い出しながら「わかるな」と思いました。

また、居場所をつくるものとして「役割」もまた重要なのではないか、という意見も出ました。その人がなぜその場所にいるかという存在意義を認めるものとして、その人の「役割」があるという考えです。そして、その役割には他者に与えられその場の構成員に認められた「客観的」なものとあくまで自分自身が認める「主観的」なものがあり、そのどちらであっても居場所を感じることができる、ということでした。

居場所を決めるのは結局「自分」

こうした話が続く中、後半のセッションの最後に出た意見で印象に残っているのが「居場所を決めるのは場所でも人でもなく、自分自身の評価である」というものでした。

客観的に居場所を感じられない状況として「その場で要請されている状況に合わせることができない」ときが挙げられ、そんな時は居場所が感じられない代わりにどうしようもなく窮屈な状態を感じるという話がありました。

一方である方は、入院中に身動きがとれなかったときの様子を思い出しながら「子どものように扱われていたが居場所がないとは思わなかった」と仰っていて、それは先の例同様に客観的には居場所がなさそうな状況であっても、その方の主観的には居場所を感じることができているということなのだと思いました。

つまるところ、ある場所があるときにそこを居場所と感じることができるか否かは、その客観的な状況もさることながら多分にその人自身の主観的な場に対する評価が重要であり、いつどこであってもそこが自分の居場所であると思えるのであれば、居場所はつくりだすことができるかもしれない、と私自身は対話の前には気づくことのできなかった視点を得ることができました。

「居場所」のレポート、いかがでしたでしょうか。ご興味持たれた方はぜひ、次回、3月27日(土)開催のThink Out!(テーマ:(未定))にお越しください。運営メンバー一同、お待ちしております。詳細・お申し込みはこちらから。

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