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モーリシャスのサンゴ礁生物多様性の危機

日本の貨物船がモーリシャスで座礁し、油流出が周辺のサンゴ礁生態系に悪影響を与えることが懸念されています。

私たちの研究チームが今年の春に発表した論文では、マダガスカル周辺のモーリシャスなどのサンゴ礁の重要性を明らかにしました。その内容は以下の記事で解説しています。

熱帯・亜熱帯の浅海域のサンゴ礁の基盤を構成するイシサンゴ類の種数は、現在把握できているだけでも約800種くらいです。

そして、モーリシャス周辺のサンゴ礁では、349種のイシサンゴが確認されています。つまりモーリシャスには、地球上のイシサンゴ類の40%以上もの種が分布していることになります。サンゴ礁の生物多様性ホットスポットと言えます。

また、世界中のサンゴ礁生態系の”かけがえのなさ度(代替不可能度)”を評価すると、モーリシャスを含むマスカリン海台の浅海域のサンゴ礁は、生物多様性の保全重要地域であることも、私たちの分析から明らかになっています。

そして、さらに重要な点は、モーリシャス周辺のサンゴ礁は十分に研究されていない地域なので、今後の調査で、未確認の種が数多く発見されることが、理論的に予想されています(ポジティブサプライズの大きい地域です)。つまり、保全の重要性=かけがえのなさ度が、現状では過小評価されているのです。

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今回の座礁船による油流出事故は、研究的に未知で、なおかつ、保全上とても重要なサンゴ礁で発生しています。

最も起きてはならない場所で起きてしまった油流出事故、と言えるでしょう。

未だ知られていないイシサンゴ種の存続にも影響する可能性があり、サンゴ礁の生物多様性の将来的な保全を考えた場合に、大きな問題であることがわかります。

今のところ、流失した油の早急な回収と、座礁した船体からの更なる油流出を阻止することが最重要です。同時に、今回の事故による生態系への影響を評価し、その被害を修復することに、日本としても貢献することが、今後、より重要になると思います。

本記事の続編を書きました。油流出がサンゴ礁やマングローブの生態系に与える影響を解説したので、ご覧ください。

また、モーリシャス の生物多様性の特徴についても記事にしてみましたので、ご覧ください。


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