我が家の整理日記① 「一番最初に捨てた物」

祖母が入所する数日前、僕はMさんからこんなことを言われた。
「〇〇ちゃん、〇〇さんが施設に入所したらすぐに生前整理をするのよ。じゃないとたいぎいになってしまうからね。」

「たいぎい」とは山口や広島で使われる方言で「めんどくさい」という意味である。祖母の介護が終わった今、介護が終わった達成感に浸りたい気分であるが、僕と父には祖母が溜めに溜め込んだモノたちを整理するという仕事があるのだ。

僕が一番最初に整理(処分)したものは、キッチンにあった食器乾燥機
今はなきNational製、長年冷蔵庫の隣で食器乾燥機としての機能を担っていた。
しかし、ここ1年のどこかのタイミングでプラスチックの扉に大きな亀裂が入り、乾燥機内には頑固な水垢がこびりついていたので、僕は介護が終わったらすぐに処分したいと、ずっと思っていた。

また、この食器乾燥機は僕が介護中にイライラした原因、第1位だった。
食器乾燥機の使い方を巡り、僕と祖母はほぼ毎日言い争いをした。

認知症になってから祖母の脳内では食器乾燥機は食器乾燥機ではなく、食器棚と化していた。祖母のこだわりで食器乾燥機内にはいつも祖母のコップ、3人分の箸、スプーン数個、包丁が入っていたのだが、これらのモノたちは皿を洗い、食器乾燥機内に入れる際に本当に邪魔だった。

しかし、この時点では僕はイライラしていない。
イライラの原因は乾燥機のタイマーを回した後の祖母のとある行動だった。

介護中の僕のルーティーンは、食器を洗い乾燥のタイマーを回した後にシャワーを浴びることだったのだが、シャワー中にキッチンの方向から「ガッチャン、ガッチャン」と何かを取り出す音が毎回聞こえていた。そしてシャワー後に脱衣場からキッチンにつながる扉を開け、食器乾燥機の方へ向かうと、そこには乾燥中のランプがついたままなのに、さっき一生懸命詰め込んだ食器類が乾燥機内から消えているのだ。

そして上述の所定のモノたちのみが食器乾燥機内に置かれており、乾燥中に取り出された食器たちは祖母の手によってティッシュで拭かれるのだが、その一部にはティッシュがこびりついていることが多かった。今考えても本当に無駄な行為である。

この入浴中の祖母の行為を防ぐため、僕は脱衣所に行く前に
「乾燥中 絶対にいらわない(触らない)」とメモに書き、乾燥機の扉付近に立てかけるなどの対策をしていたが、祖母には無意味だった。

どれだけ怒ってはいけないとわかっていても、こんなことが毎日あるとイライラしてしまう。

対策を考え実行しても祖母の前では無意味だった。
イライラを我慢し、祖母に対して乾燥中に取り出した理由や、食器が熱く火傷する恐れがあるから触ってはだめ、と言っても「触ってない」や「乾燥が終わったから、取り出した」と乾燥中のランプがついている乾燥機の前でこれらの言葉を言われると我慢ができなかったことを覚えている。

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