【英文法 重箱の隅】コンテンツガイド - 1
自動詞と他動詞
英語に限らないことだけれど、人の営為を含めた、この世界の多様性/豊かさを映し出しているはずの動詞と呼ばれる語のグループを、自動詞と他動詞のいずれかに分類するというのは、いかにも乱暴なことだし、ましてや、その判断基準を動詞の意味内容に置くというのは、無謀な試みとしか思えない。自動詞/他動詞を意味によって規定したところで、必ずや、少数の例外ならぬ多数の例外が出てくるのは目に見えている。やはり、自動詞/他動詞の区別は形式上の問題として考えるのが妥当なのだろう。
本記事では、他動詞とはその行為が「他に働きかける/作用を及ぼす」ことを表すものというふうに、意味によって定義することから生じる不都合について、次の4つの動詞のグループを例に具体的に考察している。
知覚を表す動詞 (see / hear)
「受け取る」動詞 ('suffer damage')
「作り出す」動詞 ('dig a hole')
関係を表す動詞(have / lack / include)
自動詞(+前置詞)と他動詞
動詞を自動詞/他動詞に分類することは、(その無謀性には目をつぶり)受け入れるとして、形式上の問題である自動詞/他動詞の区別と意味との関係が気にならないだろうか。そのあたりのことをまとめたのが本記事である。
例えば、ほぼ同じ意味を[自動詞+前置詞]という構文でも他動詞構文でも表せることがある(例: get to, arrive at/in, reach)。
また、一つの同じ動詞がAという意味では自動詞として、Bという意味では他動詞として用いられるということがある(例: succeed)。
さらに、ある種の動詞は前置詞の有無によって(おおよその意味は同じでも)意味合いに決定的なちがいが生じることがあり、しかもその意味合いのちがいに共通性が見られる(例: a. Bob shot the bear. b. Bob shot at the bear.)。
他動詞⇒自動詞(前編・後編)
ほとんどすべての動詞が自動詞としても他動詞としても用いられるのだから、ある動詞を取り上げて「これは自動詞」「あれは他動詞」と決めつけることは正確さに欠けるというか、無理である。それでも、意味内容的に自動詞性の強い動詞、他動詞性の強い動詞というのはあって、この動詞は主に自動詞/他動詞として使われるといった傾向は確かに存在する。
実際、自分の限られた経験の中では、自動詞として使われた ’walk’ にしか出会ったことがないということだって十分にありうる。だから、なにかの拍子に ’walks the dog’ という表現に遭遇したときの驚きは決して小さくはないし、場合によっては困惑することだってあるだろう。自分だけの常識が覆る(=蒙が啓かれる)瞬間なのだから。言語を習得する過程で経験する醍醐味の一つかもしれない。
さて、本記事では主に他動詞として用いられる動詞が自動詞として用いられる二つの場合についてまとめてみた。
まず前編では、他動詞の目的語が省略されて表面的には自動詞のように見える例を多数取り上げている。したがって、これは擬似的な自動詞と言っていいかもしれない。
次に後編では、他動詞用法で目的語となる名詞句を自動詞用法で主語として用いることができる動詞のグループを扱っている(例: a. John broke the vase. b. The vase broke.)。
ちなみに、例の b.のような無生物主語の自動詞構文の運用については、平均的な日本人学習者とネイティブスピーカーとの間に大きな差があることが指摘されている。
自動詞⇒他動詞
本記事は前記事と対をなすもので、主に自動詞として使われる動詞が他動詞として使われる場合を整理している。英語の動詞はすべて他動詞性を持っているという見方がある。これに従うと、他動詞性が最も強いのが他動詞であり、他動詞性が最も弱いのが自動詞ということになる。このように考えると、自動詞が他動詞になってしまうことなどは、ごく自然なことなのかもしれない。
さて、本記事では、自動詞の他動詞化として、次の3つの例を取り上げている。
「〜する」⇒「〜させる」という意味の変化を伴う(例: Stand the ladder up against the wall.)
動詞と同形の名詞や同じ語源の名詞などを目的語にとる(例: live a comfortable life)
典型的な自動詞と見られることが多い動詞 look / talk の他動詞用法
他動詞+再帰代名詞と自動詞
[動詞+再帰代名詞]というのは、形式上は[他動詞+目的語]という他動詞構文であるけれど、行為の対象が他者ではなく自分自身なのだから、意味内容上は自動詞構文に近いと言える。それならば、次のように言うことも不可能ではないのではないだろうか。すなわち、動詞に目的語が続かなければそれは形式的には他動詞ではなく自動詞ということになるけれど、意味内容的に自分自身を対象として働きかけると考えることができれば、それは他動詞に近いと。こうなると、自動詞と他動詞の境界線が曖昧になってくる … これ以上の独りよがりの妄想は慎むことにしよう。
さて、本記事では、[動詞+再帰代名詞]という形式をとりながら、日本語訳では「自分(自身)」という語が表面に現れないものを、次の4つに分類してまとめている。
他動詞用法しかないために自動詞的意味を表すのに、この形式を使用する動詞(例: enjoy herself)
この形式の慣用表現(例: help yourself)
常にこの形式で用いる少数の動詞(例: avail themselves)
再帰代名詞を伴う形と伴わない形の両方が可能な動詞(例: dress (yourself))
4.については、両者の間にある意味合いの違いを考察している。本記事のクライマックスであるはずのその試みは成功したと言えるのかどうか …
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?