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箱根駅伝ロス2020② 波乱の1区

箱根ロスの個人評論第2回は1区を振り返ってみる。
今回の箱根駅伝、個人的に最も見応えがあったのは2区
しかしここはまず1区から語っていきたい。

波乱の1区

波乱はスタート前に始まっていた。
青山学院、往路の目玉はエース吉田圭太をどこに配するか。
個人的には、大道で2区、変化球で4区、奇襲で復路7区を予想していた。
(来年はレース前に残しとこうかな)
2区の区間エントリーは1年生の岸本、誰だよ?というのはリサーチ不足で、出雲では2区(5.8km)で区間賞、全日本2区(11.1km)を5位。
まあ2区の話は次回に譲ろう。

当日エントリー変更で、1区吉田圭太。
Twitterは大賑わいである。(どこに配置しても大賑わいであろうが。)

セオリーで言えば、大エースは1区には起用しない。
駅伝では、特に距離が長く区間も多い箱根駅伝では、1区で勝負は決まらない、しかも差があまりつかないからである。

通常、1区は集団で進む。
少しずつふるい落としはあるが、上位校は団子になって進み、多摩川六郷橋付近からスパートが始まり、それについていき最後に前に出たものがトップでたすき渡しとなる。
だが、1区で大事なのはトップに立つことではない。
トップが見える位置で大きく離されずにたすきをつなぐこと、序盤で出遅れることなく流れを作ることが求められる。
よって、重要な区間であることに間違いないが、セオリーでは大エースを置く区間ではない。
全く無いことはないが、よほど選手層が厚いか、逆に選手層が薄いか、奇襲かである。
よく用いられるのが、先頭集団についていけるだけのベースの力がありながら、終盤のスパートにも対応できるスピードランナー。
ペースを守った単独走にはなりにくいので、爆発力のある下級生、スピードランナーの起用が多い。

吉田圭太1区起用。これが1つ目の波乱。

二つ目の波乱の前に、1区の顔ぶれを確認してみる。
王者東海は鬼塚翔太、東洋は西山和弥、早稲田に中谷雄飛。
このあたりは昨年に続いて順当な顔ぶれ、先頭争いに絡んでくるであろう面々である。
駒澤の中村大聖は日本学生ハーフ2位、そしてユニバーシアード銀メダル。
駒澤も前半に勝負をかけてきたが、選手層の薄さが垣間見える。個人的には3区に入ったスーパールーキー田澤廉を1区で見たかったが。
ちなみに、2019年の日本学生ハーフはユニバーシアードの選考レースなのだが、日本は表彰台を独占、しかも順位も同じである。
1位が東洋・相澤、3位が東京国際・伊藤、中村大聖2区もファン的には面白かったが。。

箱根の1区にはジンクスがある。
読売新聞東京本社前をスタート直後、最初のカーブを先頭で駆け抜けたものが1区を制する、というものだ。
どうやら過去16回で8回で実現しているらしい。高確率。
昨年は東洋・西山が先頭で駆け抜け、実際にそのまま区間賞をとったのを覚えている。その前年もそうだった気がするが、定かではない。

さて、今年も箱根駅伝がスタートし、最初のカーブは東洋・西山が先頭を駆け抜けていった。
西山は秋の出雲、全日本では調子がいまひとつ、苦しんだが、昨年もそうだったし駅伝男、箱根では調子を上げてくるはず。
…と思いきや、10km付近でまさかの後退。
東洋・西山が前半でついていけない。この展開を想像した人がいただろうか。
これが二つ目の波乱である。

レースは東海・鬼塚、早稲田・中谷が先頭をひっぱりながらハイペースで進み、六郷橋の下りで國學院藤木が前に飛び出す。
そのまま逃げ切るかと思いきや、創価大・米満が2位グループから追いかけ残り300mで逆転、区間賞を獲得した。
先頭を引っ張った東海・鬼塚、早稲田・中谷、そして青学・吉田はそれぞれ区間4位、6位、7位。
先頭をひっぱるのと、先頭についていくのでは体力の消耗も異なる。
それも、実績がある選手やエース級の選手はマークされ、自然ペースメーカーとして使われる。
マラソンでもよく言われるが、前半までは集団の中にいて目立たないように流れに任せる、というのがハーフの距離でも大事なのだろう。
1区で区間賞をとることの、なんと難しいことか。
しかし、7位青学でもトップに18秒差。1区の仕事としては及第点だろう。
結果論だが、吉田圭太じゃなければ青学ももっと離されていた可能性もあった。

そして、ここで出遅れた東洋・駒澤は、5強という前評判ながら1度もトップ争いに絡むことがなかった。
序盤で出遅れることの難しさを思い知った、第96回箱根駅伝の1区である。

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