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【読書感想】晴れた日は図書館へいこう 夢のかたち(緑川聖司:著)

「晴れた日は図書館へいこう」シリーズの3作目、現時点ではシリーズ最新作です。
出版されたのは2020年。2作目の出版は2010年ですので、実に10年ぶりとなります。(第1作目は2003年)。
この作品で主人公茅野かやのしおりはようやく、小学5年を終えることになります。
 
最初の作品を読んだ子供たちはもう大人になっていますね^^;。

ミステリの濃度が濃くなった第2作目に比べて、この第3作目は、謎の濃度は薄まっているように思えます。

その代わりというか、特色として、もやもやとした気持ちが残ります。
一般的に本格ミステリーの公式は、謎÷推理=解決 という公式が成立します。余りがないのが良いミステリとされていた時代もありました。
しかし、小説としての面白さは、この公式が成立しながらも、余るものの存在、それが、無常であったり、人の心の善意であったりするのですが、この第3作では時に、それが今までに存在しなかった、いじめ、万引き、脅迫などといった人の心の闇だったりします。

それは2010年以降の日本の社会が内包してしまったものを作者が知らず知らず影響をうけて作品に反映したものなのか、それとも主人公の成長に合わせて、向き合わなくてはならない社会の存在として提示したものなのでしょうか。
いずれせよ、そのもやもやとした人の心の闇が描かれている話もあるのがこの作品の特徴といえるように思います(今まで通りのトーンの作品もありますが)。

ひとくちに本好きといっても、本を読むのが好きな人、本(物語など)を書くのが好きな人、本を人に紹介するのが好きな人等々、いろんな人がいると思います。

この先、主人公がどのような本好きへとなっていくのだろうかと、次の作品を待ちたくなります。

作者はこれをもって完結とするのではなく、もうしばらくお付き合いいただけたらー、とあとがきに書いています。

その言葉を信じて、あと何年になるかはわかりませんが、気長に待ちたいと思います😊。

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