【英文法 重箱の隅】自動詞(+前置詞)と他動詞
自動詞と他動詞の定義の、言わば今昔を扱った前回の記事でも書いたように、今日では、自・他の区別は目的語をとるかとらないか、目的語の有無によって決まるのだが、それでは目的語とは何かということ、つまり再び定義の問題に直面する。
そこで、手元にある複数の英語学習書の説明をまとめると、「動詞の表わす動作の対象を表わす名詞」といったところである。「動作の対象」について言葉を補って「動作の働きを受ける対象」とか「作用が及ぶ対象」としているものもあるが、これらは意味中心の定義と言っていいだろう。もちろん、中には「〈動詞+名詞〉の形で」あるいは「動詞の後にある」というように形式的な特徴に言及しているものもある。
さらに、学習用英英辞典にも手を伸ばしてみる。
‘… affected by the action of a verb …’(動詞の表わす動作によって影響を受ける)とあって、やはり意味本位の記述である。それに対して
‘… completes the structure begun by the verb …’(動詞で始まる構造を完成させる)とあるのは、動詞句を構成するのに不可欠なものという説明になっていて、他の定義とのちがいが際立っている。
目的語についても、他動詞と同様、意味内容にもとづいた定義では、個々のケースで矛盾が生じて、説明しきれないことが予想される。ここでは、とりあえず、[動詞 + 名詞]の形で、動詞に直結する名詞というように形式本位の定義をもとに話を進めることにする。
自動詞でも他動詞でも同じ意味を表す例
前回、自動詞と他動詞の区別はその動詞の表わす実質的な内容のちがいと必ずしも一致しないと書いた。さて、今回は自・他の区別とそれによって表される意味内容との関係についてしばし考えてみたい。はじめに、自動詞でも他動詞でもほぼ同じ意味を表わす例をとりあげよう。
(1-c) の reach は直後に 'the coast' という目的語となる名詞句を伴っているので他動詞として使われているが、(1-a) の get と (1-b) の arrive はすぐ後に(目的語となる名詞句ではなく)'to' や 'in' という前置詞がつづいているので自動詞として使われていることが分かる。いずれも目的地に着くことを表し、大きな意味のちがいはないが、reach は特に、(1-c) にも 'after five weeks sailing' とあるように、移動に長時間・長距離または多大な労力を費やした場合に用いるようだ。ただし、意味のちがいとは別に、使用される場面のちがいというものがある。すなわち、日常的な場面では、arrive や reach よりも 'get to' を用いることが多い。
同じような「他動詞と自動詞+前置詞」の組み合わせの例は他にもある。例えば、「行事・催しに出席する」の attend と go to, 「話し合う」の discuss と talk about, 「場所に入る」の enter と go in(to) など。いずれも、日常的に使われるのは「自動詞+前置詞」の方だが、「返答する」の answer と reply to の場合は、answer の方が普段使いの英語だ。
自動詞か他動詞かで意味のちがいが生じる例
次に、同じ動詞でも自動詞として使われるか、他動詞として使われるかで、意味のちがいが生じる例を見ていきたい。
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