【ラジオドラマ脚本】ポーカーフェイス(前編)
【著】大島恭平
〇作品紹介
大島が大学時代に作成したラジオドラマ脚本。
-----あらすじ-----
高校2年生の春、去年と同じようにクラスが一緒になった柊・ツバキ・信之介。いつものように会話を楽しんでいると、そこへ一人の少女が通りかかる。ツバキと信之介は彼女が有名人だと言い、その理由を柊に告げる。
「あいつは虐待を受けてるらしい。」
〇登場人物
・柊 明るく社交的
・猪熊 無言・無表情・無関心で有名
・ツバキ 柊の友人。去年のクラスメイト
・信之介 柊の友人。去年のクラスメイト
〇本編
〈シーン1〉
●場所:教室
【SE】チャイムの音、ガヤガヤしている音
柊「またお前と一緒になるとはな」
信之介「おお、柊か!久しぶり」
柊「久しぶりって、昨日カラオケ行ったじゃねぇかよ」
信之介「あれ?そうだっけ?一曲目から撲殺天使を歌う奴の事なんて覚えてないな」
柊「覚えてんじゃん!それにお前の一曲目だって酷かったぞ?」
信之介「なんだっけ?」
柊「恋愛サーキュレーション。頼むから男二人で一発目にそれは止めてくれ。」
信之介「お前は何でも知ってるな」
柊「何でもは・・・・・いや、これ以上は止めておこう」
信之介「なんでだよ。」
柊「なんでもだ。パロディーに走るとすぐ叩かれる!」
信之介「分かったよ。自重しまーす。」
ツバキ「何を自重するって?」
柊「ん?ツバキも同じクラスなのか?」
ツバキ「そうよ。嬉しい?」
信之介「『ダブルヘッドシャーク』のブルーレイBOX発売くらいは嬉しいかな」
柊「嘘をつくな嘘を。」
ツバキ「柊は?」
柊「ん?俺は深爪くらい嬉しいよ。」
ツバキ「ふたりとも」
柊・信之介「なんだ?」
ツバキ「焼き土下寝。」
柊「鬼畜か!」
信之介「全く。相変わらずだよなぁお前ら」
柊「お前もな」
ツバキ「柊が言うな」
●【SE】足音
猪熊「あの…」
柊「はい?」
猪熊「そこ邪魔なんで、どいてもらえますか?」
柊「あっ…ごめん。」
●SE【足音】
信之介「あいつってあれだよな?」
柊「知ってるのか?」
信之介「あぁ。有名人だよ。悪い意味でな。」
ツバキ「私も知ってる。なんか友達作らないし、会話もほとんどしなくて、近寄りずらいのよね。」
柊「ふ~ん。でも失礼だけどそんな感じの奴、いっぱい居るだろ。どうして有名になるんだ?」
信之介「噂なんだが…」
柊「噂?」
信之介「あぁ。どうもあいつは虐待を受けてるらしい。理由としちゃ、よく手や足に包帯を巻いてくるんだよ。だから噂が広まってさ。」
ツバキ「入学当初から暗かったみたい。もう見るからに話しかけるなオーラ出してるし、話しかけても返事は大体一言で済ませるから、そりゃ有名にもなるよ。」
柊「なるほどねぇ…」
ツバキ「で、あんたはどうすんの?」
柊「友達になる。」
ツバキ「やっぱりね…」
信之介「相変わらずだな…無茶するなよ。」
柊「任せとけ!」
〈シーン2〉
場所:教室
【SE】ガヤガヤ声。ゆっくりとフェードアウト
柊「ちょっといい?」
猪熊「……。」
柊「おーい!」
猪熊「なんですか?」
柊「無口キャラは今時流行らないぞ?」
猪熊「は?」
柊「俺は無口キャラよりも饒舌黒髪ツインテールキャラの方が断然好みだぜ?」
猪熊「は?キモいんだけど。あとキャラとかじゃないんで。」
柊「ふ~ん。まぁいいや。それよりさ、俺と友達にならない?」
猪熊「嫌です。」
柊「嫌です。」
猪熊「……。」
柊「なぜ黙る?」
猪熊「いや、初対面でこんなにも関わりたくないと思った人は初めてだったから。」
柊「それを本人に言う猪熊さんもどうかと思うけど。」
猪熊「なんで私の名前知ってるのよ。」
柊「いや、君喋らないってことで有名人ぽいよ。でも意外と喋りやすくて驚いたよ。」
猪熊「まだ全然話してないけど。」
柊「じゃあこれから話すためにも、友達になろうぜ!」
猪熊「……。」
柊「まーた黙った。今度は何考えてんの?」
猪熊「…じゃあ友達になってみる?私と。」
柊「えっ、本当に?」
猪熊「えぇ。後悔すると思うけど。」
柊「よっしゃ!猪熊フラグ!!」
猪熊「フラグではない。」
柊「あっ、そういえばまだ名前教えてなかったな。俺は」
猪熊「柊くん。でしょ?」
柊「え?なんで知ってんの?まさか俺のファン?」
猪熊「ファン?あなた換気扇か何かなの?」
柊「常に新鮮な空気を提供するという意味じゃあ、俺は君にとってのファンなのかもしれないな!」
猪熊「……確かに空気変わったわね」
柊「つらい!!」
猪熊「はぁ…アンタ意外と有名人よ。いい意味でね。」
柊「なんか物凄く皮肉を言われてる気がする…」
猪熊「別にそんな気は全くないけど。」
柊「なんだかなぁ…そうだ、猪熊にひとつ聞きたいことがあるんだよ。」
猪熊「何?」
柊「ポーカー好きか?」
猪熊「は?ポーカー?ルール知らない。」
柊「ふーん…ちなみに俺は好きじゃないけど得意だぜポーカー。俺が思うに猪熊はポーカー弱いな。」
猪熊「それどういうこと?」
柊「猪熊はポーカーのやり方を知らない。いや、正確には初心者と言った方がいいかな。初心者ゆえに自分がどれほど表情を隠せているのかが分かっていない。つまり俺から手札が見え見えなんだよ。」
猪熊「だから何が言いたいのよ。」
柊「力になってやる。」
猪熊「………。」
柊「また沈黙か。」
猪熊「あんた…まさかそれを勘付いた上で私に近づいたの?」
柊「ご名答。まぁ具体的に何隠してるかは分らないけどね。」
猪熊「そう…でも、アンタの助けなんかいらない。私に同情でもしてるんだったら、さっさとどっかに消えてくれない?」
柊「でも友達だろ?」
猪熊「友達?あんたなんか友達でもなんでもない!いいから早くどっか行ってよ。目障りだから。」
柊「分ったよ・・・・・あっ、これだけは言っておくよ。友達はいいもんだぜ。それこそ俺は友達のファンみたいなもんだからさ。」
【SE】足音。フェードアウト
猪熊「私に友達なんてできるわけないじゃない。」
〈シーン3〉
●【SE】ガヤガヤ
ツバキ「なーにが、『俺は友達のファンみたいなもんだからさ。』よ。」
柊「言い捨て台詞だったと思うけどなぁ~」
信之介「それを俺たちに報告するあたりが、本当に残念だよな。」
ツバキ「確かに。てか相変わらず相手の気持ちに土足で入るわね。」
柊「しょうがないだろ。あそこで言うしかないと思ったんだからさ。」
信之介「それになんだよ『ポーカー好きか』って。実際あのポーカーの話必要なかっただろ。」
柊「そこ入れとかないと、タイトルの意味が薄まるだろう?」
ツバキ「タイトル気にして内容をグダグダにしてる時点で作品として終わってるわ。」
柊「みんな厳しすぎないか?もう少し制作者に優しくなろうよ。」
ツバキ「どうせ伏線回収しないんでしょ?」
柊「それはどうかな?」
信之介「こりゃ絶対する気ないな。」
柊「今の発言も伏線ということで。」
ツバキ「もう伏線というより、付箋ね。」
信之介「話戻すけど、好感度が最悪に下がったお前は、これからどうやって猪熊と友達になるんだ?」
ツバキ「隣人部でも作る?」
柊「はいはいアウトアウト・・・・まぁとりあえずは何度も話しかけるかな。」
信之介「お前らしいな。」
ツバキ「勝算は?」
柊「ないけど頑張る!」
ツバキ「やっぱりね。まぁせいぜい頑張って。私は多分柊のためには何もしないから」
信之介「おれも~」
柊「分かってるよ。あ、そうだ!今日の放課後なんだけど」
信之介「悪い!今日野暮用できちゃってさ」
柊「えー!ツバキは?」
ツバキ「私も無理無理。」
柊「何だよ2人して~!さてはお前ら」
ツバキ「それはないから」
信之介「そうそう。ただの野暮用だから気にすんな。」
柊「わかったよ。」
〈シーン4〉
時間が経ち、場面は放課後。
●【SE】チャイムの音
猪熊「はぁ…始業式から本当に気分悪い。休み時間の度に話しかけてきて…全部シカトしたけど。危うく友達になるところだった…」
●【SE】二人の足音。
ツバキ「猪熊さんですよね?」
猪熊「はい?」
信之介「ちょっと、いいですか?」
続く。
↓
【ラジオドラマ】ポーカーフェイス(後編)へ。
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