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2021年冒険のまとめ:シュークリームさんを出版社にするお手伝い

2020年後半に前職から離れて自由人になりまして、好きな人たちと好きなことをやって世の中に面白いを少し増やすという生き方を1年間やりました。
その中から特に面白かった3つのことをお話ししてみようかななんて。

まず一つ目は「FEEL YOUNG」「onBLUE」「moment」の3レーベルにこのたび「fromRED」が加わった女性向けマンガではお馴染みの編集プロダクション「シュークリーム」さんが出版社コードを取得して正式な版元になるお手伝いをしたお話を。


編集プロダクション、というのは出版社から作品作りを受注して、出版事業における印刷や流通、営業販促以外の「作品を作る」部分だけを担う会社で、大小はありますがほとんどの出版社がなんらかの形では使っている、縁の下の力持ち的な会社の形態です。

シュークリームは長らくそのような受注の形で祥伝社さんから依頼を受けてFEEL YOUNG、onBLUEの「中身」を作っていたのですが、momentからいわゆるデジタルファースト、紙の雑誌を発売せずに電子書籍で作品を展開し、後々、紙のコミックスが発売されるというビジネスモデルに乗り出すことにより、自分たち主体で作品を取り扱うことが可能になって、この度、新レーベルにおいて紙のコミックスを自分たちで印刷製本し、流通させ、販促をするという事業へ乗り出すことになりました。

それが「fromRED」です。


マンガの執筆は漫画家さんが行うもので、当然個人の方でも可能な行為です。
印刷、製本などについても同人誌と商業誌との差は多く部数を刷るかどうかくらいで、基本的には個人でも可能な作業です。
ハードルがあったのが「全国の書店に流通させる」ことなんですが、これが近年では随分簡単になりました。

全国の書店に流通させるためには「取次」さんに口座を開いて本を扱ってもらう必要があります。
まずこの交渉を取次と行います。
昔はこの審査がすごく厳しかったと聞きますが、出版不況もあって最近では新しい作品を出してくれる企業は歓迎なようで、割とすぐ通してくれるようです。

次に印刷所の準備をします。コミックスを作るにあたっては用紙の手配、製版、印刷、製本、輸送の5つの工程が必要です。これも昔は大変みたいでしたが、今のコミックスはほぼフォーマットが決まっているので印刷所さんに一声お願いすれば一気通貫で全部やってくれます。
新規参入なのでなるべく最新のやり方がいいかと考え、書店さんでやってもらうのではなくて、印刷所で本を作るときに先にビニールをかけてしまうシュリンクパックを導入したりしました。

そして流通倉庫です。本は返品を受け付けたり注文を受けて出荷したりする流通倉庫が必要です。
いろんな出版社を扱っている出版専門の倉庫さんがいくつかありますので、そこへお願いしに行きます。本を保存したり運んだりするザ・倉庫としての役割以外にも本の受発注に伴う精算業務とコールセンターとしての受注作業も併せてお願いします。本当になんでも外注できるようになりました。便利な時代です。

最後に会社内に何冊刷るかを決めて印刷所へ発注したり、取次に入れる部数を決めたり、いろんな書店さんと打ち合わせをしたりする人材を採用します。ジャンルにもよるのですがコミックだったら年間100冊くらいまでは1人いれば大丈夫かと思います。ここは全出版社でほぼ同じことをやっているパートなので経験者だとありがたい。幸いうまく経験者を採用することができてすごく助かりました。

基本的にはこれで新しい出版社が完成です。
意外と簡単ですね。

システムはだいたい外注できたり便利になったのでいいのですが、大変なところがあるとすれば書店さんとのリレーションのところでしょうか。紀伊國屋さんとか丸善ジュンク堂さんとか有隣堂さんとかの大手書店と商談をするのは小さかったり新しかったりする会社では大変なのですが、それはとりあえず取次さんにお任せしつつ、幸い、コミック、中でもfromREDが属するBLジャンルはアニメイトさんが最重要なチェーンですので、そこを開拓すればまずは大丈夫です。ぼくは幸い前職でアニメイトさんと深く関わらせてもらっていたので、今回もいいアライアンスを組むことができました。

あとはどんどん作品を作ってどんどん出版してどんどん売っていくだけです。
さすがシュークリーム、とても面白いマンガがどんどん生まれてきます。合格ラインとされている初版1万部発行を切ることはほとんどなく、重版率も3−4割あるんじゃないでしょうか。中でもユノイチカ先生は話題的にも売上的にもたいへんな好成績。新規レーベルの初動としてはどころか、普通にめちゃくちゃいい部類だと思います。


これでシュークリームは祥伝社さんや他の会社から作品作りを受注しつつ、自分達でも出版を行う編プロと出版社を兼ねた会社になりました。わりと珍しいパターンなんじゃないかな。

引き続きシュークリームでの仕事は続きますので、来年はシステムの話だけじゃなくて、面白いこと、を届けたいですねー。

また、実はもうひとつまた違った会社を出版社にする、という仕事にも携わっていまして、それは来年の報告になるでしょう。出版社作るのすごく面白いので、やりたい方ぜひ一緒にやりましょう。

さて、次はwebtoon絡みのお話を。


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