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J-BMPグローバル:世界の生物多様性地図を公開!

J-BMP 日本の生物多様性地図化プロジェクトでは、日本の生物の豊かさを見える化した様々な地図を公開してきました。

そして、今回、世界スケールの生物多様性地図の公開をスタートしました。これにより、日本企業のサプライチェーン(原材料調達など)が、生物多様性に及ぼすインパクトを、グローバルスケールで評価することが可能になります。

今回公開した情報は、陸上の森林生態系の基盤をなす樹木、海洋のサンゴ礁生態系の基盤をなすイシサンゴ、それぞれの種数地図、および、陸域の827エコリージョンと脊椎動物 24,757種の分布データを基に計算された、保全優先度スコアリングを可視化したグローバル地図です。

陸上生態系の樹木種数地図

私たち研究チームは、全世界で記載された維管束植物(学名)の種リストを作成しました。各種の植物の高さ、草本か木本か(木化するかどうか)等の種特性を網羅的に調べ上げました。そして、各種の分布情報を緯度経度の座標に直して、国、地域ごとに整備しました。データ数は、89,826種、41,627,461ポイントに及びました。

そして、各種の分布データと環境データを用いて、機械学習によって各種の分布を推定しました。最終的に、緯度経度1度グリッドごとに、樹木種の種数を算出しました。なお、この分析では、各地域の在来種を対象にしています。各地域に侵入した外来種や植栽種は除いています。

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サンゴ礁生態系のイシサンゴ種数地図

浅海域におけるサンゴ礁生態系を構成するイシサンゴ類の分布を、地球の海洋全体にわたって、Corals of the World(Veron, 2000)による788種のレンジマップを重ね合わせることで、緯度経度1度グリッドごとに、イシサンゴの種数を算出しました。

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脊椎動物の生物多様性保全優先度スコア地図

世界の陸域827の生物地理区(エコリージョン)、脊椎動物 24,757種の分布データを重ね合わせて、生物絶滅リスクを最小化する観点の保全優先度スコアを、0.01667° から0.2°グリッド(1.7kmから20km区画ごと)に計算しました。

この保全優先度スコアは、世界の様々な国や地域全球に分布している既存する現在の保護区を拡張することを想定し、絶滅が危惧される脊椎動物を効果的に保護し、脊椎動物の種多様性の損失を回避するための重要優占地域を特定しています。

優先度指標の値が大きい地域(赤・黄色で示されたエリア)ほど保護区拡張のプライオリテイが高く、特に絶滅危惧種にとって重要なハビタットであることを意味します。現在すでに保護区に指定されている地域をグレー色で示しました。この保全優先度の空間地理情報は、Pouzols et al. (2014)の分析結果に基づいています。

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これにより、グローバルに展開する企業が、世界各地で土地改変(森林伐採など)を伴う原材料調達を行った場合、ビジネス活動による生物多様性消失リスクを評価することができます。

このようなグローバルスケールの生物多様性地図データは、陸海域の生物分類を網羅的して整備しており、随時、公開していく予定です。

生物多様性ビッグデータの分析を基に、ネイチャー・ポジティブを推進します。

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