見出し画像

たった一人の人間さえ殺すことが出来なかった彼が作ったのは原爆。

#18 オッペンハイマー


そもそも論

本作は核の被害・戦争被害を軽視したり、
事実を隠したりしてるわけではない。
日本の被害に対しては、演者の表情で察することしかできないし、
核の被害はオッペンハイマーの頭の中の想像でしか描かれていない。
本作に関しては、戦争を振り返ることや、
核被害を伝えること、
日本に対してアメリカがどうあるべきかなどが
テーマの映画ではないので、
(捉え方はさまざまだと思うけど)
そこが描かれていなかったからと言う論争は
そもそも違うと私は思う。

側の問題であって
とは言っても、政治的思想がそこまで強くなく、特に世界史に疎い私ですら、原爆投下が成功した瞬間オッペンハイマーが祝福されまくり、
関係者たちが喜び合う姿のシーンは、日本人側として、
『何を見せられているのだろうか』という気持ちにはなった。
しかし、日本も残虐なことをしていたという事実もあるが、日本で放映されている戦争映画においてその部分を描いている作品は多くない。
少なくとも私は知らない。
どう思うかはどの題材においても、側によって感じ方は常に違う。


終わりでなく始まり

当時の日本も特攻隊や回天など、戦局が厳しくなる中で、若い兵士たちが命を賭して戦うと言ういわゆる、自殺攻撃はたくさんあった。
当時は、人の命が軽いものであり、命が武器として考えられ
若い兵士たちの犠牲となっていた中、
戦争を終えるきっかけとなったのはオッペンハイマーが作った原爆。
でも、実際は終わりでなく、始まりを作っている。
実際今でも、核戦争が起こりうる可能性があるというニュースは
飛び交っている。


たった1人を殺すことが出来なかった彼

本作は、戦争の前・中・後・今をだけを描いている映画ではなく
自分の頭脳を殺人の武器として使えず、
たった1人の教授を殺すことが出来なかった男が
数十万人を殺す武器を作る。
そして、愛人の死に涙を流すした男が、
数十万人を殺しても涙ひとつ流すことがない。
これは、政治が天才を武器に変えたことの象徴なのではないだろうか。
人間性を持った科学者が、人間性を失い、
現実に対し感情を制御できた彼が、
幻想のような愛の思い出には感情が揺れ動く。
本作は、科学者としての使命と人間としての感情の間で揺れ動く
彼の内なる葛藤を描いている伝記でもある。
政治は天才を最大の凶器へと化すのだ。


才能の使い方

最後に、本作は才能の使われ方について考えさせられる。
映画Winnyで出てきた台詞「殺傷事件の時に悪いのはナイフを作った人ではなくナイフを使った人」というシーンがあるが。
悪いのは原爆を作ったオッペンハイマーなのか、
それを使った政治家なのかを問うているように感じた。
何事にも天才がもつ才能をどうか良い未来の為に使って欲しい。
そう何度も観ていて思った。

伏線回収しまくり、時系列遊びしまくりノーラン。
圧巻の3時間。情報量多すぎて
頭の中を整理する時間が必要なので感想を書くのに時間がかかった。
でもこうやって政治や戦争について考える機会はとても大切で、
見た後に学ぼう、意見をまとめようと思える映画は素晴らしいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?