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【英文法 重箱の隅】自動詞と他動詞

実用から離れて、英文法そのものに対し関心を寄せている読者向けの内容となっています。一匹の猫の個人的な興味探求の記録としてお読みいただければ幸いです。

遥か昔、学校の英語の授業に、自動詞と他動詞が初めて登場したのはいつのことだったのか、そして、その際に各用語についてどんな説明を受けたのか、皆目思い出せない。ものの本によると、自動詞とは「動作がその主体自らにおいて完結することを表わす動詞」であり、他動詞とは「動作がその主体から他に及ぶことを表わす動詞」というように、従来(といっても冒頭の昔よりもさらに昔のことだろう)は定義されてきたという。

今日では一般的に、自動詞・他動詞の区別は目的語をとるかとらないかのちがいであると説明される(なお、この「目的語をとる」というときの「とる」は「必要とする」という意味であって、取り去るや取り除くことではない)。すなわち、動詞の意味に関係なく、目的語を伴えば(目的語は通常、後に続く)他動詞であり、目的語を伴わなければ自動詞である、というのだ。これは、すべての場合に例外なく適用できる明快な定義のように思える(もちろん、目的語とは何かという問題は残るのだが)。

英語で自動詞は intransitive verb、他動詞は transitive verb というのだが、学習用英英辞典でも、intransitive と transitive という語について、次のように説明している。説明の中の object というのが目的語を意味する。

・intransitive: (of a verb) having or needing no object
・transitive: (of a verb) having or needing an object

https://dictionary.cambridge.org/ 

従来の定義と今日のそれとの根本的なちがいは、前者が動詞そのものの意味内容による規定であるのに対して、後者は動詞が使われる際の形式にもとづくものであること。こうした変化には、おそらく文法学の動向が反映されているのだろう。

さて、これから少しの間、従来の定義ではどのような不都合が生じるのかを、他動詞に限定して考えてみたい。これをきっかけに、他動詞のさまざまな表情、その多様性を、ごく一部でも垣間見ることになるだろう。なお、ここでは従来の定義にあった「動作が他に及ぶ」を「他に作用を及ぼす(影響を与える)」あるいは「他に働きかける」と解釈して、話を進めたい。

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