世界の生物多様性をペットとして消費する日本
今回の記事は、生物の国際取引データを元にして、日本に輸入される生物の実態を解説します。
香港大学のTimothy Bonebrake博士の研究チームが、生物多様性保全の観点から、動物カフェの実態を分析した論文を発表しました。その結果から、動物カフェで扱われている生物には、レッドリスト種やワシントン条約で取引が規制されている種が数多く含まれていることが明らかになり、さらに、動物カフェの増加が日本独特の問題であることも明白になりました。以下が紹介記事です。
動物カフェで飼育されている生物、日本国内でペットとして売買されている生物は、元をたどれば海外からの輸入です。そこで、生物の国際取引データ(UNEP-WCMC CITES Trade Database)を分析して、日本に生きた個体として輸入された生物の種類と多様性を検証しました。
結論として、日本は数多くの生物を輸入している世界最大の生物消費国の一つであることが明らかになりました。
輸入されている生物種数の年変化
以下のグラフは、横軸に年をとり、縦軸に各年に輸入された生物の種類数をとって、輸入種数の年変化を見ています。上から順に、脊椎動物の爬虫類・両生類・魚類の輸入種数の変化を、1975年から2018年まで示しています。2014~2018年に輸入した種数の多い上位5か国と、日本の年変化を示し、 グラフ中の赤線が日本です。
日本は世界の中でも最大の生物輸入国であることが明らかです。過去40年の間、年を追うごとに輸入される爬虫類・両生類・魚類の種類数が増加しています。
日本国内のペット市場では珍しい生物種のニーズが高く、そのことが輸入される生物の多様化を促しているのかもしれません。
哺乳類や鳥類の輸入種数の年変化は、1980年代や2000年前後で減少に転じていますが、やはり、日本は最大の輸入国の一つです。
植物・サンゴ・貝類の輸入を見ても、日本はトップレベルの輸入種数です。
ペット飼育が生物多様性に与える影響
生物に親しみ、生物に関する理解を深めることには、生物多様性の保全を推進する基盤になるでしょう。このような観点から、海外の生物をペットとして飼育することを見つめ直すとどうでしょうか。
日本の生物輸入の実態を元にして考えると、ペット飼育に関する問題の全体像は、以下のように構造化できます。
例えば、爬虫類や両生類の輸入種数のトレンドは、エキゾチックな生物を飼育することが、さらなる生物種(異なる種)のニーズを生んで、野生生物の国際取引を助長することを示唆しています。日本のペット市場の生物売買は、飼育対象としての生物多様性の消費を増大させ、原産地の野生生物個体群の減少を促進している可能性もあります。ペット業界の全てが問題なのではなく、非常に多くの種類の生物種をペットとして売買している点(その要因と影響)を注視すべきです。
日本の生物輸入問題は、ネガテイブな側面とポジテイブな側面を分析して対策を考えるべきでしょう。
参照文献など
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