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コント愛爆発!“かが屋ブランド”のコントはこう創られている!【前編】

キングオブコント2019ファイナリストとして一躍有名になったかが屋。舞台袖に最も芸人が集まるコント師として、同業者からも多くの支持を集めています。

強烈なキャラクターや耳に残るフレーズを作らずとも独自の切り取り方でコントを表現する彼らはどんな2019年を過ごしたのか?コントについてたっぷり語っていただきました!

環境がガラリと変わった2019年

立川:改めて2019年を振り返ると、すごくご活躍されてましたよね。個人的にはゴットタンオークラさんとお会いしてたのが印象に残ってます。加賀さんがたびたび泣いてるような気がしました。

賀屋:うん、たびたびね。街を歩いてて「オークラさんと会って泣いてましたね」とか「ゴットタン見ました」と声を掛けられることがすごく多かったです。

加賀:たびたび!?(笑)そんなことないですよ。会いたい人に会いすぎた1年でしたね。自分たちにとってはまったく新しいことばっかりだったので本当に目まぐるしかったです。

立川:泣く演技もすぐできますか?

加賀:本当に悲しかったり嬉しかったりすれば泣けるんですけど演技では難しいですね(笑)実は演技がよく分からなくなってて、すごく気になってます。

立川:そうですか?それはご自身も思うし、周りからもそう言われるとか?

加賀:周りの人から上手いと言ってもらえたりするんですけど、素の状態を知ってくれてる方が増えたので、集中できない時があるというか、「泣いてた人だ」と思われてたりするのかなと気になってますね(笑)

立川:ネタの設定とか文言のクオリティは下がってないけど、作品性とか1個のコントにかける時間が少なくなってるから自分たちとしては不完全燃焼みたいな?

加賀:そういうことなんですかね。完成してないネタというか、あとでここをこうしたらよかったなと思うことは結構増えましたね。

賀屋:以前は事務所ライブの日は朝9時に集まって19時の開演に向けてお昼頃から劇場に入って練習してたのに、今は事務所ライブの前に別のお仕事があるので前とは時間の使い方が明らかに違いますね。お仕事をいただいてるのはすごく嬉しいし、一生懸命やってるんですけど、その変化に自分らがまだうまいこといけてないというか手探りみたいなところはやっぱりあります。

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演技力の原点

立川:そもそも演技力は最初はどうやって向上したんですか?

加賀:振り返ってみると、もしかしたら幼少期の過ごし方がきっかけかもしれません。僕は一人っ子だから声を出して漫画を読んだり、おばあちゃん家にあった三面鏡で遊んでたんです。開いて頭を突っ込んで閉じたら僕の顔だけの無限鏡みたいな、燃えよドラゴンみたいな状態が生まれるんですよ。そういう遊びとか、おばあちゃんとお母さんと3人暮らしだったのでやっぱりすごく周りの顔色を伺って暮らしてたことも大きいですね。

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立川:ちなみに何の漫画ですか?

加賀:ワンピースですね。ワンピースだけ唯一あって、本当に死ぬほど読みました。

立川:音読ですよね?「人は死ぬぞ」とか言うんですか?

加賀:どのシーンのセリフですか?

立川:18巻くらいのビビに対して言った…

賀屋:ああ!砂漠で殴り合いになったところだ。

加賀:あの辺ですね。親父が唯一残してくれたのがワンピースで…

一同爆笑

加賀:ワンピースだけってことではないけど(笑)家にあった中で僕が小さい頃から好きだったものはワンピースでした。だからずっと物語みたいなものを作ったり考えたりしてたかな。

立川:賀屋さんは演技を始めた頃はどうでした?

賀屋:僕は元々映画とかを観るがすごく好きで、役所広司さんとかオダギリジョーさんとかリリー・フランキーさんが出てる作品をずっと観てたんですよ。でもその方たちって主役じゃないですか。ずっと憧れてたので、コントやってて「かっこつけすぎじゃない?」と言われたことがあるんですよ。改めて思うと、コントの役回り的に全然かっこつけるような役柄ではないところで低い声でやったりとか、そういうことを指摘されたことはあります。情けなく別れ話をする役のはずなのに、かっこつけた演技をしちゃうとか。

加賀:小さいことですけど、「待って」の言い方とかね。

立川:ちょっとキムタクが入ってるみたいな?

賀屋:キムタクも大好きで、ずっと日曜劇場とかいろいろ見てました。

立川:でもイメージとしては違うってことですよね。

加賀:そうですね。イケメンっていう設定だったらいいんですよ。でもそうじゃないときに二枚目をやるんで、そこの練習時間は結構とったかもしれないです(笑)

賀屋:僕の大学の構内でネタ合わせしてて、夜12時すぎるくらいまでずっと外で煙草吸いながら、まだコントにもなってないようなやりとりをしてたのが結構コント中のキャラクターとか演技的なものにつながったのかなと思います。

コンビニバイトで学んだこと

立川:賀屋さんは女性役をやることが結構多いですが、気を付けてることはありますか?

賀屋:今はちょっと伸びちゃってるんですけど、腕毛を剃ってますね。一番肌を傷つけずにすむのでひげ剃りで剃ってるんですよ。

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加賀:これひどいんですよ。単独前に合宿みたいなことをしてうちに泊まってるんですけど、「ちょっとひげそり洗っていい?」って僕の家の洗面台にぶわっとどえらい量の粉が舞って…僕があまり髭が生えないタイプで免疫がないこともあって、なんかセクハラみたいでしたね(笑)

賀屋:ウッチャンナンチャンの南原さんが髭が濃いのを心配して、ハイビジョン対応のクリームファンデーションをプレゼントしてくれました。形から入るのが女性役やる上で気をつけることですね。

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あとは髪型を変えたりしてます。2つ結びにしたりとか、おくり毛作ったりとか。

加賀:おくれ毛じゃない?

賀屋:ここのね…おくり毛?おくれ毛?

坂本:言いたいことはわかりますよ…

立川:僕は何一つわからないですけど…

加賀:おくれ毛だったと思う。女性がいるのに僕がこの中で1番詳しいっておかしくない?(笑)コンビニで働いてた時によくそんな雑誌あったじゃん。見てない?

賀屋:見てないね。逆になんで見とん?

加賀:コンビニで働いてたときも多分こういう違いもあるんですよ。雑誌の返品とかあって、僕はarFUDGEとかGINZAとか、そういうのを見てたのが楽しかったんですよ。

立川:人間観察とかそういう面もコンビニで学んだりしました?

加賀:もしかしたらあるかもしれないです。コンビニって外に出るといっても狭いスペースしかないじゃないですか。そこでずっと立ってて拘束されてたらもうレシートの裏にメモ書くしかないんですよ。だからずっとレシートの裏にメモ書いてました。レシートの裏に書いてた時期が1番メモの回数が多かったですね。最近メモする回数が減ってて、今レシートがほしいです。

賀屋:たしかにレシートの裏にめっちゃ書いてた。あの環境よかったよね。ずっとぼーっと考えて、思いついたらレシートの裏に書いてポケットに入れるみたいな。

加賀:コンビニを辞めたあとにやった喫茶店のバイトでレシートの裏にメモしすぎて年下のバイトの子にキレられたことある。

賀屋:メモすんなって?

加賀:「そちらのお仕事も大事なのはわかりますけど、仕事中なんですよ」って。

賀屋:なるほどね、こっちも仕事なんだと。

加賀:それも謝りながらメモしたからね。めちゃくちゃ怒られた(笑)

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コントが生まれる瞬間

立川:いろんな媒体で1ヶ月にコントのシチュエーションを100個考えると言ってますが、どこまでの形を1と換算してますか?

加賀:導入ができたらですね。場所とか人とか。だからまったく100個考えてるわけではなくて、会議室に5人いるという今の状態みたいなことを書いたらもうよし!みたいな。

賀屋:起承転結の起を1つとして、100起みたいな?

加賀:そうかもしれない。もうちょっとちゃんと考えるときもありますけど、最低限そこをやるということですかね、じゃないと時間が足りないです。時間が足りないっていうのは自分の能力がないと言ってるような弱気な感じなので嫌なんですけど、でも時間が足りないですね(笑)

立川:すでに台本に起こしてる数がめちゃくちゃあるのに舞台数が足りてないのかなと思ったりしたんですよ。

加賀:そういうことでもないんですよね。僕が100シチュエーション書くっていう話がちょっと変な広がり方してるみたいなのもあるんですけど。

立川:捉え方によっては毎日3ネタ台本に書いてんの?みたいな。

加賀:そういう言われ方しますね。実態はむしろ足りてないくらいです。納得いかないからいっぱい考えちゃうというか、台本を最後まで書ききれないんです。

立川:それは結成当初からですか?

加賀:もうずっとです。それがしんどいというのもあって、NSCのときに3回しかネタをやってないんですよ。書ききるのがしんどいんだったら量を考えるしかないって。抜け道を探せるじゃないですか。自分が簡単に考える、ルートを探すためにいっぱい考えてる感じなので、実際にはストックみたいな感じには考えてないです。

立川:ネタは喜怒愛楽で言うとどの瞬間に思いつきますか?

加賀:僕は怒はあまり向いてなくて、1番は恥と愛ですね。「あー最悪、悲しい、もうやだやだ」となってるときが1番。あとは明確に振り向いてほしい人がいるときに思いつきやすいです。

立川:恋愛してるときということですか?

加賀:いや、先輩とか誰かが見てくれてる場とか。

賀屋:ネタが終わって舞台袖に戻ったときに、その人から「おもしろかったよ」みたいなことを言われる想像だったりね。

立川:ちなみにどなたですか?

賀屋:それを言うのは恥ずかしいよね(笑)

加賀:でも間違いなくその人たちはいます。

賀屋:そうね。僕は喜が好きです。例えば合唱のネタ。学生が何人かいて、僕が指揮者でめちゃくちゃ怒るんですけど、その中で唯一できてたのが加賀だって言って、加賀くんが周りも怒られてる空気になるからちょっと喜んで、もう1回やったときにもっと褒められたいと思って頑張るみたいなのが好きです。こういうのも僕が教育実習に行ったときに実際そういう生徒がいたんですよ。普段はヤンチャな子で、体育祭の時期に珍しく椅子とか運んだり一生懸命やってたんですよ。それをみんなの前で褒めたら、次の日からその2、3倍働いてた。顔には出さなかったんですけど、それを見てめちゃくちゃいいなと思いました。そういうの好きですね。

立川:そういう細かいあるあるって本当に記憶の片隅にあるものなのでよく思い出すなと思います。親友のこたつのやつとか。

最初に提案したときはそんなのできる?みたいな話になったりしますか?

加賀:あんまりないね。あれは大好きですけど、僕が経験したわけじゃないんですよ。

立川:まずあれを思い出すのがすごいと思うんですよ。以前、何かのテレビで真ん中に単語を書いて、それに関する要素を書き出すみたいなことを言ってましたよね。その方式ですか?

加賀:ネタはいろんな作り方をしてます。僕はノートをきれいに書くことがすごく好きなんですよ。中卒であまりちゃんと勉強してこなかったというのもあって、ペンを持ってるのが楽しくて…

立川:ヤンキーみたい(笑)

賀屋:たしかにペンの持ち時間で言ったら人より劣ってたんだろうね(笑)俺だってペンとノート使いこなせるんだぞっていうところを見せたいんだよね?

加賀:うん、劣ってた。やっぱりちょっとコンプレックスではないですけど、丁寧に書こうと思ってて、バカにされがちだなって思うんですけど、性格の問題なのでしょうがない。実際ネタを書くときに多分すごく回りくどいやり方をしてるんですよ。

いろんなやり方を試してるんですけど、その1つとして単語を真ん中に置いて連想ゲームみたいなことをやって、自分たちの体験したことだったりそうじゃないことを考えて作るというのはありますね。そうやって小さいのをいっぱいためとくと、途中でこれらが絡んだりするというか、導入だと思ってたけどこれAとの展開になるなとか、AのネタがBのネタの展開になるぞみたいな。今はいっぱい書いといて損はないかなって感じです。

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リアルな演技の裏側

立川:なぞなぞのネタで賀屋さんが加賀さんの肩を叩く直前に加賀さんがイヤホンをほどきながら、どちらが右でどちらが左を確かめるために一瞬確認する演技をしてますよね。(下の動画の29秒辺り) あれって笑いには直結しないじゃないですか。そういう細かい部分からリアリティが出るのかなと思ったりします。あれもこだわりですか?それとも無意識?

賀屋:無意識ですねって言ったらめっちゃかっこいいですよね?

一同爆笑

加賀:無意識の方がいいか…

賀屋:無意識…ですね

加賀:(笑)本当のことを言うと、タイミングが決まってなかったりするんですよ。肩を叩くタイミングが自分の思ってるより早かったり遅かったりするんですね。だからつないでると言うか、僕はそのまま右左を確認して、スマホにつないで音楽を聞くというのが行動としてあるので、肩を叩かれるまでここまではやらなきゃいけないし、7秒時点で入ってきてください、でも15秒までなら僕は対応できる状態になってますみたいな感じですね。仕草とかは細かいんですけど、ざっくりしてますね。

賀屋:僕らの場合はそういうことしないと多分成り立たないんだよね。

加賀:ライブで20組、30組いて僕らみたいなネタがふっと出てきたときに集中しにくいと思うんですよ。めっちゃ小さいことをやってるので、集中してもらうためにっていうのはありますね。

立川:では今の年齢だからできてない役とか設定とかありますか?

加賀:あります。おじいちゃんおばあちゃんのネタをめちゃくちゃやりたいんですよ。おじいちゃんが愛を囁いてるけど全然聞き取ってもらえなくて、言い続けてたら過呼吸になっちゃうとか(笑)そんなことは思ったのは、天竺鼠さんのコンビニのネタがめちゃくちゃおもしろかったからです。店員さんもお客さんもおじいちゃんっていう、あれは本当におもしろくて衝撃でしたね。

賀屋:キングオブコントのやつね。

立川:やりたいけど舞台上でやるなら絶対衣装が必要だから現状はあんまり?

賀屋:それはありますね。

加賀:先にやられちゃうかもしれないというのはありますけど、若いときにしかできないことを先にやらないと取り返せないですからね。

立川:これを記事にして誰かがやってしまう可能性もありますけど…

加賀:自分が思い付くことは絶対誰かが思いついてると思っちゃうのでその時は仕方ないです(笑)

賀屋:僕はおばあちゃんが辛ラーメンを家で作ってめちゃくちゃ辛がるって映像を撮りたいです。「辛いよおばあちゃん!」と思いながらずっと見てほしい(笑)

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取材が盛り上がって長くなってしまい、カットするのももったいないので今回は前編後編に分けさせていただくことにしました。次回もお楽しみに!

※後編も公開されました!こちらからご覧ください!

【かが屋 プロフィール】


加賀 翔賀屋 壮也による、2015年結成のマセキ芸能社所属のコンビ。
キングオブコント2019ファイナリスト。2人ともバナナマンを敬愛しており、日常の中に潜むワンシーンを切り取った設定のコントが多い。
第3回単独ライブ「瀬戸内海のカロ貝屋」を全国4カ所で開催予定。
(各公演のチケット一般発売は2月15日から)

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